- 著者
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竹内 史郎
- 出版者
- 日本語学会
- 雑誌
- 日本語の研究 (ISSN:13495119)
- 巻号頁・発行日
- vol.1, no.1, pp.2-17, 2005-01
本稿は,中世室町期を下限とし,サニ構文の成立,その意味タイプの拡張および接続助詞サニ等について論じる。以下具体的に示す。1サニ構文は,上代語のサ語法や,キニ(形容詞準体句+ニ)やクニ(ク語法+ニ)といった接続形式等を考慮すれば,「名詞節+主節の背景を提示する助詞ニ」という方法で成立したと説明でき,接続部サニは別個の形態素の連続と考えられる。2 10世紀以前のサニ構文は,「内的徴証-有意志文」という意味タイプ(以下原タイプ)に集中する。当初のサニ構文は意味類型の対応によって原因理由文であることが特徴づけられていた。3ところが,11世紀以降時代を下るにつれて,10世紀以前の意味タイプにおける制約が緩んでくる。すなわち,原タイプの勢力が維持されつつも,「外的徴証-有意志文」などの種々の意味タイプへの拡張が例外的に生じた。また,形容詞語幹のみならず形容動詞語幹にサニが下接するようになった。4 15世紀には,原タイプと拮抗する形で「外的徴証-有意志文」という意味類型の対応を表すタイプが定着した。主にこのことを要件として,別個の形態素の連続であったサニは単一形態として再分析され,形態素間の境界が消失した結果,原因理由の接続助詞になったと認められる。ここにおいて,サニ構文は原因理由の意味をもつ接続形式による原因理由文となった。