著者
谷口 清州
出版者
日本神経感染症学会
雑誌
NEUROINFECTION (ISSN:13482718)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.111, 2022 (Released:2022-05-12)
参考文献数
5
著者
菅原 民枝 杉浦 正和 大日 康史 谷口 清州 岡部 信彦
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.82, no.5, pp.427-433, 2008-09-20 (Released:2011-02-07)
参考文献数
8
被引用文献数
3

[目的]新型インフルエンザの対策計画が各国で策定されているが, 未知の感染症であるため, 感染の拡大については数理モデルを用いて検討されている. しかしながら, 数理モデルで検証するためのパラメーターがわからない. そこで本研究は第一に新型インフルエンザを想定して, 個人がどの程度の割合で外出を控える行動をするのかを明らかにし, 第二に外出を控えない行動をする要因を明らかにして, 新型インフルエンザ対策に役立てることを目的とした.[方法]調査はアンケート調査とし, 2007年4月に, 調査会社の保有する全国25万世帯が無作為抽出されているパネルから地域年齢群で層別抽出した2,615世帯とした.調査内容は, 新型インフルエンザ国内発生の場合の外出自粛の選択, 在宅勤務体制, 食料備蓄等とした. 解析は, 外出選択を目的変数とし, 多変量解析を行った.[結果]回答は1727世帯, 有効回答者数は5,381人であった. 新型インフルエンザ国内発生の場合の外出自粛の選択は, 勧告に従わず外出すると思う人が6.7%, 様子を見て外出すると思う人が47.1%, 勧告が解除されるまで自宅にとどまると思う人が46.1%であった.現在災害用に食料備蓄をしている世帯は, 3日分程度が29.9%, 1週間程度が58%, 2週間程度が1.5%, していないが628%であった. また, 今後2週間程度の食料備蓄をする予定の世帯は, 29.6%であった.多変量解析では, 30歳代, 40歳代, 男性, 高齢者の就業者, インフルエンザワクチン接種歴の無い者は, 有意に外出する選択をしていることが明らかになった.[考察]本研究により, 新型インフルエンザを想定した一般市民の外出の選択によって, 数理モデルによる外出自粛の効果が検討できるようになった. 30歳代, 40歳代の「外出する」選択確率が高く, この年齢層に大きな影響を与える要因のひとつとして, 職場の対応があると考えられた. 就業者が外出自粛を選択するような対策として, 企業の経営戦略人事管理面での対策が必要であると示唆された.
著者
具 芳明 岡本 悦司 大山 卓昭 谷口 清州 岡部 信彦
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.85, no.5, pp.494-500, 2011-09-20 (Released:2017-08-11)
参考文献数
20
被引用文献数
1 2

薬剤耐性菌に対する対策として抗菌薬適正使用が強調されている.しかし,抗菌薬使用量とくに外来での抗菌薬使用量を地域単位で把握する試みはこれまでになされていない.そこで,長野県諏訪地域における 2009 年 12 月から 2010 年 5 月の国民健康保険電子レセプトから抗菌薬処方情報を集計するとともに,同地域の主要病院における薬剤耐性菌の頻度を集計し,外来での抗菌薬使用量との関連について検討した. 同地域における国民健康保険被保険者数は 31,505 人(人口の 27.1%)であり,レセプト電子化率は医科 77.4%,調剤 96.0%であった.外来での抗菌薬総使用量は 9.34 Defined Daily Dose(DDD)/1000 被保険者・日であり,MLS(マクロライドなど),ペニシリン以外の β ラクタム系,キノロン系の順であった.海外における先行研究と比べ,外来抗菌薬使用量は少なく,その内容も特徴的であった.大腸菌のキノロン耐性は外来でのキノロン系抗菌薬の使用量から予想される範囲であったが,マクロライド非感受性肺炎球菌の割合は外来での MLS 使用量から予想されるよりも高かった. 国民健康保険電子レセプトを用いて地域での抗菌薬使用量を算出することが可能であった.抗菌薬総使用量およびその内容は,抗菌薬適正使用を含めた薬剤耐性菌対策を推進する上で有用な基礎情報になるものと考えられた.
著者
菅原 民枝 大日 康史 具 芳明 川野原 弘和 谷口 清州 岡部 信彦
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.195-198, 2012 (Released:2012-08-05)
参考文献数
7
被引用文献数
6 7

