著者
山本 繁弘 大野 和彦 中島 浩
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌プログラミング(PRO) (ISSN:18827802)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.83-83, 2002-03-15

我々は並列言語Orgelの開発を行っている.Orgelは,並行/並列の実行単位であるエージェントをストリームと呼ぶ通信路で結び,明示的なメッセージ送信を行う言語である.Orgelでは,プログラマが問題をエージェントという並列実行単位に切り分けることに加え,ストリームによる通信路接続網の構造をすべて宣言的に記述するので,コンパイル時に並列モデルが明確になっており精度の高い静的解析が可能である.本発表では,このOrgelの特徴を生かして,動的なオーバヘッドを最小限にした最適化を行う手法を提案する.プログラム全体の構造および粒度,通信量が完全に把握できれば,すべて静的に最適化することも可能である.しかし,Orgelでは再帰的な接続も記述できるため,実際に生成されるエージェント個数および構造は必ずしも静的には決まらない.また,通信対象は分かっても送信するメッセージの個数やエージェントの粒度は実行時にしか分からない.したがって,各プロセッサの処理量が偏らないよう静的に全体をスケジューリングすることは困難である.そこで,量的な性質が分かった時点でエージェントを,割当てやスケジューリングできるように,コンパイラは静的解析による結果をランタイムに渡す.ランタイムは,この情報をもとにノード数やプロセッサの現在の負荷などを考慮して,負荷が均等になり通信量が多いエージェントは同一プロセッサになるように割り当てる.また,同一プロセッサ内では依存解析などに基づいてスケジューリングを行う.We are developing a parallel language called Orgel.In the execution model of Orgel,a set of agents are connected with abstract communication channels called streams.The agents run in parallel sending asynchronous messages through the streams.In an Orgel program, each unit of parallel execution is speci fied as an agent by the programmer.The connections among agents and streams are declaratively speci fied.Thus,parallel execution model is clear and the highly accurate static analysis is possible.Utilizing these features,we propose an optimization scheme that minimizing the dynamic overhead.If the complete structure of the whole program is known at compile time,static optimization will be sufficiently effective. However,in Orgel,the number of agents and structures actually generated are not always static,because recursive connection is supported.Moreover,although a communicating pairs of agents are known at compile time,the number of messages and the granularity of agents are known only at runtime.Therefore,it is difficult to balance loads on the processor by whole static scheduling.Thus,in our scheme the compiler outputs an analysis result to instruct the runtime how to allocate and/or schedule an agent when its quantitative attributes are known. Considering the number of processors and the present load of each processor,the runtime uses this information for optimization;it allocates agents balancing loads and minimizing inter-node communication.It also schedules agents on each node considering dependencies.
著者
鈴木 郁真 池内 康樹 津邑公暁 中島 康彦 中島 浩
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌コンピューティングシステム(ACS) (ISSN:18827829)
巻号頁・発行日
vol.46, no.16, pp.129-143, 2005-12-15
被引用文献数
5

遺伝的アルゴリズムにおいて最も処理時間を要する適合度計算に対し,再利用を適用することで高速化する手法を提案し,再利用の有効性を示す.適合度計算の入力となる遺伝子が,前世代で処理された遺伝子と多くの共通部分を持つことから,適合度関数を分割することで再利用の効果を引き出す手法について述べる.GENEsYs を用いて評価した結果,2 点交叉で最大83%,平均27%のサイクル数を削減できた.さらに,関数分割などの改良を施すことにより,最大86%,平均38%までこれが向上した.特に適合度計算に要する時間が長い適合度関数について,再利用の効果がより大きくなることが分かった.This paper describes a speedup technique with computational reuse for the fitness calculation of GA programs. A genotype has many genes in common with its parental genotypes. Therefore, partial results of fitness calculation are reusable. Through the result of an evaluation with GENEsYs, a well-known GA software, we show that the maximum ratio of the cycle reduction reaches 83%, while accomplishing average reduction of 27% with 2-point crossover. Futhermore, dividing fitness procedures raises the maximum ratio to 86% and average ratio to 38%.
著者
佐々木 裕 磯崎 秀樹 平 博順 廣田 啓一 賀沢 秀人 平尾 努 中島 浩之 加藤 恒昭
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NLC, 言語理解とコミュニケーション (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.100, no.401, pp.17-24, 2000-10-20
被引用文献数
16

