- 著者
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中島 大賢
- 出版者
- 九州大学
- 雑誌
- 特別研究員奨励費
- 巻号頁・発行日
- 2010
過去2年間の研究で,葉内ベタシアニンは青緑色光を吸収することで葉緑体による余剰な光吸収を緩和する「遮光作用」があることを明らかにした.また,ベタシアニン蓄積の影響は葉の背軸側でより顕著であり,維管束鞘細胞および海綿状葉肉細胞でベタシアニンの光防御効果が特に高いことを見出した.一方,ベタシアニンには活性酸素種を消去する抗酸化能があることが報告されており,「抗酸化作用」により光阻害を緩和する可能性が示唆されている.そこで本年度の実験では,抗酸化作用による光防御効果の有無を確認するため,ベタシアニンによる吸収がほとんどない赤色LEDを光源とする強光を低二酸化炭素条件下で青葉および赤葉系統の葉に照射し,ベタシアニンの遮光作用を排除した際の光阻害程度を検討した.その結果,青葉・赤葉系統間には葉の向軸側および背軸側いずれにおいても光阻害程度に有意差は認められなかったことから,葉内ベタシアニンには抗酸化作用による光防御機能はなく,遮光作用によってのみ光阻害を軽減するものと結論付けられた.さらに,アマランサスの青葉系統と他の植物種の光阻害特性を比較したところ,青葉系統の葉は他の植物種に比べ光防御能力が低く,特に維管束鞘細胞および海綿状葉肉細胞における光阻害感受性が高いことが示唆された.ベタシアニンの遮光作用が維管束鞘細胞および海綿状葉肉に対して特に効果的であることを考慮すると,本色素の蓄積は光阻害を受け易いアマランサス葉内部を保護するうえで重要であると考えられた.このようなベタシアニンの光防御機能は赤葉系統の葉の老化を遅延し,個葉光合成能力の維持に寄与するものと考えられた.