20 0 0 0 OA 有償労働の意味

著者
小笠原 祐子
出版者
The Japan Sociological Society
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.165-181, 2005-06-30 (Released:2009-10-19)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1 3

家事・育児・介護分担に関する研究が多数報告される中で, 生計維持分担に関する調査は十分になされてきたとは言えない.従来の研究では, 雇用と生計維持は必ずしも区別されず, 働く行為の意味が看過されてきた.本調査では, 同じようにフルタイムで継続就業する共働き夫婦といえども生計維持分担意識はさまざまであり, 分担意識の低い夫婦と高い夫婦が存在することが明らかになった.分担意識の低い夫婦においては, 生計維持者たる夫の仕事が妻の仕事より優先され, 家庭と仕事の両立が問題となるのはもっぱら妻の方であった.これに対し, 生計維持分担意識の高い夫婦は, 2人がともに生計維持者として就業を継続できるよう働き方を調整していた.これは, 夫婦両者の就業に一定の制約をもたらす一方で, 生計維持責任を1人で負担しなくてもよいことからくる自由度も与えていた.前者の夫婦は, どちらかと言えば旧来型の企業中心の生活を送る傾向が見られたのに対し, 後者の夫婦は, 脱企業中心のライフスタイルを希求するケースが多く, 働き方やライフスタイルが一部の階層で夫婦の選択となってきていることが示唆された.
著者
小笠原 祐子
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.165-181, 2005-06-30
被引用文献数
1

家事・育児・介護分担に関する研究が多数報告される中で, 生計維持分担に関する調査は十分になされてきたとは言えない.従来の研究では, 雇用と生計維持は必ずしも区別されず, 働く行為の意味が看過されてきた.本調査では, 同じようにフルタイムで継続就業する共働き夫婦といえども生計維持分担意識はさまざまであり, 分担意識の低い夫婦と高い夫婦が存在することが明らかになった.分担意識の低い夫婦においては, 生計維持者たる夫の仕事が妻の仕事より優先され, 家庭と仕事の両立が問題となるのはもっぱら妻の方であった.これに対し, 生計維持分担意識の高い夫婦は, 2人がともに生計維持者として就業を継続できるよう働き方を調整していた.これは, 夫婦両者の就業に一定の制約をもたらす一方で, 生計維持責任を1人で負担しなくてもよいことからくる自由度も与えていた.前者の夫婦は, どちらかと言えば旧来型の企業中心の生活を送る傾向が見られたのに対し, 後者の夫婦は, 脱企業中心のライフスタイルを希求するケースが多く, 働き方やライフスタイルが一部の階層で夫婦の選択となってきていることが示唆された.
著者
平尾 由美子 小笠原 祐子
出版者
一般社団法人 日本フットケア学会
雑誌
日本フットケア学会雑誌 (ISSN:21877505)
巻号頁・発行日
vol.17, no.4, pp.175-180, 2019-12-25 (Released:2019-12-25)
参考文献数
14

【要旨】フットケア実施率向上への示唆を得ることを目的とし,訪問看護師による在宅療養高齢者へのフットケアに関する実態調査(2016年9月)の質問項目の1つである「在宅療養高齢者のフットケアについて感じていること」の自由記述回答を分析した.全国750か所の訪問看護事業所に対して郵送法により245施設(32.7%)から返送され,上記質問には122人から回答があった(回答率49.8%).質的記述的に分析し,319コードが得られ,【重要性・必要性】(88コード),【困難】(231コード)の2つのコアカテゴリーに分けられた.コード数が7割を占めた【困難】は,《療養者の要因》,《看護師の要因》,《環境の要因》のカテゴリーで構成された.《療養者の要因》から,在宅療養高齢者の医療処置を含むフットケアニーズの高まりが明らかとなった.在宅において,予防的フットケアの推進と同時に,医療的フットケアが実施可能な環境の整備の必要性が示唆された.
著者
大沢 真理 小笠原 祐子 ロバーツ グレンダ 田中 和子 合場 敬子
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究は、経済グローバル化のもとで、「ニュー・エコノミー」として生じているとされる産業構造や労働組織など変化について、英、独、米および日本について、ジェンダー関係との関連を比較分析するもの。たとえば、産業や労働の組織の「フラット化」や「柔軟化」が語られながら、じつは社会的格差の拡大が懸念されること、また、近年の規制改革や福祉国家改革のベクトルでも、規制緩和や民営化ばかりではなく、再規制化やセーフティネット強化の要素が見逃せないこと、これらの事象のいずれもジェンダー関係と交差していること、が指摘される。対象4国は、今日の世界経済で大きな比重をもち、かつ相互に意味ある好対照をなしている。なにより4つの国は、異なる性格のジェンダー・レジームを持っている。アメリカは女性の就業を促進する方向に最も進んでおり、日本は女性の世帯内役割を最優先するジェンダー・レジームであるように見える。福祉と産業労働、家庭を横断するジェンダー・レジームは、収斂しているのか、あるいは強い経路依存性のもとで分岐しているのかなどの論点が、本研究で解明され発表されてきた。すなわち、2002年9月3日には東京大学において、公開シンポジウム「グローバル時代の「ニュー・エコノミー」-日米欧の比較ジェンダー分析」を開催し、本研究のコンセプトについて研究グループの外部から意見等を得た。その内容は、雑誌『現代思想』31巻1号(2003年1月号)の特集「トランスナショナル・フェミニズム」として発表された。2003年9月末にはブレーメン大学、2004年3月初めには日本国内で、海外共同研究者との研究会を集中的に開催した。研究の成果を広く社会に還元するべく、2004年3月4日に東京大学において、公開シンポジウム「グローバル時代の「ニュー・エコノミー」-日米欧の比較ジェンダー分析II」を開催(第18回東大社研シンポジウム)。