本稿では, いくつかの質問応答システムを独立に作成し, 50問の質問文に対する性能評価を行なった結果を報告する.質問応答システムは1999年のTREC-8のQAタスクの開催以降注目を集めており, 次のような点で従来の情報検索や情報抽出と異なっている.従来の情報検索では, 質問に対する答えを文書の単位で列挙していたが, 質問応答システムは質問の答えを記述した部分を返す.また, 従来の情報抽出は対象分野と抽出項目があらかじめ限定されていたが, 質問応答では, 抽出する項目が質問文により自由に決まる点で異なっている.本稿は, 今後の質問応答システム研究の参考とするため, 日本語QAシステムの性能のベースラインを探るとともに, 日本語QAシステムの比較・評価法を紹介するものである.
著者
内藤 建 亀井 智成 中島 浩二 小野 伸幸 坂口 正雄 矢永 尚士 大橋 俊夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MBE, MEとバイオサイバネティックス
巻号頁・発行日
vol.94, no.261, pp.63-68, 1994-09-29
被引用文献数
1

我々は発汗と心拍変動の同時計測が可能な携帯型自律神経モニタ装置の開発を行った。本装置は記録媒体に無接点式フラッシュメモリカードを使用し、24時間中4時間分(任意の1時間×4回)の局所発汗と心拍数、RR50、RR間隔の同時計測が可能である。本研究では生理学的負荷中、および日常生活行動中での精神性発汗と心拍変動の無拘束同時計測に本装置を適用した。
著者
中田 尚 津邑 公暁 中島 浩
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌. コンピューティングシステム (ISSN:03875806)
巻号頁・発行日
vol.46, no.12, pp.98-109, 2005-08-15
被引用文献数
3

集積回路技術の進歩にともない, マイクロプロセッサの構造は高度化・複雑化している.このような高度なマイクロプロセッサの研究・開発や, それを組み込んだ機器のハードウェア・ソフトウェア協調設計においては, その機能・性能を検証するためのcycle accurateなシミュレータが不可欠である.しかし, 現状のシミュレータは一般に低速であり, 開発の効率化の障害となっている.これに対して, スケジューリング計算の高速化によりシミュレータの高速化が提案され, 効果をあげている.一方で, スケジューリング計算が高速化することにより, 命令エミュレーションの実行時間がシミュレーション時間全体に占める割合が相対的に大きくなっており, シミュレーションのさらなる高速化のためには, 命令エミュレーションの高速化が課題となっている.本論文では, 個々のワークロードに対して最適化されたシミュレータを生成することにより, 命令エミュレーションの高速化を図る.これにより, 可搬性を損なうことなくバイナリ変換を適用した場合と同等の高速化を達成することができる.SPEC CPU95ベンチマークを用いて評価を行った結果, SimpleScalarのsim-fastに対して, 最大34倍, 平均19倍のシミュレーション速度の向上が確認できた.
著者
中田 尚 津邑 公暁 中島 浩
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. 計算機アーキテクチャ研究会報告 (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2005, no.80, pp.97-102, 2005-08-03
被引用文献数
1

高度なマイクロプロセッサの研究・開発や, それを組み込んだ機器のハードウェア・ソフトウェア協調設計においては, その機能・性能を検証するためのcycle accurateなシミュレータが不可欠である.しかし, 既存のシミュレータは一般に低速であり, 開発の効率化の障害となっている.これに対して, スケジューリング計算の高速化や命令エミュレーションの高速化が提案され, 効果を上げている.一方, これらの実行時間短縮により, キャッシュシミュレーションの実行時間の割合が相対的に大きくなり, その短縮がシミュレーションのさらなる高速化のための課題となっている.本論文では, 個々のキャッシュに対して最適化されたシミュレータを生成することにより, キャッシュシミュレーションの高速化を図る.SPEC CPU95ベンチマークを用いて評価を行った結果, SimpleScalarのsim-cacheに対して, 最大14.1倍, 平均8.3倍のシミュレーション速度の向上が確認できた.