著者
山下 道子 花井 敏男 中川 尚志 小宗 静男
出版者
JIBI TO RINSHO KAI
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.1-9, 2013

近年、新生児聴覚スクリーニングの導入により難聴児の療育の開始時期が早期化している。しかし、依然として療育開始が 3 歳以降となる症例も存在する。1999 年度から 2011 年度までの13 年間で当センターに3 歳以降に初診し療育を開始した 52 例について検討した。後天性難聴以外の例では、難聴に気付く時期が遅れており、難聴の早期発見のためには乳幼児の保健や保育にかかわる人に乳幼児難聴について知ってもらい、難聴を疑うこと、聴力検査を受けてもらうことが大切であると考えられた。1 歳半健診・3 歳児健診の聴覚検診の囁き声検査は重要であり、福岡市においても今年度から導入され、その効果が期待される。
著者
大門 康子 末田 尚之 杉山 喜一 宮城 司道 中川 尚志 竹下 盛重
出版者
特定非営利活動法人 日本頭頸部外科学会
雑誌
頭頸部外科 (ISSN:1349581X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.63-68, 2014 (Released:2014-09-10)
参考文献数
20
被引用文献数
2

Spindle cell carcinoma(sarcomatoid carcinoma)は扁平上皮癌成分と紡錘形細胞を主体とする肉腫様成分とが混在してみられる悪性腫瘍であり,扁平上皮癌の亜型として分類されている。今回,われわれは急速に進行したspindle cell carcinomaの1例を経験したので報告する。症例は58歳男性,急性心筋梗塞にて救急救命センターに搬送され,気管切開術が施行された。抜管後に呼吸困難が出現し,気管支鏡検査により喉頭声門下より気管内に腫瘍性病変が確認された。再気管切開術とともに腫瘍組織検査が施行され,病理組織検査からspindle cell carcinomaと診断された。約3週間後に手術を予定していたが局所の急速な増大とともにリンパ節および遠隔転移が進行し,手術不能と判断される状態になった。診断後2か月で死亡し,不幸な転帰となった。
著者
村上 健 深浦 順一 山野 貴史 中川 尚志
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.27-31, 2016

変声は14歳前後に完了するといわれている.今回,20代で声の高さの異常を他者に指摘されて初めて症状を自覚し,当科を受診した変声障害2症例を経験した.2症例とも第二次性徴を完了しており,喉頭に器質的な異常は認められなかった.話声位は男性の話声位平均値よりも高い数値を示したが,声の高さの異常に対する本人の自覚は低かった.初診時にKayser-Gutzmann法,咳払い,サイレン法により低音域の話声位を誘導後,低音域の持続母音発声から短文まで音声訓練を行い,声に対する自己フィードバックも実施した.訓練は1~2週に1回の頻度で実施した.2例とも訓練初回に話声位を下げることが可能であったが,日常会話への汎化に時間を要した.個性を尊重するなどの学校社会における環境の変化が,本人の自覚を遅らせ,診断の遅れにつながったのではないかと推測した.
著者
吉田 聖 中島 寅彦 中川 尚志 久保 和彦 小宗 静男
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.193-198, 2005-05-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
21

Lemierre症候群は扁桃炎、咽頭炎より波及する血栓性内頸静脈炎から重症の敗血症、多発性転移性感染症などの重篤な全身症状を呈する感染症である。今回われわれはLemierre症候群の1症例を経験した。症例は32歳男性。主訴は発熱、咽頭痛。CRP 22mg/dlと高度の炎症反応、血小板40,000/Mm3と低下を認めたため敗血症によるDIC を疑い入院となった。血液培養にてグラム陰性桿菌であるporphyromonas asaccharoliticaが検出された。CT、MRI、超音波検査において、肺野に空洞を伴う病変および胸水、頸部リンパ節腫大、内頸静脈内腔の血栓形成を認めた。クリンダマイシン、メロペネムなどの抗生剤投与と、ワーファリンによる抗凝固療法による保存的治療により軽快した。急性扁桃炎重症例においては、本症候群への進展を念頭におくべきである。そして本症候群と診断された場合、迅速で適切な治療が必要である。