著者
行方 浩二 高森 繁 田中 岳史 丸山 俊郎 大橋 薫 児島 邦明 深澤 正樹 別府 倫兄 二川 俊二
出版者
日本外科系連合学会
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.22, no.5, pp.808-812, 1997-10-25 (Released:2009-08-13)
参考文献数
20
被引用文献数
2 1

汎発性腹膜炎を契機として発見されたMeckel憩室原発平滑筋肉腫穿孔の1例を経験した。症例は48歳, 男性。嘔吐, 発熱, 右下腹部痛を主訴に来院し, 急性腹症, 汎発性腹膜炎の診断にて緊急開腹手術を施行した。回盲弁より100cm口側の回腸に憩室を認め, その先端に7.5×7×6.5cmの弾性軟・被膜を有する腫瘍が存在していた。腫瘍は破裂し膿瘍が付着, 一部は大網に覆われていた。術式は回腸部分切除+腹腔ドレナージ術を施行した。病理組織学的には, 腫瘍は核の大小不同を示す異型性の強い紡錘形細胞が増生し核分裂像もみられており, Meckel憩室原発平滑筋肉腫を伴った, Meckel憩室穿孔と診断した。Meckel憩室が平滑筋肉腫を伴った症例は, 本邦で7例しか報告されておらず若干の文献的考察を含めて報告する。
著者
田中 岳人
出版者
日本地理教育学会
雑誌
新地理 (ISSN:05598362)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.1-19, 2021 (Released:2021-08-11)
参考文献数
18

In Japanese geography education, the Köppen climate classification was introduced before the WWⅡ and is the major climate classification in Japan. This paper clarifies the process by which Köppen’s climate classification became established in Japanese geography education, along with the changes in physical geography learning. In this research, the Courses of Study, and textbooks from the 1930s to the 2010s were analized. It was confirmed that the ratio of physical geography in textbooks increased or decreased due to how much subject changes were dealt with in Courses of Study. Based on the amount of the description of Köppen’s climate classification, the timing of its establishment was determined. The process could be categorized as the early period in the 1930s, the period of disorder from the 1940s to the 1950s, and the period of establishment that has continued since the 1960s. Köppen’s climate classification became prevalent in Japanese geography education because it was used in region geography in the first post-war human geography textbooks. It was just a model of climate classification, until then. However it was developed as a way of learning climate with descriptions of vegetation, soil, agriculture and livestock. How much Köppen’s climate classification have been covered in textbooks in Japanese geography education can be viewed as a mediation between physical geography and human geography. The Köppen climate classification is considered to have systematized geography education as a whole.
著者
大場 淳 芦沢 真五 小貫 有紀子 田中 岳 前田 一之
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

日本の大学改革では意思決定における上意下達的側面や制度改革が重視され、一定方向のガバナンス改革が一律の全大学に適用される傾向がある中において、本研究は、国内外の調査に基づいて、個々の大学が有する諸条件によって望ましいガバナンスの在り方は異なっていることを明確にした。そのことは、大学運営に関する改革の在り方は、例えば学長の権限拡大や教授会の権限縮小といった一律の制度改革を行うことではなく、個々の大学が適切なガバナンスの在り方を構想することを支援することにあるべきことを示唆するものである。研究成果については、学会等での発表、雑誌論文の掲載、書籍への執筆等を通じて、日本語及び外国語で行った。
著者
田中 岳 渡部 靖憲 中津川 誠
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.48-63, 2013

2011年東北地方太平洋沖地震津波による避難指示・勧告の解除直後,北海道沿岸域の住民に対して避難行動調査を実施した.その結果から,主に以下のことが示された.避難者の約8割が自動車を使用していた.また,予想される津波の高さが,陸上での浸水深や遡上高とは異なるものの,「津波はそれほど大きくないと思った」,「もう安全と思った」などの自己判断から,避難しても警報や注意報の解除前にその約6割が帰宅した.徒歩避難が原則ではあるが,確実に来る超高齢化社会や,気象や地形の地域性を考慮した避難行動計画が必要と考えられる.さらに,自己判断による被災を防止するために,防災知識と意識の醸成を図る防災教育の必要性が示唆された.
著者
田中 岳
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集
巻号頁・発行日
vol.26, 2013