感染症流行の早期探知のための薬局サーベイランスでは,抗インフルエンザウイルス薬,抗ヘルペスウイルス薬,解熱鎮痛剤,総合感冒薬,抗菌薬の薬効分類で処方件数のモニタリングをしている.近年,抗菌薬耐性菌感染症の問題があり,諸外国では使用量が算出されて国際比較が行われているが,日本全国でのモニタリングはなされていない.そこで,薬局サーベイランスによる1年間の処方件数を用いて日本全国での外来診療における使用量を算出する方法について検討した.抗菌薬処方を5分類(ペニシリン系,セフェム系,マクロライド系,キノロン系,その他)し,それぞれの処方件数を算出し,先行研究の投与量の分布を用いて,使用量を算出した.それを抗菌薬標準使用量(Defined Daily Dose: DDD)を人口1000人の1日あたりで示した.期間は,2010年8月~2011年7月処方の12ヶ月分である.抗菌薬処方件数は,12月が最も多く,8月が最も少なく,種類ではマクロライド系が多かった.抗菌薬標準使用量DDDは,全国で10.16であった.都道府県別では,西日本が高い傾向があった.
著者
菅原 民枝 大日 康史 川野原 弘和 谷口 清州 岡部 信彦
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 : 日本伝染病学会機関誌 : the journal of the Japanese Association for Infectious Diseases (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.85, no.1, pp.8-15, 2011-01-20
参考文献数
14
被引用文献数
2 5

【目的】新型インフルエンザ(2009 インフルエンザA(H1N1))対策では,発生時の早期探知,日ごとの流行状況をモニターするリアルタイムサーベイランスが必要である.そこで本研究は調剤薬局の院外処方せんによる薬局サーベイランスを運用し評価する.抗インフルエンザウイルス剤を処方された人数より,対策に必要な推定患者数を算出しその有用性も検討する. 【方法】全国3,959 薬局から自動的に抗インフルエンザウイルス剤データを収集し,インフルエンザ推定患者数を算出した.サーベイランスの評価は,感染症発生動向調査及び感染症法上届出の新型インフルエンザの全数報告との比較とした.推定患者数の比較は,感染症発生動向調査と岐阜県の全数調査に基づいた推定患者数で行う. 【結果】2009 年4 月20 日から新型インフルエンザ対策として薬局サーベイランスを強化し,翌日7 時には協力薬局および自治体対策関係者に情報提供した.2009 年第28 週から2010 年第12 週までの推定患者数は,9,234,289 人であった.発生動向調査との相関係数は0.992 であった.薬局サーベイランスのインフルエンザ推定患者数,感染症発生動向調査と2 倍強の違いがみられ,岐阜県全数調査で調整した発生動向調査の推定患者数は近似していた. 【考察】薬局サーベイランスは,流行の立ち上がり,ピークの見極め,再度の流行への警戒と長期間にわたってのリアルタイムサーベイランスとして実用的であった.発生動向調査と高い相関関係を示しており,先行指標となった.日ごとのデータによる早期探知,報告基準をかえずに自動的にモニタリングすること,常時運用という態勢は有用であると示唆された.インフルエンザ推定患者数は,発生動向調査の推定患者数の過大推計が示唆され,今後の課題点と考えられた.次のパンデミックを含むインフルエンザ対策として利用可能な手段であり,またインフルエンザに限定せず,アシクロビル製剤による水痘や抗生剤の使用状況のモニタリングといった広い応用が期待される.
著者
谷口 清州
出版者
COSMIC
雑誌
呼吸臨床 (ISSN:24333778)
巻号頁・発行日
vol.2, no.5, pp.e00033, 2018 (Released:2020-10-22)
参考文献数
17

インフルエンザウイルスはヒト世界の感染環のなかでヒトの免疫学的圧力から逃れる方向に連続的に変異し,間断ない感染環と軽症から重症まで広い臨床スペクトルにより,ヒトとの共存においてヒト世界で生存している。一方では動物世界に入ってそこでの感染環で維持されていたインフルエンザウイルスは,再びヒト世界との交差によってヒト世界の感染環に入ると,当初は重症感染が多発することがあっても,再びヒトとの共存の方向に向かっていくものと思われる。
著者
菅原 民枝 大日 康史 川野原 弘和 谷口 清州 岡部 信彦
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.85, no.1, pp.8-15, 2011-01-20 (Released:2015-04-06)
参考文献数
14
被引用文献数
4 5

