著者
堀 成美 中瀬 克己 中谷 友樹 谷口 清州
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.85, no.2, pp.166-171, 2011-03-20 (Released:2015-04-06)
参考文献数
19

Human immunodeficiency virus (HIV) 感染症の拡大防止は感染症施策の重要課題であり,流行のフェーズによって有効な介入法,優先順位が異なる.性感染症症例のパートナー (性的接触者) への検査勧奨は低流行国において特に有効とされているが,本邦では制度としては確立しておらず,臨床においてどの程度実施されているのかが明確ではない.そこで,2007 年 9 月から 11 月にエイズ診療拠点病院の HIV 診療担当診療科に所属する医師を対象に郵送での自記式質問紙調査を実施し,その実態および促進因子・阻害因子の検討を行い,エイズ診療拠点病院診療担当科に所属する医師 513 名のうち 257 名から回答が得られた (有効回答率 49.9%).HIV 診療経験を有する群では「ほぼ全員の患者にパートナー健診の話をする」医師は 66.5%,その結果として新規 HIV 症例を把握した経験を有する医師は 37% であり,合計 185 例の新規症例が把握されていた.パートナー健診を実施する際の課題として,時間の不足,法的根拠等の未整備,標準化された説明資料の不足が把握されたが,性感染症のパートナー健診制度が未整備の状況下においても医師の多くは積極的にパートナー健診に関わっていることが把握された.パートナー健診の拡大のためには,根拠となる法律や学会ガイドライン等の整備,および手法や資料の標準化とそれを可能にする研修プログラムの開発,医師の負担を軽減するための他職種の診療への参加が重要と考えられた.