著者
日高 庸晴 市川 誠一 木原 正博
出版者
The Japanese Society for AIDS Research
雑誌
日本エイズ学会誌 (ISSN:13449478)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.165-173, 2004-08-20 (Released:2010-07-21)
参考文献数
21
被引用文献数
2

目的: ゲイ・バイセクシュアル男性におけるライフイベントの実態, HIV/STD関連一般知識およびHIV感染リスク行動と精神的健康の関連を明らかにすること。対象および方法: 184人のゲイ・バイセクシュアル男性を対象にスノーボールサンプリング法による無記名自記式質問紙調査を実施し, 男性と性交経験のあるゲイ・バイセクシュアル男性149名 (有効回答率81.0%) を分析対象とした。結果: 「男性に性的魅力を感じる」「性的指向などを自覚する」などのゲイ・バイセクシュアル男性特有のライフイベントは中学生ー高校生の間に集中して生じていることが示唆された。また, HIV/STD関連一般知識は比較的浸透していた。コンドーム常用率はオーラルセックスでは0%, アナルインターコース挿入のみ群で34.6%, 被挿入のみ群で33.3%, 両方経験群で17.1%とかなり低率であった。HIV感染リスク行動と心理的要因の関連は, 被挿入のみ群と両方経験群においてコンドーム非常用群は常用群に比べ精神的健康度が低い傾向であった。また, ロジスティック回帰分析ではコンドーム常用と自尊心尺度得点との間に有意な関連が認められた。結論: 本研究の対象集団にはコンドームの使用促進が必要であり, そのためには知識の普及とともに心理的問題をも改善するような予防介入策の実施が求められる。リスク行動関連要因をさらに明らかにするためには, 研究参加者を増やした研究の実施が必要である。
著者
山崎 浩司 木原 雅子 木原 正博
出版者
The Japanese Society for AIDS Research
雑誌
日本エイズ学会誌 (ISSN:13449478)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.121-130, 2005-05-20 (Released:2010-07-21)
参考文献数
23

目的: 若者に対するエイズ予防介入プロジェクトの一環として, 地方A県の女子高校生が, なぜ性交渉時にコンドームを使わないようになってしまうのかを質的研究法を用いて分析する.対象と方法: A県の女子高校生41名に対し, フォーカス・グループ・インタビューを8グループ実施した. 対象者として, 交際相手を有すると思われる友人同士6名前後を, スノーボール・サンプリングによりリクルートした. 分析は修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを使った.結果: 対象者は「治る性病より直らない妊娠」をより心配しているにも係わらず, 実際のコンドーム「使用は相手次第」であり, 結果的に膣内・膣外射精を繰り返し, それでも簡単には妊娠しないことを経験的に学習して「独自の避妊意識」を形成し, コンドーム不使用を定着させていた. また, 交際相手が社会人の場合は「妊娠してもかまわない」と考えたり, コンドーム購入を恥ずかしさ等による「購入阻害」要因により回避したり, 不快経験から「コンドーム嫌悪」に陥ったりして, 不使用に至っていた. さらに, 対象者が仮にSTDに関心を抱いても, 入手できる「予防学的情報の不足」から, コンドームを使わない「独自の予防認識」を形成し, やはり不使用に終っていた.結論: コンドーム不使用における相互作用プロセスを含む若者の多様な性文化の把握なしでは, 包括的なエイズ予防法を開発しがたい可能性が示唆された.
著者
松田 重三
出版者
The Japanese Society for AIDS Research
雑誌
日本エイズ学会誌 (ISSN:13449478)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.108-115, 2002-08-20 (Released:2010-07-21)
参考文献数
37
被引用文献数
1
著者
風間 孝 河口 和也 菅原 智雄 市川 誠一 木原 正博
出版者
The Japanese Society for AIDS Research
雑誌
日本エイズ学会誌 (ISSN:13449478)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.13-21, 2000-02-20 (Released:2010-07-21)
参考文献数
9

目的: HIV感染が増加している男性同性愛者のHIVについての知識と性行動を明らかにすることを目的とした。対象と方法: 東京でのエイズ予防啓発イベントおよびサークル参加者 (301人) に質問票調査を実施し、有効回答数255 (84.7%) を得た。結果: 性的空間利用者 (84人) のアナルインターコース経験率は40.5%で、性的空間非利用者 (151人) の19.2%に比して有意 (p<0.05) に高かったが、 コンドーム使用には差がなかった。また、性的空間利用者でコンドームを常時携帯する割合 (22.6%) は有意 (p<0.05) に高いものの、コンドーム使用の意思を相手に必ず伝えられる割合は有意 (p<0 .05) に低かった。エイズへの関心について能動的関心層 (193人)、受動的関心層 (21人)、無関心層 (25人) を比較したところ、インターコースの経験率 (各、32.1%、9.5%、12.0%) は能動的関心層が高い傾向にあったが、コンドーム使用では差がなかった。HIV感染者との交流群 (60人) は感染者との非交流群 (185人) に比べて一般知識の正答率が高かった。また、感染者との交流群は、インターコースの経験率 (45.0%) およびその際のコンドームの使用割合 (77.8%) がともに有意 (p<0.05) に高かった。結論: コミュニケーション重視型の啓発と、HIV感染者を孤立させない社会環境をつくる重要性が示唆された。
著者
品川 由佳 兒玉 憲一
出版者
The Japanese Society for AIDS Research
雑誌
日本エイズ学会誌 (ISSN:13449478)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.43-48, 2005-02-20 (Released:2010-07-21)
参考文献数
22
被引用文献数
1

目的: 男性臨床心理士 (以下CP) の男性同性愛者に対するクリニカル・バイアス (以下, CB) の有無を検討するため, 男性CPの男性クライエント (以下, CL) に対する態度やアセスメントが, CLの性的指向, CPの性役割態度によりどのように異なるかを検討した。方法: 無作為抽出された男性CP200名を対象に, 質問紙調査を行った。質問票にて, ある男性CLについての模擬事例文を呈示し, そのCLに対する臨床的判断や態度についての尺度に回答を求めた。模擬事例文の中で, CLの性的指向を操作した (同性愛/異性愛) 。その後, 回答者の性役割態度におけるリベラル度を尺度で測定した。結果: 77名の有効回答数 (有効回答率38.5%) が得られた。回答者の性役割態度尺度の得点分布は, リベラル志向的な方向に偏っていた。分散分析の結果, CPの性役割態度の主効果及び交互作用はみられず, CLの性的指向の主効果のみがみられた。具体的には, CPの性役割態度に関わらず, 異性愛のCLより同性愛のCLに対し, ネガティヴな反応がみられた。考察: 予想に反し, CP側の性役割態度要因が関連したCBは確認できなかった。しかしそれはわが国でCP側の要因によるCBがないことの現われではなく, 使用した尺度, 刺激呈示法などの問題に起因する可能性があり, より適切な研究手法の開発の必要があると考えられた。