二十四節季において一年で最も寒いとされる1月の20日,21日(大寒)頃に,近年になり度々,気温上昇と激しい降雨が観測されている.例えば,2002年1月21日に北海道の松前町,伊達市において記録された,最高気温8.2℃,日降水量12mm/day(松前町),最高気温5.0℃,日降水量114.5mm/day(伊達市)は記憶に新しい.同日,札幌市では,最高気温4.5℃,日降水量53.5mm/dayと,季節外れの大雨に伴い内水氾濫も発生している.積雪寒冷地でのこのような冬季の気温上昇や降雨現象は,融雪の急激な加速や,これに伴う河川氾濫,土砂崩壊など,災害に繋がりかねない現象である. これまで著者らは,積雪寒冷地の札幌を例として,特に,一年で最も寒い厳冬期に生じる降雨と気温変動について検討してきた.その結果,1889年から2011年(123年間)の厳冬期の日最高,日平均,日最低気温のそれぞれ最低値の変動と,降雨の発生頻度には,およそ20年から25年の周期性が確認されている. 本研究では,寒の入りと呼ばれ,寒さが始まる小寒の頃1月6日とその前後2日間,および大寒の頃1月21日とその前後2日間の各5日間を主な解析期間として,固定された一日(日付)の日最高,日平均,日最低気温データを,太陽の活動周期(黒点数の変化)による影響を取り除くために11年移動平均した後,それぞれを解析期間内(5日間)で平均した結果の年変動を考察した.その結果,各気温の年変動には大きな振動が含まれるが,各気温のピークに着目すると,1900年頃から概ね20年から25年の周期性がうかがえた.なお,このような傾向は,解析期間内のある一日の各気温データを11年移動平均した結果に対しても,同様に確認されている.また,処理後の各気温(日最高,日平均,日最低)を直線近似した際の長期的な変動傾向は,それぞれ1.45℃/100y,3.20℃/100y,5.42℃/100y(小寒の頃),1.12℃/100y,2.28℃/100y,4.23℃/100y(大寒の頃)と推定された. 今後は,厳冬期における低気圧の軌道の特性と,降雨・気温の変動特性とを対応させながら研究を進める予定である.
著者
山本 隆太 阪上 弘彬 泉 貴久 田中 岳人
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2017, 2017

