著者
野間 万里子
出版者
富民協会
雑誌
農林業問題研究 (ISSN:03888525)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.23-32, 2010-06

文明開化期の牛鍋ブームの中、肉食は、薬食という建前の下許されるものからおおっぴらに楽しむことができるものへと変化した。「肉食はけがれるものとおぼへまして、とんと用ひずにをりましたが、御時世につれまして、此味をおぼへましたら、わすられませぬ」と語られることになる。牛鍋ブームを可能としその後の肉消費拡大を支えたのは、広範に存在した役牛であった。明治初期にはすでに100万頭を超す牛が主に農用として存在しており、耕耘機の普及する1950年ごろまで、一部の乳牛を除き、牛は役肉兼用として飼養されていた。本稿では、明治期から近江牛や江州牛、あるいは神戸牛として高評価の牛を送り出していた滋賀県を事例に、役牛から役肉牛への転換の中でどのように肥育技術が展開し、軟らかい肉を求めるひとびとの食欲に応えようとしたのかを検討する。その際、使役段階と肥育段階とがどのような関係として捉えられていたのかも、明らかにしたい。また、滋賀県における牛肥育が、高級肉消費地である東京との結びつきの中で展開したことも示す。
著者
伊藤 淳史
出版者
富民協会
雑誌
農林業問題研究 (ISSN:03888525)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.177-186, 2010-09-25

本稿では,戦後日本における海外移住政策について,従来ほとんど検討されていなかった農林省サイドの動向に焦点をあてて考察を行った.その結果,農林省サイドの海外移住政策には人的系譜・政策の位置付け双方における満洲農業移民政策との連続性が見出された.海外移住を人口政策として捉えていた外務省サイドでは1960年代以降事業推進の動機が失われるのに対して,農林省サイドでは時々の政策課題に応じた位置付けが与えられた.加えて,海外移住は外務省にとって大東亜省発足にともなって新たに付加された事業であったのに対して,農林省においては戦時期に重要国策として取り組まれた経緯があった.戦後長期にわたって海外移住が推進されたことを外務省サイドの動向のみから説明することは困難である.農林省によって与えられた農業政策としての側面に着目することが必要だろう. また,現在30万人以上におよぶ日系ブラジル人の「デカセギ」現象について,1990年の入管法改正に先立つ戦後移民の「還流」形態が大きな影響を及ぼしていることを指摘した.日系ブラジル人労働者に関する先行研究ではほとんど言及されることはないが,戦後移民の存在を抜きに現在の「デカセギ」を説明することは困難である.従来,満洲移民研究・戦後移民研究・外国人労働者研究は相互を参照することなく行われてきたが,今後は積極的な対話が望まれよう.
著者
加古 敏之
出版者
富民協会
雑誌
農林業問題研究 (ISSN:03888525)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.171-176, 2000-03-25
被引用文献数
1
著者
イサハク ザカリア・アミデユ マハラジャン ケシャブ・ラル
出版者
富民協会
雑誌
農林業問題研究 (ISSN:03888525)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.143-147, 2013-06-25
参考文献数
7

気候変動が食物生産に影響が与えることは色々な研究によって明らかにされている。本稿では、ガーナの主要食物の収量において気候変動がどのような影響を及ぼすかを究明することとする。そのため、世帯調査の戸票データを用いて気候変数(温度と降雨量)が主要食物(キャッサバ、トウモロコシ、ソルガム、コメやヤム)の収量に与える影響について計量分析を行う。その際、確率的フロンティア生産モデルを活用する。その結果、緩やかな温暖化が顕著にキャッサバやソルガムの収量を増加させるが、米においては収量が減少することが判明した。農業投入材の利用は基本的に増収につながるが、農薬の投入時期や投入量が不適切であれば収量増にはつながらない。気候や投入材の他、農地規模、世帯規模、世帯主の性別、年齢、教育のような社会経済的要因が食用作物の収量に有意な影響を与える。ゆえに、本研究では、気候変動による食物収量への影響を最小限にとどめるため、化学肥料等の容易な確保につながる投入材市場の効率化、高温や干ばつに強い種子の普及、小農における効率的農薬利用の条件整備の重要性を指摘する。同様に、気候変動や技術に関する情報を効率的に農家に伝えるために普及員やコミュニティーラジオのようなメディアも活用すべきである。
著者
丸 健
出版者
富民協会
雑誌
農林業問題研究 (ISSN:03888525)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.216-225, 2012-09-25
参考文献数
21

