著者
下村 久美子 金井 千絵 渡邊 博子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 59回大会(2007年)
巻号頁・発行日
pp.33, 2007 (Released:2008-02-26)

目的 古来から染色に用いられている藍は、現代でも工芸品やジーンズの染色に用いられ、染色には欠かせない染料として用いられている。そのほとんどは合成藍であるが、天然藍を用いた付加価値のある製品も市販されている。本研究では天然藍と合成藍の色相の相違を明らかにすることを目的として、天然藍と合成藍を用いて染色を行ない、これらの布の色相と染色堅ろう性を調べた。 方法 藍の染色は、琉球藍、すくも藍、合成藍、市販のインド藍の4種類を使用した。染色に用いた繊維は綿ブロード、麻、絹の3種類である。これらを藍の染色液に30秒浸した後、空気発色3分を1回の染色操作として、1回~15回の重ね染めを行なった。また、これらの染色布について洗濯、耐光、摩擦堅ろう度試験を行なった。 結果 4種類の藍染めを行ない、これらの染色布の反射率曲線からK/S値を求め、さらにL*a*b*値を求めた、その結果、色相は重ね染め回数が多いほど濃色に染色され、色調では濃度差はあるがほぼ同様であった。繊維の種類別では、今回の実験で用いた繊維の中では麻が最も染色斑がなく均一に染色できた。これは色素が付着するための間隙が広いことが影響すると考えられる。4種類共に洗濯堅ろう度の結果は4-5級、摩擦堅ろう度試験の結果は1-3級、耐光堅ろう度試験の結果は3-5級であった。これらのことから天然藍と合成藍の顕著な差は確認出来なかった。しかし、琉球藍と合成藍では添布白布に赤色の色素が付着したことから、赤色色素が染料中に含有されていることが示唆された。また、耐光堅ろう度試験は72時間の照射時間であったが、染色回数が多いと変退色は認められないが、特にインド藍の染色回数1回の絹の場合は、明らかに白黄色に変色することが確認できた。
著者
下村 久美子 谷井 淑子 猪又 美栄子 小原 奈津子 ファン ハイ・リン
出版者
昭和女子大学近代文化研究所
雑誌
学苑 = Gakuen (ISSN:13480103)
巻号頁・発行日
no.909, pp.52-61, 2016-07-01

For the purpose of preserving traditional clothing and recording its history of Vietnam, the authors visited Hoi An and Tan Chau Village in 2014 and in 2015. This paper offers a brief history of Hoi An and reports the result of interviews with 25 Hoi An residents including experienced elderly ex-tailors; the paper also details figures and describes traditional clothing such as the ao ba ba(jackets)and the quan(bottoms)and formal traditional clothing for funeral attendants and the dead; the paper also discusses ritual practices found mainly in Hoi An. In addition, the report looks at the process of traditional manufacturing of a silk dye work using mac nua(ebony fruits)and other materials. This includes chemical analysis and explanation of the dying handicrafts.
著者
下村 久美子 谷井 淑子 猪又 美栄子 小原 奈津子 ファン ハイ リン
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.68, 2016

<b>目的</b> 2005年からベトナム北部・中部・南部の農村にて、伝統的な衣服の着用実態や形態の変化などを解明することを目的として現地調査を実施している。これらを基盤として、2014年から商業地区の中部ホイアンにて現地調査をした結果、葬儀用の衣服について詳細な知見を得た。 <br><b>方法</b> ホイアン遺跡管理センターの協力を得て、2014、2015年に現地調査を実施した。かつて伝統的な葬儀用の衣服を仕立てていた高齢者を対象に、ホイアンの伝統的な形式の葬儀において、死者および親族が着用した衣服の種類、色や素材、着装方法などについて聞き取り調査を行なった。 <br> <b>結果</b> (1)死者に着用させる伝統的な衣服は、上衣に白いアオ・ババ、その上に赤いアオ・ザイを重ね、下衣に白いクアンを着用させる。男性は7つ、女性は9つの命が宿るとする考え方から、男性は7本、女性は9本の紐で縛る。女性の場合は、幅90cm、長さ150cmの布を3枚に切り分け、両端から途中までを短冊状に裂き、裂いてない部分を死者の下に敷き、裂いた布で身体を包むように結ぶ。(2)親族の衣服は、伝統的な形式の白いアオ・ババとクアンで、死者との血縁関係によって、衣服の形式や被り物、杖など持ち物に決まり事がある。(3)葬儀用の衣服は、かつては仕立屋が縫製していたが、1990年代以降は葬儀会社が利用されている。 <br>本研究は科学研究費基盤(C)(26350080)の助成による。
著者
猪又 美栄子 谷井 淑子 下村 久美子 小原 奈津子 ファン ハイ リン
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 69回大会(2017)
巻号頁・発行日
pp.219, 2017 (Released:2017-07-08)

目的 ベトナム北部~南部の5か所で伝統的衣服の調査を行ってきた。どの地域においても、伝統的衣服を日常的に着用しているのは、主に70歳以上の高齢女性であり、若い年代や男性ではほとんどみられない。その中で、アオ・ザイは現在でも晴れ着、儀礼服として着用されている。アオ・ザイの変遷について、被服構成を中心に報告する。方法 70歳以上の高齢者世帯を訪問して衣生活についての聞き取り調査を行った。調査内容は、高齢者の伝統的衣服の着用状況、子どもの時から現在までの伝統的衣服の着用経験、親・祖父母世代の伝統衣服の着用状況等である。伝統的衣服の種類および着装方法について確認した。結果 1.アオ・ザイの祖型として、アオ・トゥー・タン(四枚はぎの長い上衣)とアオ・ナム・タン(五枚はぎの長い上衣)があげられる。アオ・トゥー・タンにはボタンが無く、前身ごろを結んで着用した。アオ・ナム・タンは右下前として五枚目の布をつけた上衣で、前中心から右脇へボタンで留める形式である。北部ではボタンを留めずに前身ごろを結んだ着方もしばしばみられる。                                                     2.男性のアオ・ザイの形は現在までほとんど変化していないが、女性のアオ・ザイは様々に変化している。3.北部の古いアオ・ザイには、衿ぐりにラーセン(蓮の葉)と呼ばれる幅広の見返しがある。補強のためである。中部・南部ではアオ・ザイを祭礼服として着ていたのでラーセンは無かった。
著者
秋永 優子 中村 修 下村 久美子 阿曽沼 樹 キ須海 圭子
出版者
福岡教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

高齢者訪問給食サービスの献立の改善を目的とし、まず、13自治体の担当者に聞取り調査を実施した。栄養基準については、設定している自治体の場合、エネルギーのみ、さらに数種の栄養素についてなど様々で、数値を示していない自治体の場合、高齢者福祉施設の食事を利用するなど3通りがみられた。福岡県内全自治体を対象に基礎調査を実施したところ、サービス実施上のねらいとして、ほとんどが栄養バランスのとれた食事提供をあげたが、献立や実物のチェックはほぼされていなかった。そこで、献立評価方法を検討し、「栄養・食品構成」「食材・生産」「料理の味」の観点からなる、日常的に手軽に実施可能なチェックシートを提案した。