著者
小野寺 裕美 川瀬 豊 川端 博子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 59回大会(2007年)
巻号頁・発行日
pp.26, 2007 (Released:2008-02-26)

(目的)日本女性への普及率がほぼ100%であるブラジャーは、多くの小パーツから構成される繊細なものであるが、一般にどのように取り扱われているのかは明らかにされていない。また、手入れの違いがブラジャーにどのように作用するかの研究もごくわずかである。本研究では、若年女性を対象にブラジャーの使用実態を把握し、理想的な取り扱い方を提示することを目的とする。 (方法)若年女子のブラジャーの使用状況のアンケート結果をもとに、5の銘柄・4段階の洗濯方法を用い、未使用を含む25枚のサンプルを作成し、性能比較(寸法変化・引っ張り伸長特性・表面状態観察)と外観官能検査を行った。顕著な違いの認められた2段階のサンプル10枚については着用官能検査を行った。 (結果)性能比較の結果、ネットの有無に関わらず洗濯機普通コースのサンプルでは、ワイヤー及びカップに形状変化が見られた。手洗いコースのサンプルは外観において未使用サンプルとの差が認められなかった。外観官能検査において、7割の被験者が手洗いコースまでは使うと判断していたことからも、ブラジャーはワイヤー及びカップの形状が使用の可否を決める判断基準となっており、形状を保つためには手洗いが必須であると言える。また、安価な銘柄ほど洗濯による影響が顕著に見られ、デザイン重視で購入しがちな安価なブラジャーにこそ入念な手入れが必要である。着用官能検査では、手洗いのものが全般的に普通コースで調整したサンプルよりも高評価となり、シルエットに関する項目では有意差が認められた。
著者
遠藤 美智子 中島 滋 中村 宗一郎
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 59回大会(2007年)
巻号頁・発行日
pp.228, 2007 (Released:2008-02-26)

<目的>高齢社会が進む日本と韓国において,近年,欧米化に伴うメタボリックシンドロームの発症率増加が懸念されている。そのため,健康長寿社会の構築を目指した調査が積極的に行われている。両国は同じ海を共有することから日常的に食べる食材も共通することが多いと考えられる。しかし,日本の平均寿命は男女平均82歳であるのに対し,韓国は77歳である。この差異には食べ方や調理法の違いが関連していると考えられる。そこで本研究では,日本と韓国で公表されている最新の国民健康・栄養調査結果をもとに両国の「食」の現状の比較を試みた。 <方法>日本及び韓国で公表されている最新の国民健康・栄養調査の結果(日本2004年,韓国2005年)をもとに,両国の食品群別摂取量および栄養素等摂取量の比較検討を行った。 <結果及び考察>両国の食品群別摂取状態の特長として,日本ではきのこ類,海藻類,乳類,調味料・香辛料類及び嗜好飲料類の摂取量が高く,韓国では種実類,野菜類及び肉類が高いことがわかった。また,日本の調査項目にある補助栄養素・特定保健用食品が韓国では調査対象ではなく,この項目が日本の食生活の中で重要視されていることが示唆された。栄養素等摂取量を比較したところ,韓国ではエネルギー源である炭水化物の摂取量が高く,日本では脂肪摂取量が高いことがわかった。韓国では日本より肥満の出現頻度が高い。この要因として,この炭水化物摂取量の高さが示唆された。ビタミン類では,両国を通じて,VA,VB群およびVC摂取量が高いことが示された。食物繊維では日本は韓国の2倍量近くを摂取しており,一方,ミネラル類では全体的に韓国が高いことが明らかになった。
著者
下村 久美子 金井 千絵 渡邊 博子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 59回大会(2007年)
巻号頁・発行日
pp.33, 2007 (Released:2008-02-26)