トルコは2005年にEU加盟交渉を開始し、早ければ2015年には加盟が承認される可能性がある。加盟における障壁の一つとして、EUの共通農業政策(CAP)への対応が挙げられ、トルコ政府は直接所得支持を中心とした農業政策への移行作業を進めている。EU加盟によるトルコ農業の国際競争力低下が予想されることから、農業の国際競争力を把握し、政策の変更による影響の評価を扱う必要性が高まっている。そこで、本稿では国内資源費用(DRC)アプローチを用い、トルコ農業の国際競争力を推計し、先行研究の結果と比較を行った。
著者
森下 裕之 宮崎 猛
出版者
富民協会
雑誌
農林業問題研究 (ISSN:03888525)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.256-261, 2008-06-25
参考文献数
4
被引用文献数
3

中国雲南省元陽県には、世界遺産に申請中の世界最大級の棚田がある。少数民族のハニ族が耕作する棚田農村では、森林(聖山・聖樹)・棚田(稲魂)保全の伝統文化による有機物と水・蒸気・降雨との循環システムの保全活動、アジア・モンスーンの気候風土に基づく生物多様性を最大限に活用した棚田中心の農畜漁業の発展、自給自足に近い自然主義的稲作を中心に多様な生物相から少しずつ食料を地産地消する生活がみられ、近年の農業生産力の発展は高い人口の伸びをもたらしている。しかし、中国経済の高度経済成長は内陸部の山間僻地にある棚田農村でも、青壮年層の出稼ぎの急増と観光客の増加として影響を強めている。出稼ぎの増加は、棚田の粗放的管理や耕作放棄による棚田の崩壊を引き起こし、観光客の増加に対応した農家楽の振興は、農民間の貧富の格差拡大や観光公害等の新しい農村問題を引き起こしている。本稿では、元陽県新街鎮土戈寨村での農家調査に基づいて、主要な現金収入源である出稼ぎと農家楽を分析する。とくに個人営と集落営の2タイプの農家楽を分析して、棚田農業保全のための出稼ぎの抑制と貧富の格差是正とのためには、集落営の農家楽が効果的であることを明らかにする。本稿は、住友財団の環境研究助成「中国雲南省元陽県の棚田における持続的農業と循環型社会の構築に関する学際的研究」の成果の一部である。
著者
山藤 篤 胡 柏
出版者
富民協会
雑誌
農林業問題研究 (ISSN:03888525)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.47-53, 2008-06

本報告は、農産物のインターネットを駆使した販売(以下ではネット販売とする)について、柑橘を事例にとりあげる。柑橘の消費者向けネット販売の実態を、出荷組織のネット販売開始の目的と経緯についての比較分析し、今後の課題を明らかにしたい。事例研究の対象としたのは、愛媛県の農協系統の県レベルの出荷団体である「県農えひめ」(現「全農えひめ」)と、愛媛県下の温州ミカン銘柄産地である八幡浜市及び西宇和郡を事業エリアとするJA西宇和農業協同組合、及びこの農協管内で最優秀産地のひとつとされる真穴(まあな)柑橘共同選果部会である。
著者
小山 良太
出版者
富民協会
雑誌
農林業問題研究 (ISSN:03888525)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.421-430, 2013-03-25
参考文献数
14

