著者
後藤 早智 茂木 瑞穂 薮下 綾子 三輪 全三 髙木 裕三
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.193-201, 2012-06-25 (Released:2015-03-17)
参考文献数
25
被引用文献数
1

歯科用局所麻酔剤スキャンドネストⓇ(3%メピバカイン塩酸塩製剤)は,血管収縮薬,防腐剤や酸化防止剤等の添加物が無配合,短時間作用型という特徴を持つことから小児歯科治療において有用であると考えられるが,小児に対しての国内での使用成績の報告は少ない。そこで,本研究では,小児歯科治療における本剤の臨床的有用性を検討した。対象は東京医科歯科大学歯学部附属病院小児歯科外来で局所麻酔下にて窩洞形成や抜髄等の歯科治療を行った148 症例で,術者および患児にアンケート調査を行った。局所麻酔剤はスキャンドネストⓇ,シタネストⓇ,シタネスト-オクタプレシンⓇ,キシロカインⓇ,オーラⓇ注の5 種類から,術者の判断で選択し,使用した。その調査結果では,麻酔効果および処置中の痛みにおいて,薬剤間による有意差は認められなかった。また,薬剤の種類と術後違和感において有意な差が認められ,スキャンドネストⓇは,他剤と比較して術後違和感が少ない傾向が認められた。以上より,スキャンドネストⓇの麻酔効果は他剤と同等で,持続的観血処置や長時間(30 分以上)の処置を除けば,術後の咬傷などを防ぐ意味でも小児歯科において有用性の高い局所麻酔剤と考えられ,他剤を含めた局所麻酔剤の選択肢が拡大したといえる。
著者
三輪 全三 飯島 英世
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

1.研究目的 : 現在小児における歯髄の生死は主として電気刺激などの侵襲的な刺激に対する反応によって判断されていることが多い。本研究では、小児の歯髄から透過光光電脈波(TLP)を記録し、この脈波の有無が歯髄生活テストヘ応用が可能か否かを検討した。2.研究方法 : 予備実験として成人を被験者とし、今までに報告されている透過光光電脈波法(井川ら1983)によって健全歯の歯髄から脈波が検出できることを確認した。次に小児の健全歯(幼若永久歯および乳歯)からも同じように歯髄脈波が検出できることを確認した。方法は被験歯の印象模型から製作した個歯アダプターの口蓋側に付けられた光ファイバーを通して、歯に緑色の発光ダイオード(LED、ピーク値525nm)を照射し、この透過光を唇側から採取した。透過光はCdS光電セル(ピーク値、550nm)に導かれ、透過光量は交流増幅器を通しTransmitted Light Photoplethysmography(TLP)として被験者の指尖脈波と同時に記録した。記録はうす暗い部屋で、遮光性の黒色ラバーダムを装着した場合としない場合とに分けて行ない、歯周組織脈波の混入の影響を確認した。成人被験者において、局所麻酔前後でのTLP振幅の変化を観察した。TLP信号は後で平均加算し、脈波振幅は信号処理ソフトを使用して求めた。3.研究結果 : 1)成人および小児の被験者の健全歯から、指尖脈波に同期したTLPが検出された。小児の被験歯では成人と比較してTLPの脈波振幅は大きく、波形も明確であった。2)電気刺激に反応しなかった脱臼歯においてもわずかにTLPは記録された。しかし、再植歯では明瞭な波形は検出されなかった。3)ラバーダムの装着により信号の有意な減少は生じなかった。4)局所麻酔よって、TLP振幅が変化することからTLPは歯髄の血流を反映してると思われた。本法は非侵襲的で痛みを誘発せず、客観的であるため、外傷歯や幼若永久歯などの歯髄診断に有用であり、小児歯科臨床における検査法として応用できる可能性が示唆された。