目的 古来から染色に用いられている藍は、現代でも工芸品やジーンズの染色に用いられ、染色には欠かせない染料として用いられている。そのほとんどは合成藍であるが、天然藍を用いた付加価値のある製品も市販されている。本研究では天然藍と合成藍の色相の相違を明らかにすることを目的として、天然藍と合成藍を用いて染色を行ない、これらの布の色相と染色堅ろう性を調べた。 方法 藍の染色は、琉球藍、すくも藍、合成藍、市販のインド藍の4種類を使用した。染色に用いた繊維は綿ブロード、麻、絹の3種類である。これらを藍の染色液に30秒浸した後、空気発色3分を1回の染色操作として、1回~15回の重ね染めを行なった。また、これらの染色布について洗濯、耐光、摩擦堅ろう度試験を行なった。 結果 4種類の藍染めを行ない、これらの染色布の反射率曲線からK/S値を求め、さらにL*a*b*値を求めた、その結果、色相は重ね染め回数が多いほど濃色に染色され、色調では濃度差はあるがほぼ同様であった。繊維の種類別では、今回の実験で用いた繊維の中では麻が最も染色斑がなく均一に染色できた。これは色素が付着するための間隙が広いことが影響すると考えられる。4種類共に洗濯堅ろう度の結果は4-5級、摩擦堅ろう度試験の結果は1-3級、耐光堅ろう度試験の結果は3-5級であった。これらのことから天然藍と合成藍の顕著な差は確認出来なかった。しかし、琉球藍と合成藍では添布白布に赤色の色素が付着したことから、赤色色素が染料中に含有されていることが示唆された。また、耐光堅ろう度試験は72時間の照射時間であったが、染色回数が多いと変退色は認められないが、特にインド藍の染色回数1回の絹の場合は、明らかに白黄色に変色することが確認できた。
著者
河東 ちひろ 香西 みどり 畑江 敬子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 59回大会(2007年)
巻号頁・発行日
pp.305, 2007 (Released:2008-02-26)

[目的]炊飯途中の加熱中断や保温キーによる炊飯などにより「めっこ飯」といわれる炊き損じ飯が生じ、再炊飯しても通常の飯にならず食味が低下することが知られている。本研究ではめっこ飯の生成条件を明らかにし、そのメカニズムを解明することを目的とした。[方法]試料米は日本晴とした。90%とうせい米に加水比1.4で加水し、20℃で1h浸漬後、恒温水槽で浸漬処理(1~12h、20~90℃)した浸漬米とこれを炊飯した浸漬炊飯米について水分含量、外観観察(写真)、テクスチャーアナライザーによる米粒表層および全体の物性測定を行った。エタノール・アセトンで調製した脱水粉末試料を用いて糊化度(BAP法)、糊化特性(DSC)、FT-IR,1HNMR測定およびX線回折による結晶構造の比較を行った。浸漬米についてMRIにより吸水状態およびヨウ化カリウム染色後のでんぷんを観察した。浸漬炊飯米を50%エタノールで抽出した飯抽出液の全糖(フェノール硫酸法)、還元糖(ソモギネルソン法)を測定した。[結果]20℃1h浸漬のみの通常の飯に比べて65℃浸漬米は硬くなり、65,75,90℃の粘りは有意に低下し、いわゆるめっこ飯は65℃4hで明瞭にみられた。65、75、90℃で各4h浸漬した米の糊化度は25,83,93%であり、DSC測定では65℃浸漬米にのみ20℃浸漬より数℃高温側に糊化ピークがみられた。DSC,X線回折、NMR,MRI等の観察より、65浸漬米が硬いのは糊化不十分が関与し、65,75,90℃浸漬炊飯米の粘り低下には糊化度以外の原因が示唆された。飯抽出液分析から65℃浸漬処理ではデンプンの低分子化、75,90℃では浸漬液が米粒に吸収され、糖の溶出が起こらないことがそれぞれの浸漬炊飯米の粘り低下の原因と考えられた。
著者
矢島 和美 村田 里美 山岸 弘 杉山 典久 米山 雄二
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 59回大会(2007年)
巻号頁・発行日
pp.124, 2007 (Released:2008-02-26)

