著者
永井 宏樹
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.379-386, 2010 (Released:2010-12-25)
参考文献数
59

病原細菌がヒトを初めとする宿主に病気を引き起こすためには,細菌から宿主細胞へ輸送される病原因子群と,そのための輸送システムが中心的な役割を果たす。そのような輸送システムのうち,毒素分泌・エフェクター輸送の両方に関わるIV型分泌系の研究は,近年飛躍的な進展を遂げている。本稿では,IV型分泌研究の最前線を紹介させていただきたい。
著者
永井 宏樹 山口 博之 丸山 史人 Xuan Thanh Bui
出版者
大阪大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2011-04-01

ヒトをはじめとする動物や植物などに代表される真核生物の誕生には、細菌が別の細胞内へはいりこんでミトコンドリアや葉緑体になるという、一次共生の成立が鍵となっています。しかしながら、細菌が真核細胞へ侵入するという現象自体は、細菌感染の現場で今日でも日常的に起こっています。本研究では、ヒト病原菌レジオネラ、アメーバ共生菌や病原性細胞内寄生菌とそれらの宿主である真核生物細胞との関わり方を解析することにより、生物が入れ子になって進化を駆動するというマトリョーシカ型進化の第一段階における進化原理の一端を明らかにすることができました。
著者
野崎 智義 洲崎 敏伸 坪井 敏文 守屋 繁春 津久井 久美子 松崎 素道 橘 裕司 石田 健一郎 小保方 潤一 橋本 哲男 金子 修 稲垣 祐司 井上 勲 永井 宏樹 黒田 誠 永宗 喜三郎
出版者
国立感染症研究所
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2011-04-01

真核生物の進化、及び、オルガネラ(細胞内小器官)の進化は、生物学の最も重要な基本命題である。一般に葉緑体・ミトコンドリアなどのオルガネラは細菌の内部共生によって生まれ、真核生物に革新的な代謝機能を与えた。本研究は(1)オルガネラ進化につながる一次・二次共生関係を生物界から広く検出し、共生を可能とする仕組みを理解する、(2)進化過程にある共生・寄生オルガネラの機能と維持機構を解明する、(3)「内部共生体に駆動される真核生物進化」という新しいパラダイムを確立する、(4) オルガネラ移植等の細胞工学手法による試験管内生物進化に必要な技術基盤を確立することを目指し研究を展開し成果を生んだ。
著者
嶋本 伸雄 十川 久美子 永井 宏樹 HAYWARD Rich CHATTERJI Di
出版者
国立遺伝学研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1997

本研究の最大の発見は、バクテリアにおいて初めてプリオン様の調節機構を発見したことである。この意外な発見のため、主要な努力をこのテーマに注ぎ込んだ。転写の大部分に関与する主要転写会誌因子の動態は、病原菌を含むバクテリアを制御するために重要である。大腸菌の主要転写会誌因子σ^<70>因子の細胞内の動態を観察するために、大腸菌のクロモゾーム上のσ^<70>の遺伝子(rpoD)を破壊した菌株を昨年度作製した。この株を利用して、プラスミド上の遺伝子の発現を制御することによって、野生型変異型のσ^<70>の細胞内量を調節した。この結果、σ^<70>は、高い増殖温度や増殖後期に、αヘリックスからβ構造の転移を伴うアミロイド繊維を形成して、転写の活性を低下させ、マイナーσによる転写パターンに切り替えることが明らかになった。アミロイド繊維を形成しやすい変異株、しにくい変異株に置き換えると増殖温度が変化したので、σ^<70>が大腸菌の分子温度となっている傍証を得た。また、σ^<70>の細胞内濃度を変化させながら観察すると、熱ショック遺伝子の定常的発現量と誘導的発現量はともにσ^<70>の存在量に反比例したので、熱ショックσとのスイッチングとアミロイド生成との関係を証明した。また、20年来謎であった、RNAポリメラーゼのωサブユニットの機能を明らかにした。ω欠損株は、野生株と同じ表現型を示すが、コア酵素には、シャペロニンGroELが結合していた。GroELを除いたコア酵素σ^<70>は結合することができず、活性が無かった。つまり、ωサブユニットはコア酵素の成熟因子であり、これを欠く細胞においてはGroELがその役割を代行することが明らかになった。σ^<70>のアミロイド繊維を含む封入体を可溶化する必要から、高濃度のグリセロールを用いた可溶化法を開発した。この手法を、各種生物の蛋白質を大腸菌で量産したときにできる封入体に応用し、8-200倍の改善を観察し、その一般性を証明した。