【目的】新型インフルエンザ(2009 インフルエンザA(H1N1))対策では,発生時の早期探知,日ごとの流行状況をモニターするリアルタイムサーベイランスが必要である.そこで本研究は調剤薬局の院外処方せんによる薬局サーベイランスを運用し評価する.抗インフルエンザウイルス剤を処方された人数より,対策に必要な推定患者数を算出しその有用性も検討する. 【方法】全国3,959 薬局から自動的に抗インフルエンザウイルス剤データを収集し,インフルエンザ推定患者数を算出した.サーベイランスの評価は,感染症発生動向調査及び感染症法上届出の新型インフルエンザの全数報告との比較とした.推定患者数の比較は,感染症発生動向調査と岐阜県の全数調査に基づいた推定患者数で行う. 【結果】2009 年4 月20 日から新型インフルエンザ対策として薬局サーベイランスを強化し,翌日7 時には協力薬局および自治体対策関係者に情報提供した.2009 年第28 週から2010 年第12 週までの推定患者数は,9,234,289 人であった.発生動向調査との相関係数は0.992 であった.薬局サーベイランスのインフルエンザ推定患者数,感染症発生動向調査と2 倍強の違いがみられ,岐阜県全数調査で調整した発生動向調査の推定患者数は近似していた. 【考察】薬局サーベイランスは,流行の立ち上がり,ピークの見極め,再度の流行への警戒と長期間にわたってのリアルタイムサーベイランスとして実用的であった.発生動向調査と高い相関関係を示しており,先行指標となった.日ごとのデータによる早期探知,報告基準をかえずに自動的にモニタリングすること,常時運用という態勢は有用であると示唆された.インフルエンザ推定患者数は,発生動向調査の推定患者数の過大推計が示唆され,今後の課題点と考えられた.次のパンデミックを含むインフルエンザ対策として利用可能な手段であり,またインフルエンザに限定せず,アシクロビル製剤による水痘や抗生剤の使用状況のモニタリングといった広い応用が期待される.
著者
堀 成美 中瀬 克己 中谷 友樹 谷口 清州
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.85, no.2, pp.166-171, 2011-03-20 (Released:2015-04-06)
参考文献数
19

Human immunodeficiency virus (HIV) 感染症の拡大防止は感染症施策の重要課題であり,流行のフェーズによって有効な介入法,優先順位が異なる.性感染症症例のパートナー (性的接触者) への検査勧奨は低流行国において特に有効とされているが,本邦では制度としては確立しておらず,臨床においてどの程度実施されているのかが明確ではない.そこで,2007 年 9 月から 11 月にエイズ診療拠点病院の HIV 診療担当診療科に所属する医師を対象に郵送での自記式質問紙調査を実施し,その実態および促進因子・阻害因子の検討を行い,エイズ診療拠点病院診療担当科に所属する医師 513 名のうち 257 名から回答が得られた (有効回答率 49.9%).HIV 診療経験を有する群では「ほぼ全員の患者にパートナー健診の話をする」医師は 66.5%,その結果として新規 HIV 症例を把握した経験を有する医師は 37% であり,合計 185 例の新規症例が把握されていた.パートナー健診を実施する際の課題として,時間の不足,法的根拠等の未整備,標準化された説明資料の不足が把握されたが,性感染症のパートナー健診制度が未整備の状況下においても医師の多くは積極的にパートナー健診に関わっていることが把握された.パートナー健診の拡大のためには,根拠となる法律や学会ガイドライン等の整備,および手法や資料の標準化とそれを可能にする研修プログラムの開発,医師の負担を軽減するための他職種の診療への参加が重要と考えられた.
著者
徳田 浩一 五十嵐 正巳 山本 久美 多屋 馨子 中島 一敏 中西 好子 島 史子 寺西 新 谷口 清州 岡部 信彦
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 : 日本伝染病学会機関誌 : the journal of the Japanese Association for Infectious Diseases (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.84, no.6, pp.714-720, 2010-11-20
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

2007 年3 月初旬,練馬区内の公立高校(生徒数792 人)で麻疹発生が探知された.同校は,練馬区保健所及び東京都教育庁と連携し,ワクチン接種勧奨や学校行事中止,臨時休業を実施したが発病者が増加した.対応方針決定に詳細な疫学調査が必要となったため,同保健所の依頼で国立感染症研究所実地疫学専門家養成コース(Field Epidemiology Training Program : FETP)チームが調査支援を実施した.全校生徒と教職員を対象として症状や医療機関受診歴などを調査し,28 人の症例が探知された.麻疹未罹患かつ麻疹含有ワクチン(以下,ワクチン)未接種者に対する電話でのワクチン接種勧奨や保護者説明会,緊急ワクチン接種等の対策を導入し,以後新たな発病者はなかった.症例のうちワクチン接種群(n=12)は,最高体温,発熱期間,カタル症状(咳,鼻汁,眼充血)の発現率が,未接種群(n=13)より有意に軽症であった(p<0.05).過去における1 回接種の効果を評価したところ,93.9%(95%CI : 87~97)(麻疹単抗原93.5%,MMR 94.3%)であり,製造会社別ワクチン効果にも有意差はなかった.1 回接種群(n=838)に発病者があり,2 回接種群(n=21)に発病者がないことから,1 回接種による発病阻止及び集団発生防止効果の限界が示唆された.集団発生時の対策として,文書配布のみによる注意喚起や接種勧奨では生徒や保護者の接種行動をはじめとした実際の感染対策には繋がり難く,母子健康手帳など記録による入学時の感受性者把握やワクチン接種勧奨,麻疹発病者の早期探知など,平時からの対策が必要であり,発病者が1 人でも発生した場合,学校・行政・医療機関の連携による緊急ワクチン接種や有症者の早期探知と休校措置を含めた積極的な対応策を早急に開始すべきと考えられた.
著者
谷口 清州
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.370, 2007

