著者
甘崎 佳子 柿沼 志津子 古渡 礼恵 山内 一己 西村 まゆみ 今岡 達彦 有吉 健太郎 渡邊 正己 島田 義也
出版者
一般社団法人 日本放射線影響学会
雑誌
日本放射線影響学会大会講演要旨集 日本放射線影響学会第50回大会
巻号頁・発行日
pp.167, 2007 (Released:2007-10-20)

【目的】放射線照射によって生じる長寿命ラジカルは、培養細胞の系において遅延型の点突然変異を誘発し細胞をがん化させるが、放射線照射後にビタミンC(VC)を添加すると突然変異頻度が低下し、がん化が抑制されることが報告されている。しかし、放射線発がんにおける長寿命ラジカルの関与について、動物を用いて検証した報告は少ない。そこで本研究では、マウスの放射線誘発胸腺リンパ腫(TL)の系を用いて、放射線照射後にVCを投与した場合のTL発生率とがん関連遺伝子の変異パターンを解析し、放射線誘発TL発生における長寿命ラジカルの関与について明らかにすることを目的とした。 【材料と方法】4週齢B6C3F1マウス(雌)に、X線1.4 Gyを1週間間隔で4回照射しTLを誘発した。VCは生体内半減期の長い誘導体Sodium-L-ascorbyl-2 phosphate(共立薬科大学小林静子先生より供与)を100mg/kg腹空投与した。実験群は、1) X線単独(X線)、2) X線照射直後に毎回VC投与(X+VC)、3) X線照射直後に毎回VCを投与しさらに継続して毎週1回(3ヶ月間)VC投与(X+VC継続)の3群を設定し、各群における照射後生存日数とTLの発生率を調べた。また、放射線誘発TLにおいて変異パターンが明らかとなっているがん抑制遺伝子Ikarosの遺伝子発現、点突然変異およびタンパクの発現を解析した。 【結果】照射後の生存日数は、X線群と比較してX+ VC群ではやや短くなる傾向を示したが、X+VC継続群では長くなった。また生後400日におけるTLの発生率もX+VC継続群で若干低下した。さらに、Ikarosの変異解析の結果、X+VC継続群ではIkaros遺伝子の点突然変異が認められなかった。以上の結果から、マウスの放射線誘発TL発生に長寿命ラジカルが関与している可能性があることが示唆された。
著者
古渡 礼恵 柿沼 志津子 甘崎 佳子 平野 しのぶ 山内 一己 西村 まゆみ 今岡 達彦 島田 義也
出版者
Journal of Radiation Research 編集委員会
雑誌
日本放射線影響学会大会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.186, 2008

