著者
鶴 宏史 中谷 奈津子 関川 芳孝 Hirofumi TSURU Natsuko NAKATANI Yoshitaka SEKIKAWA
雑誌
教育学研究論集 (ISSN:21877432)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.1-8, 2016-03-20

本研究の目的は,保育ソーシャルワーク(以下、保育SW)に関する研究のレビューを通して,保育所における保護者支 援の課題を明確にすることである。保育SW に関する35 本の文献を,保育SW の機能,保育所内での組織的対応の有無,保育SW の対応課題に生活課題までを含むか,保育SW の基礎となる援助理論,の4 つの枠組みで分析した。その結果,保育SW の主な機能は相談援助機能と連携機能である点,組織的対応の重要性が指摘されていたが具体性には乏しい点,子育て以外の生活課題への言及はあったが具体的内容は不明であった点,基礎となる援助理論としてジェネラリスト・アプローチとエコロジカル・アプローチの重要性が指摘された点が明らかになった。今後の保護者支援の課題として,面接技術及びアセスメント技術の習得,連携の具体的方法の明確化,保育所内の組織的対応の具体化,継続的な現任者への研修体制の確立が挙げられた。
著者
中谷 奈津子
出版者
一般社団法人 日本保育学会
雑誌
保育学研究 (ISSN:13409808)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.319-331, 2014-12-25 (Released:2017-08-04)
被引用文献数
4

本研究は母親のエンパワメントの観点から以下のことを明らかにする。地域子育て支援拠点事業の利用を通して母親にどのような変化がみられるか,母親の変化は属性や支援者の子育て支援観,母親規範意識などと関連するか,支援者の子育て支援観は支援者自らの母親規範意識と関連しないのか。全国の地域子育て支援拠点事業に協力を依頼し支援者と利用者を対象にアンケート調査を行った。調査の結果,拠点事業の利用によって,母親は育児負担の軽減,育児情報の取得と活用,仲間づくりを行っていることがわかった。母親の変化は支援者の子育て支援観よりも母親規範意識に影響される傾向にあること,支援者の母親規範意識は支援者自らの子育て支援観に影響を及ぼしていることが明らかとなった。
著者
中谷 奈津子 森田 美佐
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究でいう「育児をめぐる迷惑意識」とは、社会全体が抱きがちな育児に対する迷惑意識のことをいう。「育児をめぐる迷惑意識」の実態と形成要因、またその意識が育児を担う人々に与える影響について明らかにし、育児不安や出生意欲との関連も検討した。自分の子育てについて、配偶者や祖父母、迷惑をかけたと回答するものは多く、職場や公共の場での迷惑も指摘された。育児をめぐる迷惑意識は、育児不安や出生意欲と関連しており、育児をめぐる迷惑意識を規定する要因として母親規範意識や世間の目が考えられた。