新型インフルエンザによるパンデミックは、20世紀に入って以降、1918-19年、1957-58年、1968-69年と3回が記録されており、それぞれ、スペインインフルエンザ(原因ウイルスはA/H1N1亜型)、アジアインフルエンザ(A/H2N2亜型)、香港インフルエンザ(A/H3N2亜型)と呼ばれているが、その後、2005年現在までパンデミックの発生はみられていない。インフルエンザに関する科学的知見が蓄積されるにつれ、再びパンデミックがおこることが懸念され、1993年にはドイツでの第7回ヨーロッパインフルエンザ会議、また1995年に米国でのパンデミックインフルエンザ会議での報告をはじめとして、多くの専門家から「人の世界において流行する新型インフルエンザウイルスが早ければ数年のうちに出現する」との警告が出されていた。世界保健機関(WHO)は、1999年4月に、Influenza pandemic preparedness plan. The role of WHO and guidelines for national or regional planning. Geneva, Switzerland, April 1999を発表し、各国でPandemic Planを策定することを勧告し、2005年5月には、WHO global influenza preparedness plan. The role of WHO and recommendations for national measures before and during pandemics.(グローバルインフルエンザ事前対策計画)を発表してその具体的な方針を示したことから、世界各国のパンデミックプランの策定は促進された。そして、近年の鳥インフルエンザのヒトへの感染事例の多発を受けて、現在世界では、H5N1亜型の鳥インフルエンザウイルスがヒト世界に侵入してパンデミックを起こすのではないかという目前の脅威に対して莫大な予算をかけて準備を進めており、本邦においても、2007年度末に新型インフルエンザ専門家会議が、サーベイランス、公衆衛生対策、ワクチン及び抗ウイルス薬、医療、情報提供・共有の5つの部門別に設置され、2007年3月にそれぞれのガイドラインとしてまとめられた。もちろん、この背景にはこれまでの歴史的な背景からH5N1亜型のような高病原性の鳥インフルエンザウイルスはヒト世界には侵入しないのではないかと議論も理解した上で、これが近い未来にパンデミックを起こさなかったとしても、他の亜型による発生の危険性は依然として存在する。また、これに対して準備を進めることは、大地震、ハリケーン、津波などの自然災害、バイオテロなどの人為災害、すべての健康危機から国民を守ることにつながるという国家戦略としての危機管理の考え方がある。ここでは、歴史的なLesson Learnedや世界の対応状況をもとに、パンデミック対策の戦略を考えてみたい。
著者
新井 智 鈴木 里和 多屋 馨子 大山 卓昭 小坂 健 谷口 清州 岡部 信彦
出版者
The Japanese Association for Infectious Diseases
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.79, no.3, pp.181-190, 2005
被引用文献数
1

ヒトエキノコックス症は, 1999年4月から施行された感染症法に基づく四類感染症, 感染症発生動向調査全数報告疾患に規定され, 国内患者サーベイランス (感染症サーベイランス) が実施されている.1999年4月から2002年12月までの感染症サーベイランスの結果から, 単包虫症が3例 (27~81歳, 中央値55歳), 多包虫症51例 (15~86歳, 中央値64歳) が報告されている.多包虫症については, 年齢が上昇するにつれて報告数も増加し, 71歳以上の報告が最も多かった.3例の単包虫症は全て本州からの報告で推定海外感染例として報告された.全報告症例のうち症状を伴っているとされた症例は17例であった.感染経路が明らかであった症例は認められなかった.多包虫症は, 51症例中50例までが北海道の保健所からの報告であった.北海道を6地区に分類し症例を地域ごとに集計したところ, 報告数は石狩・胆振・後志地区 (20例), 根室・網走・釧路地区 (15例) が多かったが, 住民人口10万人あたりの報告数とすると, 根室・網走・釧路地区 (2.13/10万人) についで, 宗谷・留萌地区 (2.05/10万人) の順であった.これらの結果は, 数年以上前の感染発生状況を示しており, 1999年4月から2002年12月までのサーベイランス実施時期の感染発生状況は不明であった.