1. 国際的な地理教育界におけるシステムアプローチ<br>国際地理学連合地理教育専門委員会(IGU-CGE)の地理教育国際憲章(IGU-CGE 1992)では,主題学習のカリキュラム編成原理としてシステマティックアプローチ(Systematic Approach)やシステムズアプローチ(Systems Approach)が示された。以後,地理教育にシステム論やシステム思考を導入するという考え方は世界に共通する地理教育論の一つとなっている。志村(2014)では,1970年にはすでに,IGU-CGEのローマ委員会が「空間システム的な環境&minus;人間関係」を地理教育として重視する方向性を示したことや,2000年頃の地理教育国際比較調査においてシステム思考が中等教育段階のカリキュラム編成原理の一つとなっていることが示されている。IGU-CGEのルツェルン宣言(大西2008)では,ESDを念頭に,自然,文化,社会,経済といった各圏・領域を包括的に扱う「人間-地球」エコシステム(Human-Earth ecosystem)の概念を地理教育として重視することを表明している。これに強く同調している国のひとつにドイツがある。ドイツでは地理教育スタンダードを2006年に公刊し,そこでシステムとしての空間を地理教育の中心的な目標として位置付けた(阪上2013)。また,この目標の下,地理教育システムコンピテンシーを開発し(山本2016),各州におけるカリキュラムに位置付ける動きがみられる(阪上・山本2017, 山本2016)。<br><br>2. 国内における地理教育システムアプローチの展開<br>ドイツの地理教育システムコンピテンシーは,「システム思考,ネットワーク思考ともいわれるシステム的な見方・考え方に基づき,ダイナミクス,複雑系,創発などのシステムの概念から地理的な事象や課題の構造と挙動を理解し,世界を観察・考察する教育/学習方法」と定義されている(山本2016)。この地理教育システムコンピテンシーに基づき,筆者らはシステムアプローチとしての授業実践を構想,実践した(実践一覧はhttps://geosysapp.jimdo.com/に記載)。なお,ドイツの定義に基づいて日本国内の教育実践を参照すると,例えば,鉄川(2013)では地理的事象を構造化するアプローチをとっている一方で,挙動については触れていない。システムアプローチの視座に立つと,地理授業においてすでに構造化については実践がなされている一方,挙動については課題があることが考えられる。<br><br>3. 授業実践事例 アラル海の縮小<br><br>アラル海の縮小を題材として,システムアプローチに基づく授業実践を行った。実践校は埼玉県内私立高校で,高校3年次の地理A(6時間)で実践を行った。授業は,(1)教科書や資料集を用いてアラル海の縮小に関する記述を理解する,(2)関係構造図(第1図)で問題の構造を解明する,(3)最悪シナリオ/持続可能な解決策を考えることで挙動を解明する,という展開で実践した。授業後,授業に関する生徒アンケートを実施した。<br><br>4.考察<br>システムアプローチを用いた実践では,持続可能な社会づくりを目指し,環境条件と人間の営みとの関わりに着目して現代の地理的な諸課題を考察する科目的特徴を具体化できることがわかった。また,関係構造図を用いることで,生徒自ら自分自身の思考を可視化できた。<br>
著者
田中 岳 八幡 洋成 山田 朋人
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集
巻号頁・発行日
vol.25, 2012
被引用文献数
1

二十四節季では,1月5日,6日頃を小寒,1月20日,21日頃を,大寒とよぶ.ただ,大寒の方が暖かくなることもある.近年,この大寒の頃の厳冬期に,気温上昇と降雨が観測されている.例えば,2002年1月21日,北海道の松前町,伊達市では,最高気温がそれぞれ8.2℃,5.0℃,日降水量12mm/day,114.5mm/dayが記録された.その際,札幌市では最高気温4.5℃,日降水量が53.5mm/dayとなり,市内を流れる望月寒川が氾濫し,16軒が浸水した.さらに,雪崩も発生し,国道二路線の一部,道央道の三路線,四区間の通行止めや,航空機の欠航も生じた.このような積雪寒冷地における厳冬期の気温上昇と降雨は,融雪を加速させて河川の氾濫や土砂崩壊をまねきかねない.また,冬期間の全体で気温上昇が続くと,積雪量が減少し水資源管理にも影響を与える.このように,冬期の気象変化は,治水,利水の観点からも注視しなければならない現象である. 本研究では,札幌を例として,積雪寒冷地における気温と降雨について,特に,一年で最も寒い厳冬期に着目し,その特性を気象データに基づき検討する.使用するデータは,気象庁札幌管区気象台で観測された1889年から2011年の123年間の気温,天気,降雨である.厳冬期に着目しているため,1月1日から2月28日の期間と,大寒の頃1月21日の前後2日を含む1月19日から1月23日の5日間のように解析期間を決め,平均気温,最高気温,最低気温および降雨の特性を考察した.その結果,人間活動の影響を強く受ける最低気温の最低値は,札幌市の人口変遷と概ね対応した形で,1940年以降に急激に上昇することを確認した.太陽の活動周期を除去した各気温の11年移動平均値には,上昇傾向と周期的な変動が確認された.そこで,各気温の11年移動平均値を直線近似した後,それぞれの偏差を求めた.その結果,直線近似された最高,平均,最低気温の最低値の長期的な変動傾向は,それぞれ2.2℃/100y,4.5℃/100y,9.7℃/100yと推定された.また,各気温には,およそ20年から25年の周期的な変動が確認された.これらの傾向は,解析期間を変えても確認され,降雨の発生頻度にも同様な傾向が認められた.