著者
相川 知宏 丸山 史人 中川 一路
出版者
日本乳酸菌学会
雑誌
日本乳酸菌学会誌 (ISSN:1343327X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.14-21, 2015-03-16 (Released:2016-03-29)
参考文献数
25

CRISPR/Cas システムは真正細菌および古細菌に広く保存され、外来性遺伝子の一部を自身の染色体に取り込み記憶することで、同一の外来性遺伝子が再度侵入した場合には、これらを分解・排除する獲得免疫機構として機能する。最近では、獲得免疫機構としてだけでなく、細菌の毒性や病原性に関与していること、様々な環境下での細菌の生存や進化においても重要な役割を担っていることが明らかになりつつある。本総説においては近年の我々の研究成果を交え、最新の研究トピック、特に細菌の生存戦略におけるCRISPR/Cas システムの役割を概説する。また、優れたゲノム編集技術としてのCRISPR/Cas システムの適用例を簡単ではあるが紹介したい。
著者
安倍 裕順 相川 知宏 中鉢 淳 宮腰 昌利 丸山 史人
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.69, no.3, pp.539-546, 2014-08-29 (Released:2014-09-02)
参考文献数
26

病原菌の遺伝子発現に関する研究は宿主環境を模倣したin vitro の解析を中心に行われ, 新規病原性遺伝子の発見や遺伝子発現制御ネットワークの詳細を明らかにしてきた。さらに, 近年のゲノム解析技術の進歩により病原菌感染時に特異的な網羅的遺伝子発現解析が可能になった。現在, 免疫応答や常在菌叢の変化など感染経過に伴う宿主環境の変化に病原菌がどのように応答し, 感染成立に必要な病原性遺伝子の発現はどう行われるのか, 病原菌による感染成立の全体像を正確に理解する研究が精力的に進められている。そこで, 本稿では感染環境中での病原菌の遺伝子発現に注目した最新の研究やこれを進めるうえで有用な成果を紹介する。
著者
永井 宏樹 山口 博之 丸山 史人 Xuan Thanh Bui
出版者
大阪大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2011-04-01

ヒトをはじめとする動物や植物などに代表される真核生物の誕生には、細菌が別の細胞内へはいりこんでミトコンドリアや葉緑体になるという、一次共生の成立が鍵となっています。しかしながら、細菌が真核細胞へ侵入するという現象自体は、細菌感染の現場で今日でも日常的に起こっています。本研究では、ヒト病原菌レジオネラ、アメーバ共生菌や病原性細胞内寄生菌とそれらの宿主である真核生物細胞との関わり方を解析することにより、生物が入れ子になって進化を駆動するというマトリョーシカ型進化の第一段階における進化原理の一端を明らかにすることができました。
著者
牛田 一成 大熊 盛也 丸山 史人 塚原 隆充 井上 亮 土田 さやか
出版者
京都府立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

家畜用のプロバイオは、ヒト用に開発された菌株を転用したものが多く、家畜に適しているかどうか曖昧である。宿主と共進化してきた菌種を分離し、ゲノム解析と抗菌作用検定を組み合わせた。飼養形態と品種を異にする、野生と飼育下のアジアイノシシ、アカカワイノシシ、イボイノシシの新鮮糞のNGSによるメタゲノム解析のほか、単離乳酸菌の全ゲノム解析を行った。ブタ用プロバイオ候補菌として、イノシシ科の共生乳酸菌B. thermacidophilum やL. mucosaeの可能性が高いと判断した。B. tは、薬剤耐性を伝播するので、抗菌性に優れた菌株も存在したL. mucosaeが有力であると考えられた。