著者
御子柴 卓弥 新田 清一 中山 梨絵 鈴木 大介 坂本 耕二 島貫 茉莉江 岡田 峻史 藤田 航 鈴木 法臣 大石 直樹 小川 郁
出版者
一般社団法人 日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.315-325, 2019-08-30 (Released:2019-09-12)
参考文献数
18

要旨: 音楽幻聴は, 外部からの音刺激がないのに歌や旋律が自然に聞こえる現象であり, 耳鳴患者の中にも稀に存在する。2011年1月から2018年10月までに当科を受診した耳鳴患者のうち, 音楽幻聴を訴えた23例の臨床像を検討した。このうち11例に対し耳鳴について詳細に説明した上で補聴器による音響療法を行い, 治療効果を検討した。音楽幻聴症例は, 高齢者・女性に多く1例を除く全例で感音難聴を認めた。全例で病識が保たれており, 精神神経科疾患の合併を認めなかった。治療後に Tinnitus Handicap Inventory の合計値, 耳鳴の自覚的大きさ・苦痛の Visual Analogue Scale は有意に改善した。本検討から, 精神神経科疾患の合併がなく難聴が主病因の音楽幻聴に対し耳鳴の説明と補聴器による音響療法が有効な治療である可能性が示唆され, 耳鼻咽喉科医が中心となり診療に携わることが望ましいと考えられた。
著者
太田 久裕 山田 浩之 新田 清一 鈴木 大介 本間 大和 和泉 光倫 今村 香菜子 南 隆二 中山 梨絵 上野 真史 若林 毅 島貫 茉莉江 大石 直樹 小澤 宏之
出版者
一般社団法人 日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.65, no.6, pp.556-564, 2022-12-28 (Released:2023-01-18)
参考文献数
14

要旨: 近年, 国民の難聴対策の必要性の増加に伴い, 政府や関連学会より言語聴覚士の活用や雇用の促進が訴えられている。今後は言語聴覚士 (以下 ST) の聴覚医療における貢献や活躍が期待されている。今回, 補聴器外来を医師1名から医師と ST の協力体制に移行する前後を比較し, 患者, 医師, 医療機関にどのような影響を与えたかについて検討した。補聴器購入後の補聴器全体の満足度は医師 1 名体制で平均82点, 医師と ST の協力体制で平均80点と同等の結果で, 高い患者満足度を維持することができた。1週間の最大患者枠数は14人から54人に増えた。1年間の補聴器適合検査数は1回目が2.2倍, 2回目以降が3.2倍に増加した。医師と ST の協力体制に移行しても満足度が維持できたことから, ST の積極的な参加は, 補聴器医療の需要に対応していく上で有効な選択肢で, 今後, より一層の ST の補聴器医療への関与が期待される。
著者
山田 浩之 新田 清一 太田 久裕 鈴木 大介 南 隆二 松居 祐樹 中山 梨絵 上野 真史 菅野 雄紀 此枝 生恵 大石 直樹 小川 郁
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.123, no.12, pp.1380-1387, 2020-12-20 (Released:2021-01-01)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

宇都宮方式聴覚リハビリテーション (以下聴覚リハ) とは, 済生会宇都宮病院聴覚センターで新田らが行っている補聴器診療法で, 主な特徴に「初日から常用を促し, 診察と調整を装用開始から3カ月間頻回に行うこと」「聴覚専門の言語聴覚士が補聴器外来を担当していること」がある. 本法を取り入れた補聴器外来を開設し, 3年間が経過したためその成績について検討した. 対象は2016年4月~2019年3月までに補聴器外来で聴覚リハを行った174例 (男86例女88例, 平均年齢75歳) で, 検討項目は聴覚リハ脱落率, 購入率, 音場検査と語音明瞭度検査による適合率 (補聴器適合検査の指針2010に準ず), 補聴器の型式, 平均価格, 補聴器購入における助成の有無とした. 聴覚リハ脱落率は3%, 購入率は95%, 音場検査による適合率は98%, 語音明瞭度検査による適合率は95%であった. 補聴器の型式は耳掛け型が91%, 耳あな型が8%. 購入された補聴器の平均価格は11.6万円で, 補装具費支給制度を利用して購入した割合は7%であった. 結果は良好で本法の適応 (難聴による生活の不自由があり, 聴力改善の意志がある) となる難聴者にとっては優れた補聴器診療法であることを改めて示すことができた. 一方でわが国の補聴器購入に対する助成と補聴器診療制度に関しては諸外国と比較すると十分とは言えず, 今後は補聴器の調整を扱う国家資格として言語聴覚士の活躍が期待される.