著者
中田 久美子 小野 千紘 吉田 薫 吉田 雅人 吉田 学 山下 直樹
出版者
日本繁殖生物学会
雑誌
日本繁殖生物学会 講演要旨集 第108回日本繁殖生物学会大会
巻号頁・発行日
pp.OR1-11, 2015 (Released:2015-09-15)

【目的】現在,テオフィリン等の薬剤がヒト不動精子の運動性回復に使用されているが,顕微授精の際に刺入精子とともに卵子細胞内への薬剤が混入することが危惧されている。一方,水素分子は細胞毒性の高い活性酸素種を選択的に還元する作用を有し,副作用が極めて少ないことが知られている。本研究は,解糖系と電子伝達系によるATP産生の阻害剤を用いて,ヒト精子の運動性に対する水素分子の作用機序を明らかにすることを目的とした。 【方法】インフォームドコンセントの得られた,治療後廃棄予定の精子(n=26)を用いた。本実験では85%以上の運動性を有する正常精子を材料とした。その精子をTYB(Test-Yolk-Buffer,JX日鉱日石エネルギー)にて凍結,融解を2回繰り返し,2回目の融解後の洗浄にはグルコース非添加のTYH(G-N区)を使用し,100μlに調整した後,室温に静置した。24時間後,再度遠心処置を行い,ペレットを3等分にし,50μlのグルコース添加のTYH(G+N区),水素分子含有のグルコース非添加のTYH(G-H区)とG-N区にそれぞれ混和した。また,一部のG-N区およびG-H区に40μMのアンチマイシンAを添加した(G-N-A区,G-H-A区)。各過程で,マクラーチャンバーおよびSCAにて運動率および運動性を測定した。 【結果】G-N,G+N,G-H区の運動率はそれぞれ,2.2%,9.7%,8.3%であり,G+N,G-H区はG-N区よりも有意に高かった(P<0.01)。G-N-A区の運動率は0.07%であるのに対し,G-H-A区は1.8%であり,有意に高かった(P<0.05)。 【考察】グルコース非添加かつ電子伝達系阻害剤の存在下で水素分子は,ヒト精子の運動性を有意に改善させた。これらの結果は,水素分子は精子ミトコンドリアの電子伝達系のATP産生を促進する効果があることが示唆している。
著者
木原 裕貴 大田 敏之 福原 里恵 藤原 信 岩永 甲午郎 中田 久美子 本田 茜 古田 靖彦 大津 一弘 亀井 尚美 花見 亮治
出版者
The Japanese Society for Pediatric Nephrology
雑誌
日本小児腎臓病学会雑誌 = Japanese journal of pediatric nephrology (ISSN:09152245)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.71-76, 2007-04-15
参考文献数
20
被引用文献数
3 3

症例は日齢3の男児。血性嘔吐,腹部膨満,腹腔内遊離ガスを主訴とし,著明な高アンモニア血症,高エンドトキシン血症を認めた。持続的血液濾過透析を施行し,アンモニア値は減少傾向となったが,低血圧は改善しなかった。エンドトキシン吸着療法を施行したところ,血圧の上昇とともに,全身状態は改善し,根治術へつなげることができた。開腹所見は胃破裂であった。体外循環に伴う問題はなく,安全に施行することができた。成人領域においては,本治療法は広く行われているが,新生児では普及するにいたっていない。本症例において有効であったエンドトキシン吸着療法について,その機序と今後の適応基準を考察した。