著者
星 優也
雑誌
摂大人文科学 = The Setsudai Review of Humanities and Social Sciences (ISSN:13419315)
巻号頁・発行日
no.28, pp.104-85, 2021-01

中世神仏信仰・中世神道と儀礼の研究は、近年飛躍的に進展した。なかでも儀礼で読まれる祭文や講式といった文献群は、注目されつつあるが課題が多い分野である。とくに神々を〈本尊〉とする講式は、鎌倉時代以降に展開したことで知られるが、不明な点が多い。本稿で取り上げる『神祇講秘式』は、これまで言及こそされたが、正面から研究されたことがない講式である。とくに密教系で短文の秘密式は、講式研究でも等閑視されてきたが、そこに「神祇」がつく『神祇講秘式』は、その最たるものである。しかし『神祇講秘式』は、講式と祭文、中世神仏信仰の近世的展開、中世神道と修験道の関係を考えるうえで重要な文献である。本稿は、『神祇講秘式』の基礎的考察を行い、類似する書名を持つ『神祇講式』と比較検討する。つづいて具体的な儀礼における『神祇講秘式』の存在形態を明らかにし、最後は神祇講式、神祇講秘式という書名すらなくなり、新しい祭文として作り替えられ、展開していく姿を明らかにする。
著者
星 優也
出版者
佛教大学大学院
雑誌
佛教大学大学院紀要. 文学研究科篇 (ISSN:18833985)
巻号頁・発行日
no.46, pp.109-125, 2018-03-01

『妙覚心地祭文』は、弘法大師空海作と伝わる祭文で、その書名自体は平安末期の嘉応二年(一一七〇)写とされる初期両部神道書『三角柏伝記』に確認できる。鎌倉期以降、各所に伝本が存在しているが、近世以降に空海仮託の偽書と見なされたことで研究は進まなかった。近年は中世神道研究において注目されており、再評価の機運が高まりつつある。本稿は以上の研究史を踏まえ、『妙覚心地祭文』前半部の祭文について、<本尊>である「尊神」「冥道」(冥衆)、そして祭文の詞章に登場する「陰陽師」、さらに弘法大師作という言説に注目し読解を試みる。初期中世神道書である『三角柏伝記』にその名が見え、平安後期以降に密教や陰陽道の神々として展開される冥道や星宿を<本尊>とし、さらに祭文に「陰陽師」が登場する『妙覚心地祭文』。本稿は、中世神道と中世仏教、中世陰陽道をクロスさせる『妙覚心地祭文』研究序説として位置づけるものである。『妙覚心地祭文』冥道陰陽師弘法大師中世神話
著者
星 優也
雑誌
摂大人文科学 = The Setsudai Review of Humanities and Social Sciences (ISSN:13419315)
巻号頁・発行日
no.28, pp.104-85, 2021-01

中世神仏信仰・中世神道と儀礼の研究は、近年飛躍的に進展した。なかでも儀礼で読まれる祭文や講式といった文献群は、注目されつつあるが課題が多い分野である。とくに神々を〈本尊〉とする講式は、鎌倉時代以降に展開したことで知られるが、不明な点が多い。本稿で取り上げる『神祇講秘式』は、これまで言及こそされたが、正面から研究されたことがない講式である。とくに密教系で短文の秘密式は、講式研究でも等閑視されてきたが、そこに「神祇」がつく『神祇講秘式』は、その最たるものである。しかし『神祇講秘式』は、講式と祭文、中世神仏信仰の近世的展開、中世神道と修験道の関係を考えるうえで重要な文献である。本稿は、『神祇講秘式』の基礎的考察を行い、類似する書名を持つ『神祇講式』と比較検討する。つづいて具体的な儀礼における『神祇講秘式』の存在形態を明らかにし、最後は神祇講式、神祇講秘式という書名すらなくなり、新しい祭文として作り替えられ、展開していく姿を明らかにする。
著者
星 優也
出版者
佛教大学大学院
雑誌
佛教大学大学院紀要. 文学研究科篇 (ISSN:18833985)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.109-125, 2018-03-01

『妙覚心地祭文』は、弘法大師空海作と伝わる祭文で、その書名自体は平安末期の嘉応二年(一一七〇)写とされる初期両部神道書『三角柏伝記』に確認できる。鎌倉期以降、各所に伝本が存在しているが、近世以降に空海仮託の偽書と見なされたことで研究は進まなかった。近年は中世神道研究において注目されており、再評価の機運が高まりつつある。本稿は以上の研究史を踏まえ、『妙覚心地祭文』前半部の祭文について、<本尊>である「尊神」「冥道」(冥衆)、そして祭文の詞章に登場する「陰陽師」、さらに弘法大師作という言説に注目し読解を試みる。初期中世神道書である『三角柏伝記』にその名が見え、平安後期以降に密教や陰陽道の神々として展開される冥道や星宿を<本尊>とし、さらに祭文に「陰陽師」が登場する『妙覚心地祭文』。本稿は、中世神道と中世仏教、中世陰陽道をクロスさせる『妙覚心地祭文』研究序説として位置づけるものである。『妙覚心地祭文』冥道陰陽師弘法大師中世神話
著者
星 優也
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.67, no.6, pp.1-12, 2018-06-10 (Released:2023-07-01)

『神祇講式』は、神祇を〈本尊〉として衆生救済を祈る講式である。無住作『沙石集』や『中臣祓訓解』など中世神道書との関係が指摘されており、近年は神楽の祭文への展開が明らかになっている。本稿は、『神祇講式』に見られる「神冥」の表現に注目した。「神冥」は用例こそ鎌倉期に確認できるが、「神祇」と「神冥」の関係を考察することから、『神祇講式』では死者を含む、衆生を救済する「神冥」が創られたことを明らかにした。
著者
斎藤 英喜 中嶋 奈津子 八木 透 星 優也
出版者
佛教大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

近年、地域の神楽には、都会から多くの見学者が押し寄せるなど、その関心、興味が高まっている。その一方では、担い手たちの高齢化、地域の過疎化によって、休止に追い込まれる神楽も少なくない。また神楽の執行が形式化、イベント化する傾向もみられる。こうした神楽にたいする関心の高まりと地域が抱える問題にたいして、本研究では、これまで重視されていなかった、「中世の神楽」の実態を明らかにすることで、神楽がもつ「宗教性」とともに、その歴史的な展開を示すことで、日本の宗教文化のあらたな面を提示することが可能と考えられる。