著者
岩元 辰篤 白井 達 森本 昌宏 岩崎 昌平 南 奈穂子 中尾 慎一
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.559-562, 2016 (Released:2016-11-04)
参考文献数
10

プレガバリン(PGB)を長期間継続投与中で,治療効果が不明瞭な症例において,投与中止が可能であるかにつき調査した.PGBを6カ月以上投与している11症例を対象とし,続行によってもさらなる改善がないと判断した場合,受診ごとに投与量を半減し,痛みが増強した場合には元の投与量に戻すこととして,25 mg/日まで減量が可能となった時点で中止とした.この結果,7例では減量後も痛みの程度に変化はなく中止が可能であったが,4例では減量あるいは中止により痛みが増強したために投与を継続した.以上,治療効果判定が不十分なままPGBを漫然と投与している症例があることが判明した.今後は,長期間投与を行っている症例では,漸減・中止を考慮すべきと考えられた.
著者
浜野 宣行 高橋 幸利 岡本 明久 三木 博和 阪本 幸世 西 憲一郎 中尾 慎一 新宮 興
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.233-237, 2011-04-01 (Released:2011-10-05)
参考文献数
14

精神症状や痙攣発作などの辺縁系障害を認める辺縁系脳炎の中でも抗N-methyl-D-aspartate(NMDA)受容体脳炎が近年話題となっており,若年女性の卵巣奇形腫に合併する頻度が高いことが報告されている。我々は,若年女性の腫瘍合併を伴わない抗NMDA受容体脳炎の1症例を経験した。抗痙攣薬や鎮静薬投与下でも痙攣抑制が困難な状況が継続したが,ステロイドパルス療法による一時的な症状の改善は認められた。血液検査,脳波検査,画像検査などでは特に有意な所見は得られず,また腫瘍の検出にも至らなかった。しかし,髄液中のグルタミン酸受容体抗体が検出され,本症例の辺縁系脳炎における自己抗体の介在が示唆された。重度の辺縁系障害のために長期の人工呼吸管理を余儀なくされたが,緩徐な症状軽快を認め,ICUを退室した。辺縁系脳炎は稀な疾患であるが,比較的治療反応性であるため,本疾患を疑った場合には早期に抗体検査や腫瘍検索を行うべきである。
著者
中尾 慎一 冬田 昌樹 塩川 泰啓
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.001-010, 2014 (Released:2014-02-26)
参考文献数
14

全身麻酔中には,循環変動や電解質異常など明らかな原因がない場合でも,予期せぬ致死的不整脈に遭遇することがある.心室細動や高度の房室ブロック等に対する対処は同じであるが,致死的不整脈発現の予防や再度致死的不整脈を起こさないための管理は個々の疾患によって異なる場合がある.ここでは,われわれが経験したブルガダ症候群,二次性QT延長症候群と冠動脈攣縮による致死的不整脈を中心に,それらの疾患の特徴および致死的不整脈の予防と対処について概説したい.
著者
廣瀬 卓治 中尾 慎一
出版者
関西医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

ケタミンなどの非競合性NMDA受容体拮抗薬は、神経細胞保護作用がある一方で、精神異常誘発作用を有し、脳後帯状・後板状皮質:PC/RS)の神経細胞傷害を引き起こす。一方、バルビツレートにも精神作用があるが、ケタミンの精神作用を抑制し、NMDA受容体拮抗薬によるPC/RSの神経細胞傷害を抑制する。精神異常作用や分裂病の病因としては、ドパミン系の機能亢進がその本体と考えられていている。本研究の目的は、多くの薬物の精神作用や分裂病の責任部位と考えられている脳側坐核ドパミン放出に対するケタミンの作用と、これに対するペントバルビタ-ルの効果を調べること、さらに、ケタミンによるPC/RS(もう一つの薬物の精神作用や分裂病の責任部位と考えられている。)への作用にドパミン系が関与しているかどうか、を調べることである。ケタミンは、濃度依存性に側坐核ドパミン放出を増加させた。最大増加はケタミン投与20-60分後であり、ラットの行動変化と一致していた。ペントバルビタールは側坐核ドパミン放出を抑制し、さらにケタミンによるドパミン放出の増加を抑制した。以上の結果より、ケタミンによる幻覚や妄想などの精神異常誘発作用や神経細胞傷害作用の一因として、中脳辺縁系ドパミン系の活性化が考えられた。一方、ケタミンの精神異常誘発作用や神経細胞傷害作用を反映するPC/RSでのc-Fos発現は、NMDA受容体ノックアウトマウスでは有意に低下すること、ドパミン受容体やシグマ受容体に働く抗精神病薬ハロペリドールでは抑制されないが、他の抗精神病薬リムカゾールでは抑制されることを証明した。この結果は、ケタミンの上記作用には、実際にNMDA受容体の関与があること、ドパミン系やシグマ受容体の関与も有ることを示唆している。