著者
南 裕子 新道 幸恵 中西 睦子 山本 あい子 片田 範子 井伊 久美子 高橋 章子 中島 紀恵子 中山 洋子
出版者
兵庫県立看護大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2000

本研究の目的は、災害発生後の医療・看護ケア提供に必要な情報を蓄積し、かつ稼動可能な看護支援提供システムを構築することである。そのために研究活動は、1.資料・文献班2.災害拠点病院の現状調査、3.教育班、4.ネットワーク活動班、5.全体活動、で進め、以下の新たな知見を得た。1)災害関係資料・文献の収集・分析の結果、1995年発生した阪神・淡路大震災を境に質的・量的な変化が見られた。1995年以後は、被災者の体験や災害時の医療・看護の実態報告、マニュアル・テキスト、調査報告・研究論文等被災者支援を中心とした出版が増加していた。しかし、看護の視点で報告、考察したものは未だ少なかった。2)災害の種類や発災からの時期別等で検索できる災害看護文献検索システムを構築し、ホームページ上で公開した。3)看護職の需要が高い文献を調査し、「こころのケア」「発災時」各パッケージを作成した。4)災害拠点病院の看護部に対し災害への備えとしての準備状況を調査した。結果、看護部独自のマニュアルを作成している施設は半数に満たず、各施設の看護部間での情報共有が必要と考えられた。5)災害看護教育プログラムの開発に向け、看護教育者・臨床家と情報交換しつつカリキュラムモデルを作成した。6)災害時の看護ニーズを把握するために、災害発生地域の初期調査、初動調査、中・長期フォローアップ調査を実施し、災害時の看護ニーズアセスメントツール(精錬版)を作成した。7)ネットワーク活動メンバー対象の研修会の開催、研究成果の発表と国内外の看護職との情報交換を目的に、情報交換研修会、アジア諸国を中心とした災害看護国際会議を企画主催した。これらの研究成果から、災害看護関係情報の基地整備の必要性、国内外の看護職が災害看護ネットワークを構築することの有用性、災害看護教育の早期実施、普及の重要性が示唆された。
著者
中西 睦子
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.80-88, 1992-11-30 (Released:2017-04-27)
被引用文献数
1

すでに大きな社会的論議の的になっている生命倫理的諸問題について、看護職がこれをどのように捉えているかを明らかにするため、アンケート調査を行なった。調査は無記名回答方式で、看護職指導層を対象とし、調査用紙は、1) 脳死、2) 臓器移植、3) がん告知、4) インフォームド・コンセント、5) 患者の人権についての憂慮、6) 回答者自身の体験の6項目で構成した。回答者は合計830名(回収率77.5%)で、その内訳は、看護管理者481名、スタッフ200名、看護教師140名(職位無回答9名)。おもな結果を示すと、脳死を人間の死として認める者と、現時点では認めない者がともに48%であった。後者は、"脳死判定の公正さ信用できぬ" をそのおもな理由としていた。臓器移植の推進に無条件に賛成した者は14%で、条件つき賛成派が77%であった。そのおもな理由とされているもののうち上位3位は、1) 医師の倫理教育の徹底、2) 大学等の倫理委員会が公正に機能すること、3) データをきちんと公開することであった。がん告知に無条件に賛成した者はわずか10%であったが、条件つき賛成が85%みられ、そのうち70%が"患者が自立していること"をおもな条件としていた。また、インフォームド・コンセントの推進については、56%の対象者が賛成していた。このほか、患者の人権についての憂慮、回答者自身の体験についての回答内容を分析し、あわせてその意味するところを考察した。