著者
菊池 誠 岡本 賢吾 岡田 光弘 三好 博之
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

現代の数学の哲学には (1) 数学の算術および集合論への還元,(2) 一階論理上での集合論の公理化,(3) 一階論理による証明概念の形式化,(4) チューリング機械による計算可能性の特徴付けという[四つの原理]がある.本研究はこの[四つの原理]と現代の[標準的数学観]の関係,[四つの原理]とそれらの相互の関係をに検討することで,数学の哲学の新たな展開と,計算・推論・情報の概念の哲学的解明を目指すものである.2018年度中には以下の活動を行った.(1) 2018年9月3日から9月6日まで神戸大学六甲台第二キャンパス内工学研究科において「数学基礎論サマースクール(テーマ:証明論,特に算術の無矛盾性証明)」を開催した.(2) 2018年9月18日から20日まで神戸大学瀧川記念会館において「Symposium on Advances in Mathematical Logic 2018(竹内外史追悼シンポジウム)」を会した.(3) 日本科学哲学会2018年度大会においてワークショップ「計算の哲学:推論および物理的現象との関係の再考に向けて」を開催した.(4) 共立数学文献を読む会において講演「幾何学の基礎に関するフレーゲ・ヒルベルト論争について」を菊池誠が行なった.これらの活動の結果として,以下の成果を得た.(1) 竹内の証明論と集合論の哲学の特徴について分析を行い20世紀の数学基礎論についての議論の枠組みの詳細を定めた.(2) フレーゲ以前の論理学,フレーゲ,ヒルベルトの量化と含意についての考え方の共通点と相違点の分析の重要性を明らかにした..(4) 量子論理の基本的な性質についての議論を進めた.(5) 不完全性定理と有限の立場についての分析を行なった.
著者
三好 博之 戸田山 和久 郡司 幸夫 檜垣 立哉
出版者
京都産業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

三好は計算が二つの意味で記述不可能であるという困難を明確にし,リフレクションと呼ばれる計算から着想を得た形而上学的装置一式を導入してこの困難を間接的に手懐けるというアプローチを見いだした。その記述と理解のためにHume-Bergson形式と呼ぶ記述形式を導入し,これらと上記の困難を結びつけて,その困難を超えた明証的な理解があり得ることを示した.さらにこれが時間論における入不二の考察と近いことを示した。また精神病理学および物理学への応用に向けて予備的な研究を行った。戸田山は今までFieldらにより主に数学と物理学について議論されている認識論の自然化を,現象としての計算に適用する場合の問題点について,普遍的な計算概念よりもむしろ個別の事例について検討を行うことにより研究を行った.そこでは認識論の自然化と同時に実在論を擁護する立場を強調した。郡司は動的情報射を用いた動的・局所的意味論に関する研究を行った。さらに観測由来ヘテラルキーの理論についての研究を行い,ゆらぎを持つ環境の中で頑健な挙動を示すシステムの一般的理論を展開した.現在これらはオープンリミットというアイデアとして一般化されつつある。檜垣は西田幾多郎の哲学において議論されている数理的な議論が現象としての計算という観点から見ると重要な意味を持つことを見出し,このことについて検討を重ねた.その際西田およびドゥルーズの生命論との関連に特に着目して議論を行った.そこでは西田の哲学における数理的側面についても改めて光を当てている。塩谷賢は、「計算」とは科学哲学、技術論、哲学的方法論を含む様々な問題に関する集約点の一つを示す根源的な自然種であるという立場から、「計算」について得られた知見を「計算=操作性のレベルにおける接続子による操作性の延長」として再検討することを提唱した。