著者
安藤 敏夫 飯田 新一 国分 尚 上田 善弘 MARCHESI EDUARDO
出版者
日本植物分類学会
雑誌
植物分類・地理 (ISSN:00016799)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.95-109, 1995-04-28
被引用文献数
10

ペチュニア品種の改良は, 1834年のP.axillarisとP.integrifoliaの交雑に始まる。少なくとも当初はどちらもウルグアイ産のものが使われたことから, 品種の遺伝的背景を解析するには, ウルグアイ産の両種の実態を解析することは有意義であろう。本報では, まずウルグアイ内にP.axillarisの2亜種の存在を見いだし, その分布状況を調べた。5季に渡る実地踏査の結果, ウルグアイ南東部のCanelones, Maldonado及びMontevideoの3郡には, 花冠が大きく, 花筒が短く, 2強雄ずいをもつ亜種axillarisが, 北西部のArtigas, Salto両郡には, 花冠が小さく, 花筒が長く, 等長雄ずいをもっ亜種parodiiが各々分布していることが分かった。これら計5郡産の60標本から, 花筒長, 花冠縁部長, 花茎長, がく裂片長及び花筒長/花冠縁部長の5形質を計測し, ステップワイズ判別分析により両亜種の判別関数を得た。これに他郡産標本の値を代入して, ウルグアイ全域からの計174地点分の標本を判定した。ウルグアイ中央部を流れるネグロ川を境として, 南東部に亜種axillarisが, 北西部に亜種parodiiが分布していたが, 境界付近の南西部には判定を保留すべきものが認められ, そこで形態が遷移している可能性が示唆された。
著者
〓 世宝 横井 政人 斎藤 規夫 上田 善弘 鴫原 淳 本田 利夫
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学園芸学部学術報告 (ISSN:00693227)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.13-17, 1995-03-30

本研究はこれまでAcerで報告されていないcyanidinn 3-O-[2"-O-(β-D-xylopyranosyl)-6"-O-(α-L-rhamnopyranosyl)-β-D-glucopyranoside] (通称cyanidin 3-xylosylrutinoside) をAcer macrophyllumおよびBegonia semperflorensの品種'F1アンブラ・スカーレット'と'F1アンブラ・ピンク'の銅赤色の春の新葉から単離精製し、その正確な構造をFAB-MSおよび^1H-^1H COSYとDIFNOEを含む^1H-NMR技術によって同定した.その上、このcyanidin 3-xylosylrutinosideのAcerでの分布を調査し、この色素はAcer macrophyllumの主要アントシアニンであることを明らかにした。
著者
上田 善弘
出版者
社団法人 におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.157-163, 2010-05-25 (Released:2016-04-01)
参考文献数
13

バラと人の付き合いは花の香りを利用することから始まった.それは古くは古代ペルシャにさかのぼり,その後,ローマ人はバラを多用し,小アジアやエジプトから輸入した.香料用に利用されていたバラは,その花のはなやかさにより観賞用植物として大発展することになる.ところが,これまでのバラ育種では,バラ本来の重要な形質である香りよりも花の色や形に視点がおかれていた.最近では,香りが再認識され,新たな香りバラの育種が世界各国で行われるようになってきた.
著者
上田 善弘
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学園芸学部学術報告 (ISSN:00693227)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.241-328, 1994-03-25