【目的】 台所の排水口などに発生するヌメリは手で触りたくない汚れであり、次亜塩素酸ナトリウムを主成分とする塩素系洗浄剤による掃除が一般に行われている。しかし、塩素系洗浄剤は特有の臭気を有するため、短時間で掃除を済ませることが望まれている。そこで、ヌメリを発生する原因菌とヌメリの構成成分を把握し、ヌメリの効率的な洗浄について検討した。 【方法】 一般の5家庭の台所排水口からヌメリを採取し、TSA培地で培養し菌種を同定した。アルギン酸ナトリウム水溶液を塩化カルシウム水溶液に滴下して調整したアルギン酸カルシウムゲルをヌメリモデルとし、次亜塩素酸ナトリウムと添加剤をこのヌメリモデルに作用させたときの分解状態を観察し、目視判定により、洗浄試験を実施した。 【結果】 採取したヌメリの菌種を同定した結果、、Pseudomonas属が最も多く存在していることが分かった。この、Pseudomonas属の菌と食品を接触させたところヌメリを発生したことから、ヌメリの原因菌は、Pseudomonas属であると推定した。また、Pseudomonas属は細胞外多糖としてアルギン酸を産出すると報告されている1)ことから、ナフトレゾルシン呈色試験法によるヌメリ中のアルギン酸の同定を試みた結果、ヌメリにアルギン酸が存在することが確認できた。アルギン酸を成分とするヌメリモデルを用いた洗浄試験の結果、次亜塩素酸ナトリウムにアルカリ金属炭酸塩を添加することにより、アルギン酸の分解を促進することが分かり、実際にヌメリに対する洗浄試験においても素早い洗浄効果が確認できた。 文献1)森川正章,科学と生物,vol.41,No.1,(2003)
著者
本 三保子 内田 菜穂子 渡 佳代子 斉藤 まゆ美 福本 由希
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 59回大会(2007年)
巻号頁・発行日
pp.102, 2007 (Released:2008-02-26)

目的これまでテアフラビンなどの紅茶成分が糖質消化酵素阻害活性を有することは明らかにされているが,紅茶の製造工程における糖質消化酵素阻害作用については十分な検討がなされていない.そこで,各製造工程の茶葉から抽出した紅茶の糖質消化酵素阻害作用を検討した. 方法2006年5月に静岡県島田市で摘採した葉(べにひかり)をオーソドックス製法で製造した紅茶を用いた.各工程で試料を採取し,萎凋葉,揉捻葉,発酵(1,2,3時間)葉とした.試料は粉砕後,熱水で1時間浸出・ろ過したもの(1g/100mL)を用いた.In vitroにおける糖質消化酵素阻害活性はα-アミラーゼ阻害活性はヒト唾液希釈液を用いて,デンプン残量を測定した.また,α-グルコシターゼ阻害活性はラット小腸アセトン粉末(Sigma社製)から調製した酵素液を用いて,酵素反応により生成したグルコース量を測定した.総ポリフェノールの定量は(+)カテキンをスタンダードとして酒石酸鉄比色法により行った. 結果および考察α-アミラーゼ阻害活性は製造工程が進むに従って強くなり,発酵3時間葉が最も高値を示した.マルターゼおよびスクラーゼ阻害活性は生葉,萎凋葉で高値を示したが,その後工程が進むに従って低下した.ポリフェノール含量は生葉,萎凋葉で高値となり,その後工程が進むに従って減少した.以上の結果から,調製した紅茶は製造工程が進むに従ってα-アミラーゼ阻害活性は上昇し,α-グルコシターゼ阻害活性は低下することが示され,各糖質消化酵素に対する阻害活性成分は異なることが示唆された.また,α-グルコシターゼ阻害活性を示す成分はカテキン類である可能性が示唆された.
著者
田辺 真弓
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 59回大会(2007年)
巻号頁・発行日
pp.261, 2007 (Released:2008-02-26)

