著者
安藤 喜仁 菱田 良平 橋本 律夫 中野 今治
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.76-81, 2014 (Released:2014-03-25)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

要旨:症例は67 歳右利き男性.右前脈絡叢動脈閉塞により外側膝状体近傍に限局した脳梗塞が生じ,左同名半盲,左半側空間無視と構成障害,漢字に強い失書を呈した.失語はみられなかった.過去に外側膝状体を中心とした病巣で半側空間無視が出現した報告は少なく,さらに構成障害と失書も合併したものは1 例のみであった.また,いずれの既報告例においても外側膝状体病変に加えて視床や後頭葉などを含む広範な部位に病変が認められており,本例の損傷領域はより限局していた.SPECT 画像で右後頭葉から頭頂葉の一部にかけて広範囲に血流低下が認められたことより,本例の半側空間無視と構成障害は主に右頭頂葉の機能障害に由来し,失書は主として構成障害に基づくものと考えられた.本例の症候は右前脈絡叢動脈領域の梗塞によるものとして非常に興味深いと思われた.
著者
宮腰 夏輝 板東 充秋 清水 俊夫 川田 明広 松原 四郎 中野 今治
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
pp.cn-000618, (Released:2015-05-22)
参考文献数
14

症例は21歳の女性.先行感染後,発熱,頭痛,痙攣発作を生じ入院.前向性健忘,逆向性健忘が残存したが,それ以外は生活に不自由のない状況であり痙攣再発もなかった.髄液で軽度の細胞数増加あり.脳波では左側頭部起源がうたがわれる鋭波をみとめた.入院5日目に初対面の医師や看護師,入院中の患者に対し会ったはずがないのに以前にみたことがあるように思うと訴え,この症状は約20日間持続した.既知の相貌に関する異常はなく,相貌失認もなかった.心理検査では言語性の記憶障害がうたがわれ,退院時も逆向性健忘は残存した.類例の検討では言語性記憶障害例もあるが記憶障害のない例もある.左側頭葉病変とhyperfamiliarityには関連が示唆される.