1.44種,20変種,5種間交雑種および76品種のバラを用い,花と葉の各器官について計測を行った.計測値から算出される二次変数も加え,クラスター分析および主成分分析を行った.2実験からなり,供試材料および測定形質を変更して行った.クラスター分析の結果,実験1,2ともにPimpinellifoliae節の種およびHSpn系統の品種がクラスターを形成した.Rosa節の種は両実験で広く分散した.実験2においてHT系統の品種のほとんどがクラスターを形成した.主成分分析の結果,両実験とも第1主成分は大きさに関する因子とみなされ,葉および花器器官の小さいものからPimpinellifoliae節の種,Rosa節の種,R. gallicaとその関連種の順に分けられた.実験2においてHT系統の品種は形態が大きく,本主成分の正の方向に広く分布した.実験1において,第3主成分に八重化に関する因子(がく筒開口部径,雄ずい数など)が抽出され,改良品種と野生種が明確に区分できた.2.12種,8変種,2種間交雑種および29品種のバラを用い,花芽分化を形態学的に観察した.また,34種,22変種,7種間交雑種および82品種のバラを用い開花枝の節数,長さを調査した.さらにこれらのバラにつき開花期を調査し,各形質間相互の関係を検討した.調査したすべてのバラで,花芽は開花当年の萌芽とともに分化を開始し,およそ40日から60日で発達を完了していた.開花枝の諸形質のうち節数は,他形質に比べて開花枝間の変異が小さく安定し,種および品種で固有であると思われた.種では,節数は開花開始日と有意な正の相関(r=0.712)があり,節数が多いほど開花が遅かった.現代の栽培バラ系統は,節数の増加とともに節間長が長くなり,シュートが強勢になるように育成されてきたものと考えられる.また,種および品種によっては四季咲き性と一季咲き性の中間的な開花習性を示すものがあり,これらのバラでは開花枝の長さの割に節数が多いのが特徴であった.1.バラ属95種(species),22変種(varieties),8品種(forms),155栽培品種(cultivars)および関連属(Rubus6種,1種間交雑種,Potentilla 3種,3栽培品種,Kerria 1種,Neviusia 1種,Rhodotypos 1種)の花粉表面を走査型電子顕微鏡により観察した.バラ属植物の花粉表面にはバラ科植物に一般的な彫紋構造がみられ,うね(ridge)と微散孔(perforation)により特徴づけられた.この彫紋構造は種および品種で幅広い変異がみられ,その特徴により花粉表面型をIからVIの6タイプに分けた.これらのタイプの種間の分布をみると,各々が属する分類群(亜属,節)ごとに特徴ある花粉表面型がみられた.各分類群特有の花粉表面型から逸脱する種については,その所属についての検討が必要と思われた.古い系統の品種では,祖先種の花粉表面型を受け継ぎ,系統ごとに特徴的な花粉表面形態を示した.しかし,現代品種の系統(HT,F)では幅広い変異を示した.関連属の花粉でバラ属の特定の花粉タイプに似るものとバラ属に全くみられない新しいものとがみられた.2.供試材料のなかから選定した種および品種につき,SEMにて観察し撮影した写真から花粉の大きさおよび花粉表面形態に関する形質を計測し,その計測値を基に多変量解析(クラスター分析,主成分分析,判別分析)を行った.種を中心としたものと品種を中心としたものの2実験からなり,それぞれにつき多少測定形質を変更して行った.実験1ではクラスター分析によりPimpinellifoliae節の種とHSpn系統の品種がクラスターを形成し,Rosa節の種は広く分散した.Synstylae節の種は大きく2つに分けられた.主成分分析の結果,第1主成分に花粉の大きさに関する因子が,第2主成分に微散孔に関する因子が抽出され,これらの2主成分により各々の分類群は分けられた.特にPimpinellifoliae節の種とHSpn系統の品種は第2主成分により他の分類群から分けられた.判別分析の結果,種全体で各分類群への判別率は平均57.4%であった.1種のみからなる分類群では確実に所属の分類群に判別された.Caninae節とRosa節の種は判別率が低く,30%台であった.また,微散孔の総面積が分析過程で最初に取り込まれ,本形質が各分類群を判別するのに最も有効な形質であることが分かった.実験2ではクラスター分析によりTとCh系統の品種,PolとHRg系統の品種が各々,祖先種とともにクラスターを形成した.その他多くのクラスターが形成されたが,系続ごとのまとまりはなかった.主成分分析の結果,第1主成分にうねに関する因子が,第2主成分に微散孔に関する因子が抽出された.このうち第1主成分により,主な系統はHRg・Pol群,B群,T・Ch群の3群に分けられた.一方,HSpn系統の品種は第2主成分により他の系統から分けられた.判別分析の結果,全体で26.7%の判別率であり,各系統間に判別率の幅広い変異がみられた.本分析では実験1で測定しなかったうね間の距離が判別に有効な形質として最初に取り込まれた.多くのバラの種および品種を用い,発芽法および染色法により花粉稔性の変異を調査した.併せて,花粉の稔性評価手法について最適な手法について検索を行った.まず,花粉発芽について,発芽培地へのほう酸の添加は花粉の発芽を促進し,その濃度は50ppmで充分であった.また,20℃以上の温度が発芽に好適であった.この発芽条件での花粉発芽率と各種染色剤による花粉染色率を比較したところ,どの染色剤との間にも有意な正の相関がみられた.しかし,酢酸カーミンでは,花粉発芽率に比べ染色率が高く,逆にMTTでは染色率がより低く,さらにヨードヨードカリでは相関が他の染色法に比べて低かった.それに対し,FDAを用いた蛍光染色法は最も花粉発芽率と相関が高かった.野生種が最も花粉稔性が高く,続いて種間雑種,栽培品種の順であった.種ではRosa節とBanksianae節の種において,品種ではHRgとPol系統の品種で比較的高い花粉稔性がみられた.HTやF系統の現代品種は他の系統に比べ花粉稔性が非常に低かった.これらの品種につき,育成年代順に花粉稔性をみると,品種分化が進むに従って花粉稔性が低下してきていた.黄色バラ4種,2変種,24品種を用い花弁に含まれるカロチノイド色素をTLCおよび機器を用いて分析した.TLCにより38の色素に分離され,そのうち25の色素について同定または推定した.これらの色素には多種のエポキシド型カロチノイドが含まれていた.供試材料におけるこれらの色素の分布から,バラの黄色の発色はβ-Caroteneと大量のエポキシド型カロチノイドからなることが分かった.特にR. foetidaからの黄色導入以後の品種において,そのことは著しく,エポキシド型カロチノイドを主要な構成色素とした. Noisette系統の'Marechal Niel'は他の種または品種にみられない色素構成を示し,カロチノイド色素生合成の初期段階の色素を多く含んでいた.
著者
上田 善弘
出版者
大阪歯科学会
雑誌
歯科医学 (ISSN:00306150)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.g15-g16, 1995-08-25

