著者
江口 英利 三森 功士
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究はイベルメクチンがYAP1の阻害により胃癌に対して抗腫瘍効果を有すかを明らかにする。イベルメクチンを胃癌細胞および胃癌マウスモデルに投与すると腫瘍増殖抑制効果を認めた。またその機序として、Hippo経路の転写因子であるYAP1は細胞増殖関連遺伝子であるCTGFを誘導するが、イベルメクチン感受性胃癌細胞においてイベルメクチンの投与によりYAP1 mRNA、核内YAP1蛋白が減少し、CTGFの発現が減弱した。つまり、イベルメクチンはHippo経路のYAP1発現を抑制することにより細胞増殖を抑制しうる。また胃癌症例において、YAP1高発現群は予後不良であった。
著者
前田 豊樹 三森 功士 牧野 直樹 堀内 孝彦
出版者
一般社団法人 日本温泉気候物理医学会
雑誌
日本温泉気候物理医学会雑誌 (ISSN:00290343)
巻号頁・発行日
vol.82, no.2, pp.41-47, 2019-05-31 (Released:2019-06-19)
参考文献数
22

これまで温泉治療が様々な疾患に療養効果があることは示されてきたが,一般的にどのような疾病に予防効果があるのかは示されていない.また,温泉入浴の禁忌症は示されているものの,某かの疾病の発症を促進する可能性についても知られていない.このような状況を踏まえて,筆者らは,平成24年度から3カ年間,65歳以上の高齢別府市民2万人を対象に,温泉の利用歴と各種疾患の既往歴に関するアンケート調査を実施し,その解析結果を先頃論文報告した.結果は,性別によって分かれており,温泉入浴が,男性においては,心血管疾患の予防に寄与し,女性では,高血圧に予防的に働くが,膠原病などの発症には促進的に働く可能性などが示唆された.このように,温泉は必ずしもすべての疾患の予防に働くわけではなく,一部促進する場合もあり得ることが伺えた.この疫学調査から伺える予防的効果には,温泉の効能としては期待されてこなかったものやこれまで示されてきた効能に反するものが含まれている.本編では,様々な疾患に対する温泉の予防効果と治療効果のずれという観点から,アンケートによる疫学調査をレビューする形で紹介したい.
著者
前田 豊樹 三森 功士 牧野 直樹 堀内 孝彦
出版者
一般社団法人 日本温泉気候物理医学会
雑誌
日本温泉気候物理医学会雑誌 (ISSN:00290343)
巻号頁・発行日
pp.2318, (Released:2018-10-26)
参考文献数
22

これまで温泉治療が様々な疾患に療養効果があることは示されてきたが,一般的にどのような疾病に予防効果があるのかは示されていない.また,温泉入浴の禁忌症は示されているものの,某かの疾病の発症を促進する可能性についても知られていない.このような状況を踏まえて,筆者らは,平成24年度から3カ年間,65歳以上の高齢別府市民2万人を対象に,温泉の利用歴と各種疾患の既往歴に関するアンケート調査を実施し,その解析結果を先頃論文報告した.結果は,性別によって分かれており,温泉入浴が,男性においては,心血管疾患の予防に寄与し,女性では,高血圧に予防的に働くが,膠原病などの発症には促進的に働く可能性などが示唆された.このように,温泉は必ずしもすべての疾患の予防に働くわけではなく,一部促進する場合もあり得ることが伺えた.この疫学調査から伺える予防的効果には,温泉の効能としては期待されてこなかったものやこれまで示されてきた効能に反するものが含まれている.本編では,様々な疾患に対する温泉の予防効果と治療効果のずれという観点から,アンケートによる疫学調査をレビューする形で紹介したい.
著者
三森 功士
出版者
日本大腸肛門病学会
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.75, no.10, pp.449-452, 2022 (Released:2022-10-28)
参考文献数
11

がんゲノム医療により分子標的薬に合致した患者群は生存期間が延長した.しかしその恩恵を享受できる症例は未だに少ない.ごく最近,ミスマッチ修復酵素異常を有する直腸がん12例に対してPD1阻害剤を投与したところComplete Responseが100%という衝撃的な報告がなされたことをまず紹介する.一般に大腸がんはAPC/βcateninなどWNTシグナル経路,KRASを擁するEGFR/PI3Kシグナル経路,Notchシグナル経路そしてTGFβシグナル経路におけるゲノム変異が重要であり,これらを標的とした創薬において世界中で鎬が削られている.また核内転写因子に対する阻害剤の開発は難しいとされておりWnt/βcatenin TCF複合体に対しては未だに有効な化合物はない.本稿では免疫療法を含め大腸がん治療標的となる遺伝子変異を改めて確認すると同時に治療薬に関する最新情報の一部を紹介する.
著者
柴田 浩平 前田 豊樹 三森 功士
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

大腸癌における発癌または癌進展における新規non-coding RNAが注目されてきた。われわれは大腸発癌および癌進展において重要な役割を担う因子について解析を行った既存のデータベース(aCGH, Gene Expression, SNP アレイ)があり、これらをin silico に解析するなどしてlong nc RNAおよびmicroRNAについて解析を進めた。その結果、1)mTOR経路を標的とするmiR144が大腸癌の予後と関連すること。2) 大腸癌のゲノムクラスター上変異と発現変異とが相関する領域としてmiR17-92aが重要であることを改めて明らかにした。さらに3)大腸発癌関連遺伝子多型として8q24 (rs6983267)が知られるが、同多型直上において存在するlincRNA を同定し、同ncRNAの発現がMYCを介した大腸癌進展に寄与することを明らかにした。本助成により、臨床的に有用なマーカー候補であるnon coding RMAを同定し、また基礎的にも新たな発癌機構を明らかにしえた。