著者
中島 徹夫
出版者
独立行政法人放射線医学総合研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

放射線の血管系影響としてアテローム性動脈硬化症との関連が指摘されている。アテローム性動脈硬化症の修飾因子としては酸化ストレスなどアポトーシス(細胞死)誘導能を持つものが多いため、動脈硬化症の発症と進展における血管平滑筋細胞のアポトーシスの関与について放射線影響との関わりについて解析を行い酸化型LDL(低密度リポタンパク質)前処理で放射線誘導性アポトーシスが増強され、そこにプロテインキナーゼC(リン酸化酵素の1種)、酸化脂質が介在することを明らかにした。
著者
今岡 達彦 勝部 孝則 川口 勇生 臺野 和広 土居 主尚 中島 徹夫 森岡 孝満 山田 裕 王 冰 神田 玲子 西村 まゆみ 二宮 康晴 村上 正弘 吉永 信治 柿沼 志津子
出版者
日本保健物理学会
雑誌
保健物理 (ISSN:03676110)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.68-76, 2017 (Released:2017-07-29)
参考文献数
3
被引用文献数
4

Strategic research will be needed to unveil the uncertainty regarding the health effect of radiation at low dose and low dose rate. Recently, the National Council on Radiation Protection and Measurements (NCRP) published Commentary No. 24 dealing with the perspective of integrating radiation biology and epidemiology to address this issue. Results of radiation biology have not been effectively used for radiation risk assessment because 1) available epidemiological studies based on direct observation of human population have been considered to be the most relevant despite their uncertainties and 2) biological studies have not been conducted with their use in risk assessment in mind. The present paper summarizes the Commentary to present perspectives on integrating biology and epidemiology for radiation risk assessment.
著者
柿本 彩七 瀧 景子 中島 徹夫 王 冰 田中 薫 VARES Guillaume 呉 健羽 酒井 一夫 齋藤 俊行 小島 周二 月本 光俊 根井 充
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.99-110, 2008 (Released:2008-03-06)
参考文献数
23
被引用文献数
1 1

放射線適応応答は,予め低線量放射線(priming dose)を照射しておくことで,その後の中・高線量放射線に対する抵抗性を獲得する生体の防御的反応である。放射線適応応答は,低線量放射線が中高線量放射線とは質的に異なる影響を生体に及ぼすことを意味しており,低線量放射線のリスクを評価する上で重要な生命現象である。本研究では,ヒトリンパ芽球由来細胞AHH-1におけるHPRT遺伝子座突然変異を指標とした放射線適応応答の分子機構を解析した。まず,3GyのX線照射後のHPRT遺伝子座における突然変異頻度が0.02Gyから0.2Gyのpriming dose照射によって有意に低下することを観察した。一方,0.005Gyの事前照射では有意な適応応答が観察されなかったことから,priming doseの下限が0.005Gyと0.02Gyの間にあることが示唆された。次に,poly(ADP-ribose)polymerase 1の阻害剤である3-aminobenzamide(3AB)は染色体異常を指標とした放射線適応応答を阻害することが報告されているが,本研究では3AB存在下でも突然変異を指標とした場合に有意な適応応答が観察された。このことから,細胞の違いに原因がある可能性は排除できないものの,指標によって異なるメカニズムが機能していることが示唆された。更に,HiCEP(high coverage expression profilling)法を用いて遺伝子発現変化の網羅的解析を行った。その結果,0.02Gy照射6時間後に有意に発現変動する遺伝子17個が検出された。また,priming doseがchallenge doseに対する応答に影響している可能性を考えて,3Gy照射後3時間及び18時間における遺伝子発現を0.02Gyの事前照射をした場合と照射しない場合で比較した。その結果,3Gy照射後3時間では17個,18時間では20個の遺伝子の発現変動が観察された。遺伝子の機能検索を行った結果,MAPキナーゼを介する細胞内情報伝達関連遺伝子や酸化還元関連遺伝子等が放射線適応応答に相関して発現変動していることがわかり,放射線適応応答の一因を担う可能性が考えられた。