著者
川久保 晋 東 龍介 日野 亮太 高橋 秀暢 太田 和晃 篠原 雅尚
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2020
巻号頁・発行日
2020-03-13

北海道襟裳沖のプレート境界浅部はスロー地震活動が活発な海域として知られ,超低周波地震(Very Low Frequency Earthquake, VLFE)は2003年十勝沖地震以降(Asano et al., 2008),低周波微動は日本海溝海底地震津波観測網(S-net)の運用が始まった2016年以降(Tanaka et al., 2019; Nishikawa et al., 2019),それぞれの活動の様子が把握されてきた.とりわけ2016年以降にはS-netによってVLFEの活動に先駆けて半日から4日前に微動活動が始まることが明らかとなった(Tanaka et al., 2019).一方,VLFEの活動範囲は2011年東北地方太平洋沖地震(東北沖地震)前後で変化していないように見えることから,微動活動も東北沖地震以前より発生していた可能性がある.そこで本研究は,北海道襟裳沖における東北沖地震以前の微動の検出とその活動様式を明らかにすることを目的とする. 本研究では,2006年10月25日から2007年6月5日に設置されていた自己浮上式海底地震観測網42点の記録から,エンベロープ相関法(Ide, 2010)を用いて微動を検出し震源決定を行った.本研究では観測点間のエンベロープ波形の最大相互相関係数が0.6を超える観測点ペアが10組を超えた場合にイベントを検出したとみなした.震源決定には相互相関係数が最大となるときの時刻差を観測走時差として用い,この走時差を最もよく説明する震源をインバージョンによって求めた. 解析の結果,検出された全イベント10445個のうち,継続時間20秒以上かつマグニチュードが3以下で,震央誤差と時間残差が小さい微動は989個見つかった.検出された微動の震源は海溝軸から一定の距離に分布しており,深さの推定誤差が10 km未満と小さいイベントは沈み込む太平洋プレートの境界面に集中して分布する様子がみてとれた. 観測期間中に微動とVLFEの活動が共に活発だった時期(活動期)は2006年11月,2007年3月,そして2007年5月の3度あり,それぞれの期間で微動の時空間的な特徴に着目した.1つ目の活動期(2006年11月12日~19日)には微動の活動域は16–23 km/dayで北東に移動していたと推定された.ただし,11月15日に千島海溝中部で発生した巨大地震(Mw 8.3, Lay et al., 2009)の活発な余震活動の影響で微動の検知能力が低下した可能性がある点や,設置されていた地震計が全観測網の南側半分のみであった点に留意する必要がある.2つ目の活動期(2007年3月15日~19日)には微動の活動域は25–30 km/dayで南西に移動していたと推定された.3つ目の活動期は2007年5月10日のみで終息した小規模なものであり,先の活動期とは違い地震発生場所の移動は認められなかった. これら3つの微動活動とAsano et al. (2008)のVLFE活動を比較すると,両者の活動時期はおおよそ一致し,詳しく見ると微動がVLFEに対して半日~4日半ほど先に活動を開始する傾向があることが分かった.こうした関係性は東北沖地震後の微動・VLFE活動(Tanaka et al., 2019)に共通する.また,検出した微動全ての震央分布を東北沖地震後にS-netで検出された微動(Nishikawa et al., 2019)と比較すると,両者は空間的にほぼ一致しており,東北沖地震前後で分布域に変化はなかったと考えられる.このような2006年から2007年と現在の微動・VLFE活動の共通点は,東北沖地震によってこの領域におけるスロー地震活動の振る舞いに影響を及ぼさなかったことを示している.
著者
久保 晋 児玉 公信
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告情報システムと社会環境(IS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2000, no.99, pp.13-18, 2000-10-26

製造業における技術データは、製品や部品の構成を親子関係で表現する構成データと、品目ごとの製造手順と生産資源の関係を表現する製造手順データからなるものである。われわれは、日本の製造業の物作りの特徴を活かした生産方式である日本型マス・カスタマイゼーションの中核となる新技術データ管理システム:SPBOM (Series Products Bill of Manufacturing)を開発した。SPBOMは、従来分離されていた部品表と製造手順データを統合した。また、品目群という概念を導入して、類似品を管理することで、その物作りの過程を素朴に表現することを可能とするものである。SPBOMの開発は、オブジェクト指向技術を使って分析,設計,実装されている。ここでは、このSPBOMの特徴、そしてオブジェ外指向と開発の係わりを紹介する。The bill of material(BOM) and the routing data are the engineering data used in a manufacturing industry. A structual information in the BOM is represented in the pair of a parent and a child, and the routing data represents the manufacturing method and the production resource. We developed a new engineering data management system: SPBOM(Series Products Bill of Manufacturing). SPBOM is expected as a kernel of Japanese style mass customization that is a production method adapted to the features of a production style in Japanese Production industry. A BOM and a routing data, which are separated in a conventional system, are integrated in to a new data structure SPBOM. And, by introducing the concept, "Series Products", it can represent the manufacturing process straightforwardly. The development of SPBOM was based on an object-oriented technology in the process of an analysis, a design, and an implementation. We introduce the features of SPBOM and how and object-oriented technology was used in SPBOM and its development.
著者
大久保 晋
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

スピンフラストレーション系では、相互作用が競合するためマイナーな作用が支配的である場合がある。スピンJahn-Tellerではスピン-格子相互作用により格子を歪ませることになる。本研究ではフラストレーション効果の解明のため、カゴメ格子やパイロクロア格子をもつ反強磁性体におけるスピンフラストレーション効果を、強磁場ESRを用いることで緩和の速いスピンダイナミクスを調べ、格子を変えてもスピンの揺らぎが強く残ることを明らかにした。