著者
久保田 江里 櫻井 梓 高橋 優宏 古舘 佐起子 品川 潤 岩崎 聡
出版者
一般社団法人 日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.531-537, 2018-12-28 (Released:2019-01-17)
参考文献数
18

要旨: 2017年, 成人人工内耳の国内適応基準が改訂され, 1) 平均聴力レベル 90dB 以上の重度感音難聴, および 2) 平均聴力レベル 70dB 以上 90dB 未満かつ補聴器装用下の最高語音明瞭度が50%以下の高度感音難聴, と新たに定められた。本研究では, 新適応基準の妥当性について, 平均聴力レベルと裸耳の最高語音明瞭度, および平均聴力レベルと補聴器・人工内耳装用下の最高語音明瞭度との関係から検討した。 対象は成人人工内耳装用者37名と, 補聴器装用者77名である。その結果, 平均聴力レベルと裸耳語音明瞭度との間に負の相関がみられ, 平均聴力レベル 70dBHL に値する語音明瞭度は45%であった。また, 補聴器および人工内耳装用下での比較では, 裸耳の平均聴力レベル 70dBHL において両群の語音明瞭度は同等となりその値は50%であった。 医療技術・機器の進歩による聴力温存と, 聴取成績の向上により, 人工内耳適応基準は今後も定期的に検証する必要があると思われた。
著者
櫻井 梓 岩崎 聡 古舘 佐起子 岡 晋一郎 小山田 匠吾 久保田 江里 植草 智子 高橋 優宏
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.321-327, 2021 (Released:2021-10-12)
参考文献数
17

人工内耳(以下,CI)装用者に対し,楽器を使用した集団的音楽トレーニングを実施し,方向感および語音聴取への効果について検討した.20歳以上のCI装用者で,かつ装用下での57-S語表での単音節の聴取成績が60%以上で,音楽トレーニング参加希望者18名のうち,検査等が実施できた14名を対象とした.全12回(1回60分×月2回)のグループレッスンで,1グループ当たり9名の2グループで実施した.音楽トレーニング前後で単音節,単語,日常会話文のいずれにおいても有意差は見られなかった.方向感検査のd値の平均も,トレーニング前後で有意差は見られなかった.また,音楽経験ありと経験なしとの2群間での検討においても,両検査ともに有意差は見られなかった.ただ,有効な症例もあったことから,詳細な評価方法,より効果的な音楽トレーニング法の構築が必要と考えられた.
著者
岡本 康秀 神崎 晶 貫野 彩子 中市 健志 森本 隆司 原田 耕太 久保田 江里 小川 郁
出版者
一般社団法人 日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.57, no.6, pp.694-702, 2014-12-28 (Released:2015-04-10)
参考文献数
21
被引用文献数
1 2

要旨: 音声の情報として, 周波数情報に加えて時間情報は極めて重要な因子である。 今回時間分解能の評価として Gap detection threshold (GDT) と temporal modulation transfer functions (TMTF) を用いた。 対象を老人性難聴者とし, 年齢, 語音明瞭度を中心に時間分解能の検討を行った。 その結果, 加齢により GDT と TMTF の低下傾向を認めた。 また, 語音明瞭度に影響する因子として, TMTF における peak sensitivity (PS) が強い相関を認めた。 このことは音声知覚において, PS のパラメータであらわされる時間的な音圧の変化の検知能力が語音聴取能力に強く影響を及ぼしていることが示唆された。 今後は時間分解能の臨床応用に加えて, 時間情報をもとにした強調処理などの補聴処理技術が開発されることが望まれる。