著者
田中 岳 渡部 靖憲 中津川 誠
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.48-63, 2013

2011年東北地方太平洋沖地震津波による避難指示・勧告の解除直後,北海道沿岸域の住民に対して避難行動調査を実施した.その結果から,主に以下のことが示された.避難者の約8割が自動車を使用していた.また,予想される津波の高さが,陸上での浸水深や遡上高とは異なるものの,「津波はそれほど大きくないと思った」,「もう安全と思った」などの自己判断から,避難しても警報や注意報の解除前にその約6割が帰宅した.徒歩避難が原則ではあるが,確実に来る超高齢化社会や,気象や地形の地域性を考慮した避難行動計画が必要と考えられる.さらに,自己判断による被災を防止するために,防災知識と意識の醸成を図る防災教育の必要性が示唆された.
著者
中津川 誠 山田 正
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
水工学論文集 (ISSN:09167374)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.1-8, 1993-02-20 (Released:2010-06-04)
参考文献数
12
被引用文献数
1

The present study deals with the investigation of wind velocity observed by the Doppler radar. The first phase of paper is the observation of wind using the Doppler radar. Observations have been carried out by using the Doppler radar which is installed in the suburb of Sapporo, Hokkaido, Japan. Horizontal and vertical wind components are estimated by applying the VAD (Velocity Azimuth Display) method to the Doppler data. We make sure that the VAD method can precisely estimate the wind components. The second phase is the utilization of wind data for investigation of rainfall field. The geostrophic wind observed by the Doppler radar is incorporated into the Kao model so that three dimensional wind components are estimated in the planetary boundary layer. The rainfall field is simulated by applying such wind distribution to the Kessler parameterization. The above methodorogy offers considerable promise for the progress of physics-based rainfall models and forecast methods.
著者
阿部 孝章 佐藤 好茂 船木 淳悟 吉川 泰弘 中津川 誠
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.I_1004-I_1011, 2015

本稿では北海道でも人口が低平地に密集する釧路市を対象地域とし,河川周辺域における自治体等行政の減災対策を支援する手法の開発を目的として検討を実施した.まず,波源域から河道域までの津波解析を簡易に実施可能な一連のモデル開発を行い,実際に発生した津波波源モデルのパラメータ及び河川流量を変化させた解析を行い,各構造物が受ける津波外力を評価した.次に,北海道庁により検討が行われた最大クラスの津波のデータを用いて地盤沈下量を変化させた解析を行い,上水道や下水処理施設等に対する津波外力を評価した.その結果,津波の規模と河川流量,地盤変化量の条件次第では,施設の被災可能性は変化する可能性がある事が分かった.複数の津波想定を事前に行っておくことで河川管理者や自治体の減災支援となる可能性が示された.
著者
臼谷 友秀 中津川 誠
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B (ISSN:18806031)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.268-279, 2010 (Released:2010-08-20)
参考文献数
16

気候変動に対する適応策の一環として多目的ダムの治水・利水機能が注目されている.その背景の一つに,積雪寒冷地の多目的ダムでは,利水容量の確保を優先した融雪期における大雨への対応が懸念されていることがある.そこで本論文では,ダムの洪水調節機能の向上を目指し,予測雨量を利用したダムの事前放流の可能性を検討した.最初に,積算予測雨量と時系列予測雨量の精度を比較し,積算予測雨量の優位性を明らかにした.次に,積算予測雨量に基づいた事前放流方法を提案し過去の大雨を伴う融雪洪水に適用した.以上の結果,積算予測雨量の利用は融雪期のダムの洪水調節機能の向上に有効であることがわかった.さらに,融雪期の多目的ダムの管理においては,事前放流によって治水機能の向上が可能であることを示唆することができた.