目的毛皮は西洋諸国や中国等において社会的地位の高さと富を象徴するものとして珍重されてきた.日本においても渤海国との交易でもたらされた黒貂の毛皮が古代の一時期珍重されたが,その後は近世まで鹿や熊の毛皮が行縢や猟師の衣料等の特殊な用途に限って用いられていたに過ぎない.しかし,開国によって日本人の衣生活には大きな変化が見られるようになり,毛皮が一般の人々の日常の衣服に取り入れられたことが注目される.当時の人々は毛皮をどのような意識を持って用いたのかを考察する.方法明治・大正時代の新聞・雑誌の記事や挿絵,文学作品,絵画等に表されている毛皮の利用について資料を収集し,検討する.結果近世まで毛皮や皮革は不浄のものとして認識され,衣服としての用途は限られていた.しかし,明治元年には皇居御門内で皮製諸物を用いることが許され,人々の皮革や毛皮に対する感覚も変化していった.明治5,6年には,断髪に関連してシャッポが大流行し,その高級品としてラッコ製の帽子が流行した.さらに明治6年には狐や兎などの毛皮の付いた襟巻が流行している.その後,明治末から大正にはトンビ,インバネスなどの襟に獺,栗鼠,鼬,貂などの毛皮を防寒用に付けることが盛んになった.毛皮が珍重されたため,明治15年頃には北海道のラッコは絶滅に瀕した.また明治29年には日本近海に多く棲息していたラッコやオットセイを密猟する外国船が横行しているとの記事もある.当時の日本人が外国人の毛皮に対する関心の高さを知り,その美しさと価値の高さ,優れた防寒性を理解したことが,それまでなじみの薄かった毛皮を衣生活に取り入れることにつながったのだと思われる.
著者
市 育代 小城 勝相
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 59回大会(2007年)
巻号頁・発行日
pp.236, 2007 (Released:2008-02-26)

<目的> 動脈硬化発症には血管内皮細胞や平滑筋細胞における細胞死とアポトーシスのバランスの破綻が関与している。セラミドは細胞膜を構成するスフィンゴ脂質で、強いアポトーシス作用がある。最近、動脈硬化病変に多い凝集したLDLは通常のLDLに比べてセラミド含量が高いことが報告されている。従って、動脈硬化発症にセラミドのアポトーシス作用が関与している可能性がある。そこで今回、ヒトの血漿セラミドと動脈硬化危険因子との関係について検討を行った。また以前、LDLのラジカル反応によって生じるapoBの酸化物(B-ox)がヒトの血漿中に存在し、それらが動脈硬化指標と相関関係にあることを報告していることから、B-oxとの関係についても検討した。 <方法> 対象者は健康診断の受診者100名である。セラミドは脂質抽出後、LC-MS/MSにて測定した。血漿中のB-oxはWestern blotにて測定した。 <結果> 血漿セラミドは血清脂質や収縮期血圧と正の相関がみられた。またLDLが170 mg/dl以上の高LDL血症者は、健常者やLDLが140-169 mg/dlの中度のLDL血症者に比べて血漿セラミドが著しく高かった。従って、より高いレベルのLDLと血漿セラミド増加は関係があることが示唆された。また、セラミドはB-oxとも正の相関がみられた。以上より、血漿セラミドはLDLだけでなく、その酸化物とも関係があることが示唆された。本研究は(奈良女大)宮下矢誉衣、中原佳代子、日高篤子、沓掛佐保子、井上佳奈、(九大医)三輪宜一、(埼玉社会保険病院)丸山太郎、(国際医療福祉大学熱海病院)都島基夫、(国立循環器病センター)斯波真理子との共同研究である。
著者
小出 あつみ 山内 知子 横濱 道成 大羽 和子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 59回大会(2007年)
巻号頁・発行日
pp.67, 2007 (Released:2008-02-26)