根管充填用シーラー(シーラーと略)には緊密な根管封鎖性と高い組織親和性が求められる. さらに, 根尖孔を硬組織で封鎖させる作用を有することが理想的とされている. 最近, リン酸カルシウムの硬組織誘導能と高い組織親和性が注目され, リン酸カルシウムを主成分とする新しいシーラーの研究, 開発が進められている. 今回, α-リン酸三カルシウム(α-TCP)とクエン酸/タンニン酸溶液を主な成分とする2種類と, リン酸四カルシウム・リン酸水素カルシウム等モル混合物(TeDCPD)と低濃度クエン酸溶液からなる1種類のシーラーを試作した. そして, これらの物性と組織刺激性を検索し, 臨床応用の可能性を検討したのでその結果を報告する. 実験材料および方法 試作シーラー-1 (NS-1)の粉剤は70% α-TCP/30% TiO_4で, 液剤は35%クエン酸/5%タンニン酸溶液, 試作シーラー-2 (NS-2)の粉剤は85% α-TCP/15% BaSO_4で液剤は35%クエン酸/5%タンニン酸溶液である. また, 試料シーラー-3 (NS-3)の成分はTeDCPDと増粘剤および防腐剤を含む2.1%クエン酸溶液である. 対照には市販の酸化亜鉛ユージノール系シーラー(ZOE)とリン酸カルシウム系シーラー(ARS)を用いた. 試料シーラー練和後のpH, 硬化時間, 崩壊率を測定して物性を検討するとともに, エックス線回折(XRD)による硬化体内反応物の同定を行った. また, 根管を拡大・形成(#70)したヒト抜去上顎中切歯40歯に各シーラーをレンツロで根管に填入し, 一部を液体窒素中で凍結, 割断し根管壁とシーラーの界面および硬化後のシーラー内部の観察のために走査型電子顕微鏡(SEM)の検索に供し, 残りは墨汁に浸漬したあとに根管封鎖性試験に用いた. さらに, 試作シーラーの組織刺激性試験を Sprague Dawleyラット背部皮下組織と根尖歯周組織で行った. すなわち, 30匹のラット背部皮下に各シーラーを埋入した1および4週後の, また, 別の75匹のラットで下顎左右側第一臼歯根管の抜髄と根管拡大・形成(#25)を行い, 各シーラーを充填した. その後, 1, 2, 3, 4および5週後の組織反応について, それぞれ通法に従って作製した6μmの連続切片(ヘマトキシリン・エオジン染色)にて病理組織学的に検索した. 結果・考察 液剤が練和後のpHに強く影響し, NS-1, NS-2およびARSは酸性を示し, NS-3のみが中性域にあった. また, 根管封鎖性は試作シーラー, なかでもNS-3が有意に優れていた. 硬化時間はすべてのシーラーで有意差が認められ, NS-2の硬化が最も早く, ARSが最も遅かった. 崩壊率はNS-1とNS-2は3%を超え, ARSも約3%であったが, NS-3は約0.9%で優れた結果を示した. TiO_2やBaSO_4の添加が硬化時間の遅延および崩壊率の増加に関係すると思われる. 練和後14時間のXRDでは, NS-1とNS-2にハイドロキシアパタイト(HAp)が検出されず, α-TCPとTiO_2あるいはBaSO_4が検出されたのみであった. NS-3では低結晶性がHApがおもに検出された. SEMでの観察の結果, NS-1とNS-2には貫通性の小孔が存在し, NS-3には板状と塊状の粒子で満たされた小孔が存在した. XRDとSEMの結果から, NS-3の優れた封鎖性が確認された. 組織刺激性はNS-2が最も強く, 高い酸性度とBaSO_4の影響が示唆される結果が得られた. 結論 1. NS-1は強い酸性を示したが組織刺激性は緩徐で, 新規シーラーとして応用できる可能性が認められた. 2. NS-2は強い組織刺激性を示し, 新規シーラーとして不適当であると結論された. 3. NS-3は凝結硬化するために初期にマクロファージ系細胞を誘導するが, 優れた生体親和性を有することが確認された. さらに, NS-3は崩壊率が小さく, pHも中性域にあることから, 新規シーラーとして有望であると判断された.
著者
安藤 敏夫 上田 善弘 橋本 悟郎
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学園芸学部学術報告 (ISSN:00693227)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.17-26, 1992-02-25
被引用文献数
5

Petunia属の今後の研究に資する為,Calibrachoa属を含めた広義のPetunia属を記載した文献,71編を集め,最新の記載に従って配列し解析した.文献には,64種類の種名が認められ,それらはFries(1911),Wijsman and de Jong (1985)およびWijsman(1990)に従って7グループに類別できた.そのうち,およそ40種類の種名は,採用可能なものであったが,いずれも今後の検討を必要とした.いくつかの種名に対しては,手続き上の誤りが認められた.ブラジル,ウルグアイ,アルゼンチン,パラグアイ及びボリビアに於けるPetuniaの分布がまとめられ,各国,各州に分布する種数が推定された.それぞれの種に対して,タイプ標本の種類とその存否が検討された.