著者
三上 舞 杉山 京 中尾 竜二 竹本 与志人
出版者
岡山県立大学保健福祉学部
雑誌
岡山県立大学保健福祉学部紀要 (ISSN:13412531)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.115-122, 2015

本研究の目的は、認知症予防講座の参加者を対象に認知症の人との接触経験の状況と認知症の人に対する態度の関係について明らかにすることである。A 市およびB 市の地域住民112 名を対象に、無記名自記式で回答を求め、統計解析には欠損値のない92 名のデータを用いた。接触経験を独立変数、認知症の人に対する肯定的態度および否定的態度を従属変数とした因果関係モデルを構築し、パス解析を用いて検証を行った。その結果、接触経験は否定的態度と関連が確認されなかったが、認知症の人に対する肯定的態度との間には「現在、介護をしている」ことが有意に関連していた。今後は対象者を拡大し、再検証していくことが課題である。The present study aims to understand the relationship between experience of contact with persons suffering from dementia and attitudes toward people with dementia. A Self-administered questionnaire was distributed among 112 participants in dementia prevention classes in "A" and "B" cities. The data obtained from 92 respondents were analyzed. The relationship between positive and negative attitudes toward dementia and the experience of contact with persons suffering from dementia were estimated. Subsequently, the causal sequence was modeled and analyzed using path analysis. Results did not indicate that negative attitudes significantly influenced the experience of contact with persons suffering from dementia. However, positive attitudes significantly influenced experience of contact with persons suffering from dementia, as these individuals had cared for a person suffering from this disorder. The present study indicated that participants who have cared for a person with dementia demonstrate positive attitudes toward people suffering from this disorder. Further research is necessary with a larger sample size and should be comprehensively reviewed.
著者
中尾 竜二
出版者
川崎医療福祉学会
雑誌
川崎医療福祉学会誌 = Kawasaki medical welfare journal (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.359-368, 2019

本研究は,役割を付与された地域住民ならびに民生委員を対象に認知症の疑われる高齢者を発見した場合の相談先の意向を明らかにすることを目的とした.調査対象者は A 市,B 市,C町,D市の人口・高齢化率の異なる4市町村の地区社会福祉協議会(支部社会福祉協議会),認知症キャラバンメイト,小地域ケア会議に所属する地域住民2,503名とした.調査内容は,回答者の属性,認知症の疑われる高齢者を発見した場合の相談先の意向などで構成した.相談先の意向の遠近構造は,クラスター分析を用いて類型化し,コンボイモデルを用いて模式化した.その結果,役割を付与された地域住民ならびに民生委員ともに3つのクラスターが抽出された.役割を付与された地域住民は,「民生委員」を相談先とする意向が高かった.また,民生委員は「地域包括支援センター」,「認知症が疑われる高齢者の同居家族」,「認知症が疑われる高齢者の別居家族」へ相談する比率が有意に高かった.本研究結果より,地域において潜在する認知症が疑われる高齢者を早期に発見するため,援助要請する重要な存在としての地域コミュニティ(地域で一定の役割を付与されている住民と民生委員)による認知症の早期発見・早期受診を可能とする受診・受療連携システムの構築のためには,それぞれの役割を明確にし分担していくことも重要であると考えられた.今後は地域包括ケアシステムをふまえた受診・受療における両者の相談先の順序性を明らかにすることが課題である.
著者
中尾 竜二 杉山 京 竹本 与志人
出版者
一般社団法人 日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.99-111, 2017

<p>民生委員における認知症が疑われる高齢者を発見した場合の地域包括支援センターへの援助要請意向とその関連要因を明らかにすることとした.</p><p>A県民生委員児童委員協議会に属する民生委員2,751名を対象に,属性,認知症進行遅延薬に関する知識,認知症の人に対する肯定的態度,地域包括支援センターへの援助要請意向について回答を求めた.統計解析として,まず地域包括支援センターへの援助要請意向について潜在クラス分析を用いて類型化を行った.次いで,各潜在クラスと属性等との関連性について,多項ロジットモデルを用いて検討した.</p><p>潜在クラス分析の結果,四つのクラスが抽出された.また多項ロジットモデルの結果,すべての潜在クラスに「認知症の人に対する肯定的態度」が有意な関連を示していた.</p><p>民生委員における地域包括支援センターへの援助要請意向の特徴は四つに類型化されることが明らかになった.また,地域包括支援センターへの援助要請意向を高めるためには,認知症の人に対する肯定的態度を高めることが重要である可能性が示唆された.</p>