【目的】走鳥類のエミュー卵(E)は、(株)東京農大バイオインダストリーの企画により、どら焼きの皮に使用されているが、食材としての利用はまだ少ない。本研究ではEの起泡性と熱凝固性を中心に調理特性を明らかにし、スポンジケーキへの応用を試みた。【方法】色差は色差計で測定した。卵白と全卵を10分間電動ハンドミキサーで撹拌する間の泡の比重と離水量を経時的に測定した。卵黄と卵白の熱凝固性を55℃~100℃間の5℃間隔でクリープメーターを用いて測定した。鶏卵(K)とE(卵黄/卵白:K割合)でスポンジケーキを調製(卵液150g・砂糖90g・薄力粉90g,焼成温度E:180℃,K:170℃)し,物性の測定と官能検査を行った。【結果】Eの全卵重量はKの9.8倍、濃厚卵白:5.4倍、水溶性卵白:4.7倍、卵黄:18.7倍であった。卵白/卵黄はE卵:1/2.1、K卵:1/0.5と,卵黄割合はEでKの4.2倍であった。卵白及び全卵の泡の比重から,卵白はEで、全卵はKで泡立ちがよかった。泡の安定性はKよりEで高かった。卵黄と卵白の色差L*、a*、b*値はEでKより有意(*p<0.05)に低かった。熱凝固した卵黄と卵白の固さは、KよりEで有意(*p<0.05)に低く、ガム性ではE で有意(*p<0.05)に低く、卵白の凝集性では両者に差はなかったが、卵黄の低温加熱でEの凝集性はKより有意(*p<0.01)に低く、高温加熱でKより有意(*p<0.05)に高かった。Eで調製したスポンジケーキの固さは有意(*p<0.01)にKより高かった。官能検査の味・香り・色・総合ではKで調製したものより有意(*p<0.01)に好まれなかった。
著者
安田 みどり 松田 智佳
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 59回大会(2007年)
巻号頁・発行日
pp.107, 2007 (Released:2008-02-26)

目的 緑茶に含まれるカテキンは強い抗酸化活性を示し、様々な疾病の予防などに効果があることで知られている。しかしながら、茶の飲用は食事や薬からの鉄などの吸収を妨げるといわれている。これは、カテキンと金属イオンとが錯体を形成するためであると考えられている。本研究では、電気化学的手法を用いて、カテキンと金属イオンとの反応のメカニズムを解明することを目的とした。 方法 サイクリックボルタンメトリー(CV)および電気化学検出器(ECD、750mV)を装備したHPLCを用いて、カテキンの酸化電位および酸化ピーク面積値に与える金属イオン(Fe2+、Fe3+、Cu2+)の影響を調べた。カテキンは、緑茶に含まれる主要なもの((-)-エピカテキン(EC)、(-)-エピガロカテキン(EGC)、(-)-エピカテキンガレート(ECG)、(-)-エピガロカテキンガレート(EGCG))を使用した。 結果 CVの結果から、金属イオンは、カテキンの酸化電位に影響を与えることが明らかになった。特に、pH7以上において、EGCGの酸化ピークはFe2+やCu2+の添加によってほとんど消滅した。また、HPLCの結果、ECは金属イオンの影響をほとんど受けなかったが、他のカテキン、特にEGCGは金属イオンの添加により著しい濃度の減少が認められた。これは、pH7以上で起こりやすく、金属イオンの濃度に依存することがわかった。以上のことにより、EC以外のカテキンは、酸化活性部位において金属イオンと錯体を形成するか、もしくは金属イオンによりカテキンが酸化分解されることが示唆された。
著者
手塚 悦子 西村 修 小林 啓子 大森 正司
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 59回大会(2007年)
巻号頁・発行日
pp.297, 2007 (Released:2008-02-26)

