著者
郝 愛民 丸居 篤 原口 智和 中野 芳輔
出版者
九州大学
雑誌
九州大学大学院農学研究院学芸雑誌 (ISSN:03686264)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.339-346, 2006-10

本研究は、中国カルチン沙地の土地利用状況と土壌の理化学性との関与を明らかにするため、農牧交錯区である奈曼旗において砂地、従来の草原地と灌木地、砂地をポプラで緑化した林地、および草原地を農地に開墾した畑地と水田の植物種分布と土壌理化学性を調査した。各調査地で、植生改善の回復現状は人工植被から複雑な灌木群落へ変遷する過程がみられた。理化学性では、含水比と有機物含有量の3層および陽イオン交換容量の表層では、水田>畑地>林地>草原地>灌木地〉砂地の順に低くなっている。pHは採取土壌の全てが8.04-10.29とアルカリ土壊であった。ECはとくに畑地表層部において0.59mS/cmと高かった。土壌の比重は2.55g/cm3から2.68g/cm3と大差は認められなかった。それぞれの地点で採取した土壌の構成粒子径の比較では、水田と畑地で粘土が7%、粘土からシルトが約50%で残りは粗砂であった。また、修復された林地では約70%が微細な砂土で残りは粗砂であり、灌木地、草原地、砂地では約40%が細砂で残りは粗砂であった。保水性については、有効水分量をpF1.8-pF4.2として深度0-30cmの砂地、灌木地、林地の体積含水比の比較によると、それぞれ3%、8%、17%と植生回復の効果が認められた。土地利用の際に利用状況と理化学性の関与に注意すべき点を把握するのは、カルチン沙地の生態環境の保全および農牧業の可持続的発展に不可欠であることが示唆された。
著者
泉 完 杉本 亜里紗 丸居 篤 東 信行
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B1(水工学) (ISSN:2185467X)
巻号頁・発行日
vol.74, no.5, pp.I_433-I_438, 2018 (Released:2019-12-05)
参考文献数
18

天然稚アユの河川遡上初期に合わせて当稚魚の臨界遊泳速度を青森県岩木川河口から約11kmにある芦野頭首工地点の現地で計測した.魚道地点の河川敷に小型の長方形断面水路(幅15cm・高さ15cm・長さ100cm)を設置し,水路には断面平均流速9~75cm/sの範囲で河川水を流し,体長5.9~9.9の稚魚を遊泳させた.計測中の水温は10.6~18.5℃で,推定された60分間臨界遊泳速度は,19~49cm/sであり,体長との間に正の相関が認められた.また,体長(BL)の倍数の速度で表すと,3.1~6.5BL/s,(平均4.8BL/s,標準偏差1.0)の速さとなった.計測時の水温の違いによる60分間臨界遊泳速度への影響は少ないと推察された.
著者
泉 完 清水 秀成 東 信行 丸居 篤 矢田谷 健一
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会論文集 (ISSN:18822789)
巻号頁・発行日
vol.86, no.1, pp.II_1-II_7, 2018 (Released:2018-01-12)
参考文献数
31

水田魚道を含む生態系に配慮した水路の設計に資するメダカの遊泳能力を明らかにすることを目的として,ミナミメダカの突進速度に関する実験を屋外で実施した.その結果,体長2cm台のメダカについて,1)突進遊泳速度は33cm・s-1(管内代表流速17cm・s-1)~58cm・s-1(管内代表流速32cm・s-1)で,平均体長の14~24倍・s-1に相当した.2)メダカは突進遊泳を繰り返して前進し,突進遊泳区間の瞬間遊泳速度の平均値は,突進遊泳速度の1.03倍でほぼ同じであることがわかった.また,瞬間遊泳速度で約5cmずつ前進することがわかった.3)管内代表流速が20~30cm・s-1台の流速条件では,65%以上の個体が30cmまでの距離を遊泳することがわかった.
著者
丸居 篤 鹿野 翔 凌 祥之
出版者
システム農学会
雑誌
システム農学 (ISSN:09137548)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.155-160, 2013-10-10 (Released:2015-06-04)
参考文献数
15
被引用文献数
1

福岡県旧前原市においてイノシシ被害に関するアンケート調査(対象面積11,202ha、31 農区、農家1,069 戸)を実施し、耕作放棄地とイノシシ被害との関係を解析した。アンケート内容は、記入者の営農情報、被害に関する情報、対策の有無であり、有効なアンケートの回収率は79.6%であった。主な被害作物は稲が全体の53%を占め、続いて野菜16%、ミカン13%、イモ5%、その他が13%であった。被害農地と土地利用との相関解析を行った結果、耕作放棄地の存在とイノシシ被害との間に有意な正の相関がみられた。GIS(地理情報システム)を用いた解析より、被害農地の92.3%が山林から100m以内に存在し、山林からの距離が被害要因の1つとなっていることが明らかとなった。また、被害農地の54.9%が耕作放棄地から100m以内に存在し、耕作放棄地との近接性も影響する可能性が考えられた。さらに、500mおよび1,000mメッシュを用いた相関分析から、イノシシ被害回数と放棄地面積の間に有意な正の相関があることが明らかとなった。