著者
河本 昇 石川 健三 中山 隆一
出版者
北海道大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2001

1.グループ代表者の河本は、ツイストされた超対称理論とトポロジカルな理論の量子化の関係を明らかにした。このツイストの操作をディラック・ケーラーツイストと命名し2次元ではN=2, 4次元ではN=4の拡張された超対称性を持つ超対称ヤング・ミルズ理論に導かれることを示した。この定式化を格子上に拡張し、格子上で厳密に超対称性を保つ定式化を提唱した。特に格子上で差分演算子がライプニッツ則を満たすように新たな非可換性を導入した。また拡張された交換関係を持つ定式化がこの定式化と同等であることも明らかにした。具体的には2次元N=2のBF理論、ベス・ズミノ理論、超対称ヤング・ミルズ理論、更に3次元N=4の超対称ヤング・ミルズ理論に適用した。超対称性が格子上で厳密に成立していないと言う批判に対し、この批判が当たらないことを現在示そうとしている。2.研究班メンバーの石川は高移動度の高いランダウ準位で発現している非等方的量子ホールガス状態を、同氏らが開発したフォンノイマン格子表現での平均場理論に基づいて解析し、特異な中性零エネルギー状態の性質解明や、周期的な外場中での安定な相状態の探索、量子ホールガス状態による新たな量子ホール領域の解明等に成功した。また、波束粒子の散乱による、運動量と位置との両変数を近似的に観測する振幅を定式化した。3.研究班メンバーの中山は超弦理論に現れる非可換空間に関する研究を行った。2次元非可換球面上の非可換積の新しい表現を見つけ、4次元非可換球面上の場の理論の構成を行った。また、非可換トーラスの解析を行った。当研究班では、通常の研究推進に加え、海外との共同研究及び、冬の学校として組織する研究会の運営の為の資金としてこの特定研究補助金が役立った。特に1.の研究においては、イタリア、トリノのD'Adda氏と超対称理論の格子上での定式化に関する共同研究が行なわれ、研究交流資金として重要な役割を果たし、大いに成果が上がった。
著者
石川 健三 鈴木 久男 中山 隆一 河本 昇 末廣 一彦 JACKIW Roman WIEGMANN Pau 細谷 裕
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

低次元場の理論の研究とその応用をテーマとする本研究では、量子ホール効果の場の理論、重力の量子論並びに弦の量子論が中心的課題として取り上げられた。これら物理学の基本的諸問題に関する多方面にわたる研究が展開され、以下の成果があげられた(1)極めて特異な量子的な物理現象である量子ホール効果の厳密性に関して、ホール系のガス状態が負の圧縮率を持つことが示され、さらにこのことより縦抵抗が有限な値をとる現実の実験状況下でもホール抵抗の値が厳密に量子化されることがしめされた。また、量子的な多体効果が重要な働きをしている分数量子ホール諸問題について、空間の対称性を最大限に保つvon Neumann格子表現を使い、相互作用によりfluxが凝縮し、Hofstadterのbutterflyスペクトルと同様なものになる一粒子状態を持つflux相に基ずく新しい平均場理論が提案された。この意味で、Hofstadterのbutterflyスペクトルと分数量子ホール効果の関連が初めて明らかにされた。(2)時間や空間の反転に関する不変性を破る超伝導では量子ホール系と同様に電磁場に対するChern-Simons項が導かれる。磁場の役割をp波のCooper対凝縮がし、u(1)対称性が破れているときのChern-Simons項の係数には補正があること等について解明された。(3)任意次元に一般化された偶数次元のChern-Simons作用が無限階質量殻上既約という極めて特殊なゲージ対称性の構造を持つ理論であることが示されまたこの理論の量子化に成功した。(4)3次元Chern-Simons重力と4次元BF理論を格子上にのせる試みに成功した。(5)ストリング理論におけるD-Particleの有効理論のコンフォーマル対称性が示され、またハミルトンーヤコービ方程式を用いたストリングの新しい定式化にせいこうした。(5)超弦理論について、その相転移がヒッグス場による対称性の破れと解釈できる相転移点まわりでの物理量の計算について、定量的に解析する技術の開発に成功した。(6)量子情報理論における量子的絡み合い状態についてのエントロピーの持つ関係式の導出に成功した。