【目的】東南アジアでは、バナナの葉は食品の包装や保存等へ用いられ、生活の場面で有効に用いられている。ここでは、大量に廃棄されているバナナの葉をバイオマスの一環として捉え、その有効利用や食品の保存という観点からバナナの葉に含まれている抗菌性物質に着目し、その分離、同定と有効性を明らかとしたので報告する。 【方法】(1)試料は、フィリピン産の乾燥バナナの葉(Musa acuminata)3kgを用いて粉砕後、沸騰水中で抽出、ろ過したものを試料液として以下の実験に供した。(2)バナナの葉の香気成分(SPME法)、有機酸およびアミノ酸(HPLC法)、抗酸化性(DPPHラジカル補足活性)を測定した。(3)抗菌性試験では、試料液をヘキサンで脱脂後、酢酸エチル分画し、ペーパーディスク法により、Escherichia coli K12 Staphylococcus aureusNBRC 14462による抗菌活性を検討した。(4)(3)で得られた酢酸エチル分画液を用い、TLC、シリカゲルカラムクロマトグラフィ、による分離を検討し、GCMS、HPLC、NMRにより同定と確認を試みた。 【結果】(1)バナナの葉の香気成分は、6-Methyl–5-Hepten-2-one等が多く、有機酸は、シュウ酸、リンゴ酸等が見出された。(2)バナナの葉抽出液のpHを異にして抗菌活性を検討したところ、抗菌性物質は、柳田らの報告しているように酸性で酢酸エチルに転溶することを確認した。(3)GCMS、HPLC、NMRにより酸性物質の同定を試みたところ、ケイヒ酸と安息香酸であることを確認した。(4)15種の菌株について抗菌性を測定したところ、グラム陽性菌株に対して、より大きい抗菌性を示していることがわかった。
著者
諸岡 信久
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 59回大会(2007年)
巻号頁・発行日
pp.209, 2007 (Released:2008-02-26)

目的:空中菌が原因となる感染症としては結核,レジオネラ症,インフルエンザ,アスペルギルス症や真菌によるアレルギー症がよく知られている.1類感染症で致死率の高い重症急性呼吸器症候群(SARSコロナウイルス)は室内空気が感染経路となっている.この研究は室内空中菌の挙動を明らかにするために,人の活動及び空調や換気などの影響を検討した.方法:室内空中浮遊菌は多孔板で単層式の衝突型空中浮遊菌測定器(MBS-1000,ミドリ安全),空中浮遊粉塵は0.3μm~5μmを6段階で測定できるレーザー光線による粉塵計(HHPC-6,リオン)を用いて測定した.微生物の採取にはソイビン・カゼインダイジェスト寒天培地(日水製薬)を用いた.培養と生菌数測定方法は25℃に調整したインキュベーターで培養して,2日目と5日目の生菌数を細菌と糸状菌に大別して計数して,室内空気1 m^3あたりのコロニー数(cfu/m^3)として示した.住空間は図書館3階のゼミ室で,週に3回程度使用されている容積108.7m^3,床面積(6,185mm×5,920mm),高さ2,970mmを用いた.結果:図書館3階のベランダの外気では糸状菌910(cfu/m^3),細菌50(cfu/m^3).室内に5名が椅子に座った静止状態では糸状菌280,細菌1,680.全員5分間歩行状態では各々130,6,250.続いて,静止して空調を運転した状態では150,4,070.さらに,窓と廊下の入り口を開けて換気した状態では390,320であった.また,歩行後1時間間隔で空中浮遊菌を測定したところ,糸状菌数は大きな変化を示さなかったが,浮遊細菌数は歩行活動で急増したが時間の経過とともに減衰して,3時間後には静止状態に戻った.
著者
川口 治子 溝崎 久美子 山口 直彦
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 59回大会(2007年)
巻号頁・発行日
pp.114, 2007 (Released:2008-02-26)

