著者
上田 賢悦 清野 誠喜 齋藤 了
出版者
[東北農業試験研究協議会]
雑誌
東北農業研究 (ISSN:03886727)
巻号頁・発行日
no.58, pp.265-266, 2005-12

9月以降に収穫する晩生品種の枝豆に対し、産地は盛夏期の枝豆よりも食味、食感ともに優っていると評価している。しかし、本報告に先立ち実施した調査によれば、首都圏在住の消費者は9月以降に販売されている枝豆に対し、「夏の残り物」というマイナスイメージを購入前から持っている。こうした産地と消費者間の意識の乖離は、産地による「美味しい事実・理由」の説明が不十分であることも、その一因として考えられる。そのため産地側は、この"意識の乖離"を理解した上で、マーケティング対応を検討することが求められる。本報告は、「ホームユーステスト(in-home use test)」により、9月以降に販売される枝豆に対する消費者意識を明らかにし、県産枝豆のマーケティング対応の方向性を検討する。具体的には、(1)9月以降に販売される枝豆に対する消費者意識の把握、(2)9月以降に販売される枝豆の訴求ポイントの検討、である。
著者
齋藤 文信 清野 誠喜 上田 賢悦
出版者
秋田県農林水産技術センター農業試験場
雑誌
秋田県農林水産技術センター農業試験場研究報告 (ISSN:18818757)
巻号頁・発行日
no.48, pp.79-86, 2008-03

エダマメ新品種の商品開発に際して、種苗会社における商品開発と農業試験場における商品開発を比較し、問題点を把握した。その問題点の解決にマーケティングの手法を活用することとした。具体的には、以下の点を実施した。(1)生産者を含めた関係者が連携するための体制整備。(2)店頭マーケティングリサーチ結果の関係者への提示。(3)店頭における販売促進活動の有効性の立証。(4)陳列方法の違いによる購入比率の変北を把握。(5)数量確保に向けた出荷体制の確立と新パッケージ導入支援。以上の取り組みと調査から、(1)開発者から生産者までの関係者で構成される現地推進協議会と県庁が連携し、「香り五葉」の普及拡大が図られた。(2)店頭マーケティングリサーチ実施により、「香り五葉」の販売される9月期のエダマメについて、産地と消費者の間にはギャップがあることが確認された。(3)そのギャップ解消には産地POPが有効であることが消費者購買行動調査によって確認された。(4)アイランド陳列が購入比率を高めることを確認した。(5)アイランド陳列の実施のためにロット確保の必要性を明らかにした。(6)グループインタビューにより消費者のエダマメパッケージに対するニーズを把握し、消費者ニーズに適合した新たなエダマメパッケージの作成支援を実施した。これらのことから、商品開発プロセスにマーケティング手法を活用することの有効性が確認された。
著者
上田 賢悦 清野 誠喜
出版者
富民協会
雑誌
農林業問題研究 (ISSN:03888525)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.368-373, 2013-09-25

栽培地域が偏在し,生産量が少ない地域特産農産物の多くは,国内生産量が年間3万トン以下の農産物である「マイナー作物」として分類される。しかし,そうした作物の生産が集中している地域にとっては,生産・販売の維持及び発展が地域経済にも大きな影響を及ぼすため,その振興が重要な課題となっている。地域特産農産物を対象とした代表的研究としては小野らがあるが,そこでは生産や流通の実態解明に重きが置かれており,地域特産農産物の維持・発展を産地マーケティングの視点から分析するものではなかった。そうした中,市川らは薬用人参を対象として,産地マーケティングの視点からその分析を行い,マーケティング活動の成否が産地に大きな影響を与えることを明らかにしたが,対象としたマーケティング主体はJAのみであった。しかし,何らかの加工処理が施され,製品となる地域特産農産物においては,地域内の加工業者のマーケティング行動が,その振興に対して大きな影響を及ぼすことになることから,JAのみを対象とした分析だけでは不十分であり,地域の加工業者に着目した分析が必要となる。