2011年の3.11から2年が経過しようとしている。福島県は津波・地震に加え原子力災害とその延長上にある「風評」問題に晒され続けている。事態は収束するどころかある面では拡大していると言っていいかもしれない。福島県農業における原子力災害の影響について,全国的な報道は減少しているし,本当の現状はあまり伝わっていないと感じている。先日も東京で行われたある会議で,「放射能に汚染されているのに農業を続ける福島の農家は身勝手だ」との発言を受け,怒りどころかただ落胆した。いわゆる風評被害である。風評被害という言葉を文字通り解釈すると本当は安全なのに噂を信じて買わない消費者が被災地の農家に被害を与えているという意味になる。果たしてそうだろうか。消費者も含め放射能汚染対策の不備に翻弄されるものすべてが被害者である。原発事故の影響で放射性物質が拡散した地域は福島県に限らない。しかし2年経った今でも,各農地の放射性物質含有量は測られていない。政府による詳細な放射能汚染マップが未だに作成されていないのである。検査体制も出荷前・流通段階でサンプル検査(福島の米のみ全袋検査)をするという体制であるが,店舗で売られている農産物そのものの放射性物質含有量はわからない状況である。事故後,筆者はチェルノブイリ原発事故で汚染されたべラルーシの農業調査を2回実施した。ベラルーシでは農地の汚染マップをもとに汚染度の高低に合わせてサンプル数を変える。または栽培する農産物を変える(新産地形成)などの対策をとることで検査体制の精度を上げていた。これにより基準値を超える農産物は流通しなくなり,生産段階でもゼロベクレルにちかい営農が可能になっている。このような対策を施して初めて信頼関係が再構築され,それが安全性の確認,安心感に繋がるのである。すなわち風評被害の解消には,放射能汚染の損害状況の確認(農地の汚染マップ)と安全検査体制の体系化(汚染度に合わせた対策)が必要であり,これには農家やJA,自治体の自助努力だけでは太万打ちできない。政府の唯一の役割と言っていい放射能汚染問題に関する法令の整備が未だになされていないのである。そこで本稿では,放射能汚染地域における農産物の生産・流通段階の安全検査に関して,ベラルーシ共和国と日本の対応を比較検討した上で,農地の汚染マップ(作付可否認証制度)と安全検査体制に関する4段階検査モデル((1)全農地汚染マップ,(2)農地・品目移行率,(3)出荷前本検査,(4)消費地検査)を提示する。このような体系立てた現状分析がなされない限り実践的な復興計画(除染計画を含む)の策定は不可能であり,汚染地域における混乱の最大の原因はこの点にあるといえる。
著者
望月 政志 大石 太郎 八木 信行
出版者
富民協会
雑誌
農林業問題研究 (ISSN:03888525)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.391-396, 2013-09-25
参考文献数
15

2011年3月11日の東日本大地震による原発事故以来,原発依存からの脱却と再生可能エネルギーを用いたエネルギー代替の可能性,レジリアントなエネルギーの在り方が注目されている。そうした中で,世界第6位の排他的経済水域を有する我が国においては海洋再生エネルギーへの期待も大きく,中でも洋上風力発電は,大きなポテンシャルを有することが指摘されている。最近では,同じ海面を利用する漁業と洋上風力発電の共存共栄についても検討されてはいるものの,現時点では洋上風力発電所建設に伴う漁業への影響は不明である。他方,漁業の盛んであった被災地では,被災した漁業の復興を目指すのか,あるいは洋上風力発電を通じて再生可能エネルギーを提供していくべきかについて,補助金等を通じた政策的意思決定をどのように進めていくのか明らかにすることが求められている。そうした状況において国内における洋上風力発電の経済波及効果に関する分析は政策的判断をする上で重要と思われるが,既存研究ではほとんど行われていない。また,先駆的研究である松本・本藤では産業連関表を用いた風力発電の経済波及効果の分析を行っているが,洋上風力と陸上風力を区別しておらず,雇用効果のみの分析に留まっている。また,被災地での洋上風力発電に関する経済波及効果については,石川他が洋上風力発電による生産額からみた東北地域(岩手,宮城,福島)での経済波及効果の分析を行っているが,洋上風力発電所建設による直接投資によって生み出される経済波及効果に関する分析は行われていない。そこで本研究では,今後の震災復興における洋上風力発電や漁業振興への政策的意思決定に資する情報提供を行うことを目的として,以下の分析を行う。第一に,洋上風力発電所建設および建設に向けての計画や建設後のメンテナンス等を含むコストを洋上風力発電所設置への投資とみなし,その投資から生み出される経済波及効果を全国レベルおよび地域レベルで試算する。全国レベルでは,「平成17年(2005年)産業連関表」(総務省)を用いた全国での経済波及効果を試算し,国内にて洋上風力発電所を設置した場合の一般的な経済波及効果についてみる。地域レベルでは,海面漁業における被災漁船の被害額が全国で最も大きかった宮城県を事例に取り上げ,宮城県で洋上風力発電所設置に投資した場合の経済波及効果について「平成17年宮城県産業連関表」(宮城県)を用いて試算する。第二に,震災復興に向けて被災漁船の修復・建造のための設備投資を行った場合の経済波及効果と同等の投資を洋上風力発電に対して行った場合の経済波及効果を金額ベースで試算し,両者の比較を行った。第三に,洋上風力発電所が生み出す経済価値(年間発電金額)を試算した。また,宮城県の被災漁船の修復・建造によって生み出される経済価値(海面漁業生産額)についても試算し,洋上風力発電からと被災漁船の修復・建造から生み出される経済価値についても比較した。なお,洋上風力発電の基礎設置形式には,設置海域の水深の違い等により,風車を海底に固定させる着床式と風車自体を海に浮かべる浮体式の設置形式があるが,現時点では着床式が主流でありデータが充実していることから,本稿では着床式の洋上風力発電を想定し試算した。
著者
珍田 章生 川崎 訓昭 長谷 祐 小田 滋晃
出版者
富民協会
雑誌
農林業問題研究 (ISSN:03888525)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.41-46, 2012-06-25
参考文献数
2

