著者
中嶋 奈津子
出版者
佛教大学総合研究所
雑誌
佛教大学総合研究所共同研究成果報告論文集 (ISSN:21896607)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.35-46, 2018-03-25

本稿は南部藩領内に特有の権現信仰に基づいて行われる神楽「墓獅子」の実態と現状を明らかにするものである。そのため,「墓獅子」を現行している(或いは,以前行っていた)地域10か所の神楽の調査を実施した。南部藩領内では,獅子頭を神仏の化身として「権現様」と呼び,地域の守り神として信仰している。神社例大祭ではこの「権現様」を奉じて舞わせる。この祈祷の「権現舞」が一部の地域では死者の供養にかわる「墓獅子」として機能していたことがわかった。また,「墓獅子」は一定の形式があって,般若心経を唱え,加えて魔を払い清める「七つ踊り」を行うなどの特徴を確認した。1950年代まで盛んに行われていた「墓獅子」は時代の流れとともに,墓と供養の形態の変化や信仰心の薄れに伴って依頼も減り,わずかな依頼や沿岸地域での廻村巡業で維持できている状況であることが今回の調査で明らかになった。墓獅子権現信仰獅子頭の権現様死者供養墓獅子の唄
著者
中嶋 奈津子
出版者
佛教大学総合研究所
雑誌
佛教大学総合研究所紀要 = Bulletin of the Research Institute of Bukkyo University (ISSN:13405942)
巻号頁・発行日
no.26, pp.123-132, 2019-03

岩手県八幡平市平舘の岩手山神社山伏神楽(旧名:三阿弥陀神楽)は修験系神楽の一つであがんしゅうざんり,岩手山(奥羽山脈北部県内最高峰2038m 旧名巌鷲山)の山霊を祀る岩手山神社に伝わる神楽である。この神楽については江戸時代から続くとうたわれているが,「修験大蔵院がはじめた神楽」という以外に情報が少なく,これまで誰の手によってどのように存続してきたのか,その経過については把握されていない。今回この神楽の聞き取りおよび文献調査を通して,盛岡藩領内における修験系神楽の近代以降の変遷(修験の神楽から庶民の神楽へと変遷してゆく過程)についての一つの事例としてその詳細を明らかにすることができた。さらに現代において,神楽の存続のために隣接地域同士での「神楽の譲渡」が行われるなど,貴重な事例であることが明らかになった。修験系神楽獅子頭祈祷者と舞人担い手の変遷神楽の譲渡