著者
中村 剛之
出版者
一般社団法人 日本昆虫学会
雑誌
昆蟲.ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.121-130, 2016-07-05 (Released:2019-04-25)
参考文献数
7

昆虫の形態をスケッチする方法を鉛筆による下書きから,インクを使ったペン入れ,仕上げまで手順を追って解説した.スケッチは観察した内容を人の頭の中で咀嚼し,その内容を紙の上に描き写したもので,写真のような単なる色や明るさの転写とは大きく異なる.見えるものを見えた通りに描くのではなく,描き方を工夫することで写真ではとらえにくい構造を人に伝わりやすい形で描くことができる.これがスケッチの利点であり,面倒を排して図を描く意義である.
著者
中村 剛之
出版者
弘前大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

水生ガガンボ類の幼虫と蛹は河川や湿地など水辺環境の調査で頻繁に確認されるものの、種の同定ができないために調査研究が進んでいなかった。本研究では、野外で採集した幼虫を飼育し、成虫を得ることによって種の同定を行い、日本産ガガンボ類の代表的な種の幼生期の形態的特徴と生息環境を調査した。その結果、42種のガガンボ類の幼虫と蛹の形態を明らかにすることができた。中には、これまで海外での研究結果から推測されていた姿とは大きく異なる特徴を持つ種もあることが判明した。このように、代表的な種の幼生期形態が明らかになることで、今後の生態学データの蓄積がなされることが期待される。
著者
中村 剛之
出版者
一般社団法人 日本昆虫学会
雑誌
昆蟲.ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.132-137, 2017-07-05 (Released:2019-07-05)
参考文献数
9

エタノールなどの中で保存された液浸標本は時間の経過とともに体や翅が軟弱化したり,退色したりするため,長期保存のためには乾燥標本とすることが望ましい.しかし,すでに保存液中で長期間保存された標本はそのまま乾燥させたのでは体や翅が萎れるなどの変形がおこり,良い状態で乾燥標本とすることが困難であった.体が軟弱化した標本ではなおさらである.このような標本を整形しながら乾燥させる方法として,水を弾く性質がある剥離紙の上で保存液に濡れたまま展翅する方法を紹介した.この方法は双翅目,毛翅目,長翅目,脈翅目類,セキ翅目,咀顎目では有効であった.鱗粉が剥がれやすい鱗翅目,翅がこわばる膜翅目,一部の双翅目ではこの方法で展翅することが難しく,展翅法の更なる工夫が必要と考えられた.
著者
大屋 周期 山崎 嘉孝 中村 剛之 森重 聡 山口 真紀 青山 一利 関 律子 毛利 文彦 大崎 浩一 内藤 嘉紀 大島 孝一 長藤 宏司
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.61, no.11, pp.1605-1610, 2020 (Released:2020-12-08)
参考文献数
15

多中心性キャッスルマン病は,リンパ節病理像によって特徴づけられるリンパ増殖性疾患でIL-6高値を特徴としている。症例は17歳の日本人男性,発熱,頭痛,倦怠感,体重減少を伴っていたが,血圧は正常であった。臍下部に可動性良好な腫瘤を触知し,血液検査所見は小球性貧血,低アルブミン血症,IL-6高値,sIL-2R高値,VEGF高値を示した。造影CT検査で55 mm大の骨盤内腫瘤と腸間膜周囲のリンパ節腫大を認め,多中心性キャッスルマン病を疑い骨盤内腫瘍を摘出した。術後,血圧が緩徐に上昇し可逆性後頭葉白質脳症による痙攣を発症した。高血圧の精査で,術前の血中ノルアドレナリン,ノルメタネフリン高値が判明し,摘出標本でIL-6およびクロモグラニンAが陽性であることから,IL-6産生パラガングリオーマと診断した。多中心性キャッスルマン病に類似した発熱,貧血などを来す病態の鑑別診断として,血圧上昇を伴わない症例でもIL-6産生褐色細胞腫・パラガングリオーマを考慮する必要がある。