〔目的〕いわし,あじなど赤身魚は高度不飽和脂肪酸であるEPA,DHAなどを含み大変酸化を受け易いと思われる。また,その干物は乾燥工程あるいは流通過程などでは急速な酸化の進行が危惧される。そこで私達は市販干物(あじ,いわし及びししゃも)の酸化度を実態調査すると共に,酸化度が著しく高かったいわしについて試作試験を行ったので報告する。 〔方法〕1,干物は,それぞれ5点,豊橋及び岡崎市内で購入した。2,いわし(鮮魚)は岡崎市中央市場で購入した。3,いわし干物の試作は鮮魚をカテキン,トコフェロール及び味噌などの溶液に一定期間浸漬した後,乾燥した。4,酸化度は酢酸-イソオクタン法で過酸化物質(POV)を測定した。 〔結果〕1,市販干物のPOVをみると,あじでは,天日干しと表示してある1点のみ99と高い値を示したが,他4点の平均値は11.5±6.6であった。次いでいわしは5点共にPOVは50以上と高く,その平均値は111.9±58.7を示した。さらにししゃも5点の平均値は18.4±5.3であった。これらの結果からいわし干物の酸化度が著しく高いことを知った。いわしの干物の試作試験の結果,2,カテキン製剤(茶葉抽出物10%含有)0(対照区),0.1及び0.5%溶液にいわしを浸漬後,乾燥した干物を5℃,5日間保存し,そのPOVで比較すると,対照区:118,0.1%区:119及び0.5%区:69であった。3,トコフェロ-ル製剤(トコフェロール8.5%含有)についても同様に試験し,5日目のPOVで比較した結果,対照区:160,0.1%区:157及び0.5%:100であった。4,豆味噌の効力を測定した結果,7日目のPOVは対照区:217,1%区:76.6,3%区:79.0及び6%区85.6であった。5,さらに,カテキン及びトコフェロール製剤と豆味噌との併用試験などを行っている。
著者
松本 美鈴
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 59回大会(2007年)
巻号頁・発行日
pp.226, 2007 (Released:2008-02-26)

目的 近世中期以降には,砂糖生産の増加,関東しょうゆの普及,酒粕からの粕酢の製造など,調味料文化が発達した.このような調味料の普及が,和菓子,にぎりずしを初めとする日本料理の発展に寄与した.本研究では,調味料の普及が煮物料理に与えた影響を明らかにするために,江戸時代の料理書にみる煮物料理の調理方法を調査し,煮物料理に用いられる調味料の変化を捉えることを目的とした.方法 調査資料としては,『翻刻江戸時代料理本集成』(臨川書店)に所収の江戸初期から末期までの料理書36種を用いた.料理書から煮物料理の調理方法に関する記載を抽出し,使用されている調味料を整理した.今回の調査では,「煮物とは、食材の煮熟と調味を目的として,煮汁の多少に関わらず,調味料を加えた煮汁のなかで食材を焦がさないように加熱することで調理が完結する料理である.」と定義した.結果 『料理物語』(1643)では,味噌,たれ味噌,たまり,酢,煎り酒,だしなどが煮物の調味料として記載されていた.『料理網目調味抄』(1730)では,たれ味噌,たまり,煎り酒の記載はみられず,しょうゆと酒を組み合わせた調味が多くみられた.砂糖使用の初見は,『合類日用料理抄』(1689)の「煮大豆の方」においてであった.その後,『和漢精進料理抄』(1697)のような精進料理,普茶料理,卓袱料理の料理書を中心として砂糖の記載がみられた.一方,みりん酒使用の初見は,『萬寶料理秘密箱』(1800)の「赤貝和煮」においてであった.江戸後期に刊行された『料理早指南』,『素人庖丁』,『料理通』などを初めとする料理書には,煮物の調味料としてみりんや砂糖のような甘味料の記載が多く見られるようになった.