ワインは極めて農産物的特徴を有する加工品であるにもかかわらず,砂糖やデンプン等の工業的農産物加工食品と同様に製造原価で評価されるべきであると考えられている。ワイン原料用ブドウならびにワインの会計的評価方法の異同とその理由について考察する。考察により,ワイン加工会計とブドウ栽培会計が異なる会計方針を採用するケースが現実に存在し,対象とする財を取り巻く会計的な環境がより類似していないと同じ会計方針は取り得ないことが明らかとなった。
著者
鄒 金蘭 四方 康行 今井 辰也
出版者
富民協会
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.262-268, 2008 (Released:2011-07-26)
著者
原田 智子
出版者
富民協会
雑誌
農林業問題研究 (ISSN:03888525)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.223-228, 2014

スリランカでは2009年5月に25年以上続いた内戦が終結した。紛争中に戦闘地域となった北部州では復興開発および帰還民の再定住支援が進められているが,貧困世帯が多く,世帯間格差が発生している(WFP,2011)。紛争に関わる諸問題は,当事国だけでなく国際的な重要課題の一つであり,紛争要因や平和構築に関わる研究の蓄積は多い。しかしこれまでの議論は,主として紛争要因やマクロ経済への紛争の影響に焦点が当てられ,紛争後社会における世帯の生計に関する研究は少ない。コロンビアでの内戦後の世帯生計に焦点をあてた研究では,紛争により被害をうけた世帯が喪失した資産を外部からの支援無しに再生することは困難であることが明らかにされている(Ibañez,A.M.,et,al.,2009)。しかし,紛争後社会における世帯の生計再建過程や世帯生計の特徴は十分に把握されておらず,生計再建の制約や紛争影響地における効果的な生計再建支援策は十分に明らかにされていない。こうした中,紛争後社会における世帯生計の特性を明らかにすることは,効果的な生計再建支援策を検討する際の準備となる不可欠な課題の一つである。そこで本研究では第一段階として,紛争後のスリランカ北部農村におけるタミル人世帯に焦点を当て,世帯生計の類型化を試み,各類型の特徴を明らかにする。マナー県は,スリランカの北部州に位置し,県内の一部が紛争中長期間にわたりタミル人反政府組織「タミル・イーラム解放の虎(Liberation Tiger of Tamil Eelam)」(以下「LTTE」とする)に支配されていた。紛争中,旧LTTE支配地域では政府軍とLTTEにより激しい戦闘が繰り広げられ,多数の住民が死亡し,基礎的インフラストラクチャー,公共施設,住宅などが壊滅的に破壊された。本研究では,紛争中に甚大な被害を受けた旧LTTE支配地域の2郡(マンタイウエスト郡とマドゥ郡)からそれぞれ3つの村を選定し,悉皆調査(調査世帯総数212世帯)を実施した。事例対象村の選定にあたっては,1)タミル人のみが居住している村,2)大多数の住民の主たる生業が農業である村,の2点を選定基準とした。生計の再建状況は村の地理的および社会経済的な条件により異なると考えられる。そこで,村間の生計再建状況の差異も含めて現状を明らかにするため,村の地理的・社会経済的な状況が偏らないように村を選定した。村間の顕著な差異としては,村の形成時期,県庁および郡事務所からの距離,灌漑施設の違い,村からの避難時期および再定住時期があげられる。世帯属性に関して,村間で顕著な違いはみられない。本研究は,Sustainable Livelihoods Approach (以下,SL Approachとする。)の分析枠組みを援用し,「生計は,1)資産(自然資本,物的資本,人的資本,金融資本,社会関係資本),2)活動,3)制度や社会関係の媒介による資産と活動へのアクセス,から構成される」とする(EIlis,2000)。
著者
内山 智裕
出版者
富民協会
雑誌
農林業問題研究 (ISSN:03888525)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.104-109, 2010-06-25
参考文献数
5
被引用文献数
1

