著者
中田 康隆 日置 佳之 永松 大 小口 高
出版者
日本景観生態学会
雑誌
景観生態学 (ISSN:18800092)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.23-33, 2021 (Released:2022-03-03)
参考文献数
39

かつては日本列島にも多くの海岸砂丘が存在していた.しかしながら,これらの海岸砂丘は開発され,縮小と消失が進行している.鳥取県下には鳥取砂丘や北条砂丘を代表とした大小さまざまな海岸砂丘が存在する.本研究では,空中写真,旧版地形図,絵図などの時系列地理情報をGISにより統合化し,鳥取県における1818年(文政元年)から2000年(平成12年)までの海岸砂丘の土地被覆の変遷を定量的に把握した.また,植生に焦点を置き,生育地としての海岸砂丘の歴史的変遷を検討した.1818年時点の海岸砂丘(砂に覆われた無植生の裸地,及び草本や矮小低木に被われた砂が移動する範囲)の面積は大・中規模砂丘で1,893 ha,小規模砂丘で115 haであった.しかし2000年には海岸砂丘の面積が大・中規模砂丘で141 ha,小規模砂丘で25 haになり,残存する海岸砂丘は海浜と前砂丘の一部のみとなった.このような海岸砂丘の他の土地被覆への転換は,主に砂防林の造成に伴う海岸砂丘の固定,畑地の造成,市街地の拡大で生じた.自然性が高い海岸砂丘植生の指標である成帯構造の成立には,海岸砂丘の奥行が100 m以上必要であり,1818年にはこれが満たされていた場所が多かった.この状況は1900年頃まではおおよそ維持され,一部の海岸砂丘では,種の多様性を形成する丘間湿地も確認された.丘間湿地は1952年までにほぼ消失したが,少なくとも大・中規模砂丘では100 m以上の奥行が確保され,成帯構造が成立していたと考えられる.しかし1974年には,ほぼすべての海岸砂丘で奥行が部分的に100 m以下となり,2000年には100 m以上の奥行を持つ場所が激減した.一方で,断片的に奥行が確保されている場所では,ハマナスやハマウツボ等の安定帯に生育する希少種が確認され,成帯構造も成立している.したがって,これらの場所の保護区指定や,動的な環境の部分的復元には意味があると判断される.
著者
中田 康隆 速水 将人 輿水 健一 竹内 史郎 蝦名 益仁 佐藤 創
出版者
日本景観生態学会
雑誌
景観生態学 (ISSN:18800092)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.43-52, 2020 (Released:2021-02-02)
参考文献数
42
被引用文献数
4 5

北海道胆振東部地震により森林域で発生した崩壊跡地を対象に,リアルタイムキネマティック-グローバルナビゲーションサテライトシステム(RTK-GNSS)が搭載された小型UAV(Phantom 4 RTK)とSfM多視点ステレオ写真測量を用いた3次元計測の測位精度の実証試験を行うとともに,地形変化の解析を行った.実証試験は,42,500 m2の崩壊跡地を対象に,2019年3月12日に二周波RTK-GNSSが搭載された受信機(ZED-F9P)を使用し取得した11地点の座標データ(検証点間の最大高低差は28 m)を検証点として,RTK-UAVによる空撮画像から構築した3次元モデルから検証点の位置座標を抽出し比較した.地形変化は,2019年3月12日と同年4月23日の2時期にRTK-UAVによる空撮と解析を同様の方法で実施し,数値表層モデル(DSM)の差分解析から地表面の標高変化の把握を試みた.その結果,各検証点とモデルの平均位置精度は,水平・垂直方向で0.060 m~0.064 mであることがわかった.また,植物の生育基盤としての表層土壌の動態や安定性をモニタリングする上で重要となる垂直方向の最大誤差は0.108 mであった.差分解析の結果,-0.1 m以上+0.1 m未満標高が変化した箇所が86.86%と最も多かった.次に,-0.5 m以上から-0.1 m未満標高が変化した箇所が11.36%と多かった.特に侵食域は,崩壊跡地の辺縁部で多く確認された.これらの結果から,標定点設置が困難な森林域の崩壊跡地の斜面表層の変化(1ヶ月間)について,±0.1 mの誤差範囲内で観測可能であることが示唆された.
著者
中田 康隆 速水 将人 蓮井 聡 佐藤 創
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.131, 2020

<p>2018年9月6日, 北海道胆振東部地方を震源とする最大震度7の地震が発生し, 約3200箇所の稠密な林地崩壊が確認され, 森林被害面積は約4300 haに及んだ.現在, 崩壊跡地の林業復旧や森林の公益的機能の回復を目的とした植生の早期回復が求められている. 崩壊跡地の植生の早期回復を図るには, 植物の生育基盤となる表層土壌の現況や動態を把握し, 安定性を正確に評価する必要がある.本研究では厚真町の高丘地区と東和地区の崩壊跡地の斜面を対象に, RTK(Real-Time Kinematic)-UAV(Unmanned Aerial Vehicle)とSfM(Structure-from-Motion)多視点ステレオ写真測量を用いて, 測位精度の実証試験と地形解析を行った. 実証試験の結果, 各検証点と数値表層モデルの平均位置精度は, 水平・垂直方向で0.060 m~0.064 mであることがわかった.2019年4月から10月までの地形変化の解析結果では, 高丘地区は東和地区よりも斜面表層の変化量が多かった. これは, 高丘地区の方が斜面表層を構成する土砂や植生が多く残っていることが要因であると考えられる. また, 崩壊斜面表層の変化の特徴としては, 雨裂に近いほど侵食量が多く, さらに崩壊地辺縁に近いほど侵食量が多いことが示された.</p>