著者
小山 玲音 出村 幹英 野間 誠司 林 信行 原口 智和 宮本 英揮 笹川 智史 龍田 典子 上野 大介
出版者
公益社団法人におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.226-232, 2021-07-25 (Released:2021-11-14)
参考文献数
28
被引用文献数
3

気生藻類の一種であるスミレモTrentepohlia aurea (Linnaeus) Martiusは,スミレのような“におい”があることが知られている.スミレモのにおいの有無や強弱には生育地域や場所による多様性の存在が示唆されるが,これまでは定性的な観察が中心であった.本研究ではスミレモのにおい物質を同定することで,スミレモのにおいに関する基礎的な知見を提供することを目的とした.におい物質の同定には,におい嗅ぎガスクロマトグラフィー(GC-O)を含む“におい分析システム”を活用した.分析の結果,“良い香り”として特徴的なにおい物質であるα-テルピネンと2-ペンチルフランを同定した(2-メチル-6-ヘプテン-1-オールとβ-イオノンは仮同定).将来的にスミレモ類縁種のにおい物質をデータベース化することで,におい物質を利用した化学分類学の発展に貢献できると期待される.
著者
郝 愛民 丸居 篤 原口 智和 中野 芳輔
出版者
九州大学
雑誌
九州大学大学院農学研究院学芸雑誌 (ISSN:03686264)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.339-346, 2006-10

本研究は、中国カルチン沙地の土地利用状況と土壌の理化学性との関与を明らかにするため、農牧交錯区である奈曼旗において砂地、従来の草原地と灌木地、砂地をポプラで緑化した林地、および草原地を農地に開墾した畑地と水田の植物種分布と土壌理化学性を調査した。各調査地で、植生改善の回復現状は人工植被から複雑な灌木群落へ変遷する過程がみられた。理化学性では、含水比と有機物含有量の3層および陽イオン交換容量の表層では、水田>畑地>林地>草原地>灌木地〉砂地の順に低くなっている。pHは採取土壌の全てが8.04-10.29とアルカリ土壊であった。ECはとくに畑地表層部において0.59mS/cmと高かった。土壌の比重は2.55g/cm3から2.68g/cm3と大差は認められなかった。それぞれの地点で採取した土壌の構成粒子径の比較では、水田と畑地で粘土が7%、粘土からシルトが約50%で残りは粗砂であった。また、修復された林地では約70%が微細な砂土で残りは粗砂であり、灌木地、草原地、砂地では約40%が細砂で残りは粗砂であった。保水性については、有効水分量をpF1.8-pF4.2として深度0-30cmの砂地、灌木地、林地の体積含水比の比較によると、それぞれ3%、8%、17%と植生回復の効果が認められた。土地利用の際に利用状況と理化学性の関与に注意すべき点を把握するのは、カルチン沙地の生態環境の保全および農牧業の可持続的発展に不可欠であることが示唆された。
著者
松本 英顕 江原 史雄 小山 玲音 笹川 智史 原口 智和 宮本 英揮 龍田 典子 上野 大介
出版者
公益社団法人におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.233-239, 2021-07-25 (Released:2021-11-14)
参考文献数
23
被引用文献数
2 2

和牛(黒毛和種・繁殖雌牛)のストレス数値化技術として,皮膚ガスをマーカーとして利用する手法に着目した.本研究では基礎的検討として,皮膚ガスのサンプリング手法および分析技術の高度化に取り組んだ.サンプリング手法として,牛に特化したサンプリングデバイスを作製し,固相吸着剤を腰部に近い背部に装着させる手法を開発した.本手法で捕集された皮膚ガスをGC-MS分析に供試したが,特徴的なピークを検出することはできなかった.そこでにおい嗅ぎガスクロマトグラフ(GC-O),ガスクロマトグラフ分取システム(GC-F),およびガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS)を用いて分析したところ,黒毛和種の皮膚ガスに特徴的なにおい物質として(E)-3-Octen-2-oneを同定した.本研究は大型畜産動物の皮膚ガスを同定した初めての報告である.将来的に本技術を活用して皮膚ガスとストレスの関係を検証し,パッチテストや嗅覚センサーを用いた非侵襲的なストレス数値化技術の実用化につながることが期待される.
著者
原口 智和
出版者
佐賀大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2004

作物生産において水と養分は不可欠な要素であるが,水資源は逼迫し,かつ肥料による水環境の汚染が問題となっている.このような現状に鑑み,灌漑水と肥料の有効利用に資するため,必要最小限の灌漑水と肥料による作物栽培技術を確立すること目的として本研究を行った.作物が必要とする水および養分の量を,1個体あるいは数個体程度の小さなグループ毎に判断し,それらに必要な分のみを与えれば,圃場全体における灌漑水量および施肥量を最小限に抑えることが可能と考える.ここでは,作物生長を妨げない程度(必要最小限)の水分や養分が土壌中に存在しているかどうかを,作物の近赤外線画像から判定することを試みた.実験では,ビニールハウス内において,ワグネルポットにプロッコリおよびキュウリを栽培し,6種のバンドパスフィルター(550,650,680,750,780,800nm)を取り付けたデジタルカメラで葉および個体を撮影してその画像を解析した.土壌水分および養分の異なる条件で栽培した作物体について全体を撮影し,輝度(各波長光線の反射率)の分布と土壌水分・養分欠損との関係を調べた.その結果,葉が全方向に広がっているブロッコリについては,葉による蒸散量(抵抗)の違いは微小であり,また,「近赤外領域(780,800nm)の画像において,土壌水分の欠損によって輝度(対象領域内平均値)が増加する」ことが,個体全体を対象とした解析によって示された.一方,キュウリについては,葉の枚数が少ないため,葉の位置によって蒸散量(抵抗)や光の反射率の差が大きく,個葉を対象とした撮影・解析がふさわしいことが明らかとなった.