【目的】放射線と化学発がん物質が複合曝露された時に発生するがんにおいて、がん関連遺伝子の変異の蓄積がどのように変化するかについての情報は未だ少ない。そこで、放射線とエチルニトロソウレア(ENU)の複合曝露により胸腺リンパ腫(TL)を誘発し、その<i>Kras</i>の点突然変異の頻度とスペクトラムが単独曝露とどのように異なるか、また、その変化が<i>Ikaros</i>の点突然変異とどのように異なるか比較した。<br>【材料と方法】B6C3F1マウスにX線0.8~1.0Gyを1週間間隔で4週間全身照射、もしくは、ENUを飲料水として100~200ppmを4週間投与した。処理は1)4週齢または8週齢からX線照射、2)4週齢または8週齢からENU投与、3)4週齢からX線照射した後8週齢からENU投与(X to ENU)、4)4週齢からENU投与した後8週齢からX線照射(ENU to X)、5)4週齢からX線照射とENU投与を同時曝露(X+ENU)の条件で行った。<i>Kras</i>ならびに<i>Ikaros</i>の変異は、cDNAのダイレクトシークエンスにより調べた。<br>【結果】TLの発生頻度はX線単独またはENU単独での発生頻度と比較して、(X to ENU)群でも(X+ENU)群でも相乗的に、(ENU to X)群では亜相加的に増加した。<i>Kras</i>の点突然変異はX線単独でもENU単独でも、4週齢から処理したものに比べ、8週齢から処理したもので減少していた。<i>Ikaros</i>では週齢による点突然変異の現れる割合に変化はほとんどなかった。次に(X to ENU)群では、<i>Kras</i>と<i>Ikaros</i>のそれぞれで、点突然変異が(超)相加的に増加した。しかし、(ENU to X)群では、<i>Kras</i>の点突然変異は相加的な増加が見られたが、<i>Ikaros</i>では見られなかった。また、(X+ENU)群では、(X to ENU)群と比較して、<i>Kras</i>の点突然変異は著しく減少したのに対し、<i>Ikaros</i>は増加することがわかった。<br>これらの結果から、発がんの複合曝露効果は、曝露の順番などの曝露様式に依存し、それは、がん関連遺伝子の点突然変異の誘発頻度によって一部説明できると考えられた。
著者
今岡 達彦 勝部 孝則 川口 勇生 臺野 和広 土居 主尚 中島 徹夫 森岡 孝満 山田 裕 王 冰 神田 玲子 西村 まゆみ 二宮 康晴 村上 正弘 吉永 信治 柿沼 志津子
出版者
日本保健物理学会
雑誌
保健物理 (ISSN:03676110)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.68-76, 2017 (Released:2017-07-29)
参考文献数
3
被引用文献数
4

Strategic research will be needed to unveil the uncertainty regarding the health effect of radiation at low dose and low dose rate. Recently, the National Council on Radiation Protection and Measurements (NCRP) published Commentary No. 24 dealing with the perspective of integrating radiation biology and epidemiology to address this issue. Results of radiation biology have not been effectively used for radiation risk assessment because 1) available epidemiological studies based on direct observation of human population have been considered to be the most relevant despite their uncertainties and 2) biological studies have not been conducted with their use in risk assessment in mind. The present paper summarizes the Commentary to present perspectives on integrating biology and epidemiology for radiation risk assessment.
著者
柿沼 志津子 尚 奕 森岡 孝満 臺野 和広 島田 義也 西村 まゆみ 甘崎 佳子 今岡 達彦 ブライス ベンジャミン
出版者
国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2015-04-01

福島原発事故以降、放射線への関心が高まり発がんが懸念されている。一方、小児がん患者のプロトンや重粒子線治療が始まり、中性子線や炭素線による2次発がんも心配される。こども被ばくのリスクとその低減化のため発がん機構の解明が急務である。本研究では、マウスやラットの発がん実験で得られたがんの病理解析やゲノム変異解析で、被ばく時年齢、線質、臓器依存性を示す発がんメカニズを調べた。その結果、血液がんでは子供期被ばく特異的な原因遺伝子と変異メカニズムが認められた。固形がんでは、高LET放射線で発がんの早期化や悪性化が示されたが、ゲノム変異に差はなかった。今後、エピジェネティック異常について検討が必要である。
著者
西村 まゆみ 島田 義也 今岡 達彦 柿沼 志津子 臺野 和広
出版者
国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

原爆被爆者や放射線治療患者の疫学調査は、乳腺は放射線による発がんリスクが高い臓器であることを示している。国際宇宙ステーションでは生物学的効果比が高い中性子線の被ばく線量が高く、女性宇宙飛行士の放射線防護には中性子線の影響を考慮する必要がある。また、乳がんリスクは出産経験に大きく左右されるが、放射線による乳がんリスクの情報は少ない。本研究では、ラットを用いてγ線や中性子線による乳がんリスクが妊娠経験によって低減するかを検討した。その結果、出産経験は乳がんの自然発生率を変えなかったが、γ線(4Gy)および中性子線(0.05-0.5Gy)で誘発される乳がんを、ほぼ完璧に抑制することが明らかとなった。