農業における労働力不足を解消するために雇用労働力とりわけ外国人労働力に依存する傾向は、今後強まっていくことが予想される。外国人研修生の受け入れは、労働力確保ではなく開発途上国への技術移転を本来の目的とする。しかし、農業分野でも研修生の所定時間外作業や技能実習生への労働関係法規違反などの不正行為認定件数が2007年度に449件報告されるなど、制度の趣旨と実態にはかい離が見られる。これらの問題に対応し、平成21年度の入管法改正では研修生・技能実習生に国内労働関係法令を適用し、労働者としての権利保護を強化している。この改正そのものは、外国人研修・技能実習制度の趣旨を変更するものではないが、我が国全体の少子高齢化の状況に鑑みれば、農業分野における労働力不足を解消するために、外国人労働力に依存する必要性が今後高まることは不可避であり、その制度設計の検討が重要である。そこで本論では、季節性の強い農業分野における外国人労働力の受入制度を我が国が設計するにあたっての合意を導くことを目的として、イギリスにおける非熟練外国人季節農業労働者受入制度(SAWS)の変遷と実態を分析する。
著者
マオンガ ベストン・ビリー マハラジャン ケシャブ・ラル
出版者
富民協会
雑誌
農林業問題研究 (ISSN:03888525)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.270-281, 2003-12-25
参考文献数
25
被引用文献数
1

マラウィの農業は大農と小農に分けられる。前者は輸出用作物生産に特化し、後者は自給農業で大多数の国民の食糧を供給する。小農は依然として一期作を中心とした生産性の低い粗放的農業を行っている。ゆえに、近年小農において食糧確保が問題となっている。上記の研究課題を念頭にサンガチ農業区の実態調査を踏まえた事例分析を行ったところ、同地区においては1ha未満の農家は自らの食糧を確保できていないことが判明した。彼らの農業生産を取り巻く環境をそのまま放置しておけばこの現状は悪化する一方だと思われる。以上のことを踏まえ、本研究では小農の食糧生産事情を改善しその自給度を増大させるため、二毛作農業の体系とその可能性について検討した。その際、現地の農業環境、従来の農業、作物・作付けとの連続性ならびに農民の社会経済的状況、肥料・種子等の投入材の購買力、食糧のニーズ等の関係について検討した。その結果、農民的生産要素、農地、家族労働、伝統的知識を最大に活用しうる在来品種のトウモロコシとキャッサヴァの二毛作を軸にした農業が無理なく低コストで小農の食糧の自給度を高めることができることが明らかになった。このような農業を普及させるのがマラウィ農業の今後の課題となる。