著者
伴 さやか 坂根 健 中桐 昭
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会大会講演要旨集 日本菌学会第53回大会
巻号頁・発行日
pp.10, 2009 (Released:2009-10-30)

我々は大阪府摂津地方で,クズ大木の根に生息するボクトウガ科幼虫から発生するツブタケ型の冬虫夏草を採取した. 本種はイタドリ等の根塊に生息するボクトウガ科幼虫から発生するボクトウガオオハリタケ(未記載種)よりも子座が短く太いことで区別され,子実体は虫体から1~3本生じ,先で1~2回分枝する. 柄は淡褐色. 結実部は上部に生じ,子嚢殻は表生,赤褐色,卵型で320−570 × 260−350 (451.8 × 308.2) μm,子嚢胞子は225−250 × 5−6 (238.0 × 5.5) μm,多細胞となるがpartsporeに分断しない. 子嚢胞子から得られた分離株のrDNA ITSおよび28S D1/D2領域の塩基配列に基づいた解析を行ったところ, Ophiocordyceps robertsii, O. emeiensis,ボクトウガオオハリタケと相同性が高く,また形態的特徴も類似したが,系統樹ではそれらとは別のクラスターを構成した. これらのことから本種をOphiocordyceps属の新種(和名: クズノイモムシツブタケ)と判断した. また,本種は培地上でHirsutella型アナモルフを形成する. 本種が未熟のまま数年経過した後に,別種のOphiocordycepsに重複寄生され,子実体がほうき状に多数分枝して更に別種のように見えるケースも観察されたので併せて報告する.
著者
中桐 昭 早乙女 梢 足立 陽子 杉本 直人 畑 秀和
出版者
鳥取大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

淡水域および汽水域の低酸素環境に適応した真菌類の取得を目指し、2段階低酸素分離法や低酸素釣菌法で菌を分離し、培養性状を調べた結果、分離株の多くは高酸素菌(好気性菌)であったが、少数ながら、低酸素菌や中酸素菌(微好気菌)も分離できた。さらに、嫌気~微好気~好気の各条件で生育が変わらない広範囲菌が分離され、これらは低酸素環境に適応して生息できる菌類と考えられた。水生菌類では、淡水域からはSigmoidea sp.、汽水域からはLulwoana spp.などが高または高~中酸素菌として見いだされた。これらは未記載種と考えられ、新たな低酸素分離法により、未知の菌が取得できた可能性がある。