著者
高橋 優宏 岩崎 聡 西尾 信哉 鬼頭 良輔 新田 清一 神崎 晶 小川 郁 宇佐美 真一
出版者
一般社団法人 日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.270-276, 2018-08-30 (Released:2018-09-27)
参考文献数
19
被引用文献数
1

要旨: 一側聾は生活面の QOL の低下とハンディキャップを有しているため,医学的介入が試みられている。CROS (Contralateral Routing Of Signals) 型補聴器や埋め込み型骨導補聴器が施行されているが, 装用感や音源定位に関して不良の報告が多い。ヨーロッパではすでに一側聾に耳鳴りを伴った症例に対し人工内耳埋め込み術が施行され, CE (Communauté Européenne)-mark を取得している。そこで国内4施設において共同臨床研究「同側に耳鳴を伴う一側高度または重度感音難聴に対する, 人工内耳の装用効果に関する研究」を施行し, 当院にて1症例を経験した。術後4年経過した現在においても, 雑音下の語音聴取と方向感, 耳鳴りの改善が持続して認められており, 自覚的評価も良好である。一側聾症例における両耳聴効果をさらに実現するため, 今後一側聾に対する人工内耳埋め込み術の導入が期待される。
著者
小池 隆史 高橋 優宏 古舘 佐起子 岡 晋一郎 岩崎 聡 岡野 光博
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1026-1031, 2021-11-20

はじめに 舌下免疫療法(sublingual immunotherapy:SLIT)はアレルギー性鼻炎の根治的治療であるアレルゲン免疫療法の1つである。本邦ではスギ花粉症に対して2002年以降に厚生労働省研究班による臨床研究がスタートし,多施設でのSLITの有効性が確かめられ,2014年にスギ花粉症に対して保険適用された1,2)。 従来の皮下免疫療法(subcutaneous immunotherapy:SCIT)と比較して,重篤なアナフィラキシー反応誘発の可能性がきわめて低く,入院を必要とせず自宅での施行が可能であることが特長である3)。しかし,局所的な副反応の発生はSCITよりも多いと報告されており,アナフィラキシーの発生報告も皆無ではないため,SLIT実施にあたっては,かかりつけ医に加え,患者自身も起こりうる副作用とその対策の概要を理解することが求められる3)。また,副反応への対応については『鼻アレルギー診療ガイドライン』にも記載されているが,副反応改善後のSLIT再開の時期や,投与量,投与法の調整などについては,まだ現場の医師の裁量によるところが大きい4)。 今回われわれは,飲み込み法にてSLITを導入後の早期にアナフィラキシーを生じたが,症状改善後に減量したうえで吐き出し法にてSLITを再開した結果,アナフィラキシーを再発せずに経過良好となった症例を経験したので報告し,文献的に考察する。
著者
久保田 江里 櫻井 梓 高橋 優宏 古舘 佐起子 品川 潤 岩崎 聡
出版者
一般社団法人 日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.531-537, 2018-12-28 (Released:2019-01-17)
参考文献数
18

要旨: 2017年, 成人人工内耳の国内適応基準が改訂され, 1) 平均聴力レベル 90dB 以上の重度感音難聴, および 2) 平均聴力レベル 70dB 以上 90dB 未満かつ補聴器装用下の最高語音明瞭度が50%以下の高度感音難聴, と新たに定められた。本研究では, 新適応基準の妥当性について, 平均聴力レベルと裸耳の最高語音明瞭度, および平均聴力レベルと補聴器・人工内耳装用下の最高語音明瞭度との関係から検討した。 対象は成人人工内耳装用者37名と, 補聴器装用者77名である。その結果, 平均聴力レベルと裸耳語音明瞭度との間に負の相関がみられ, 平均聴力レベル 70dBHL に値する語音明瞭度は45%であった。また, 補聴器および人工内耳装用下での比較では, 裸耳の平均聴力レベル 70dBHL において両群の語音明瞭度は同等となりその値は50%であった。 医療技術・機器の進歩による聴力温存と, 聴取成績の向上により, 人工内耳適応基準は今後も定期的に検証する必要があると思われた。
著者
高橋 優宏 岩崎 聡 古舘 佐起子 岡 晋一郎 西尾 信哉 宇佐美 真一
出版者
一般社団法人 日本耳科学会
雑誌
Otology Japan (ISSN:09172025)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.137-141, 2021 (Released:2021-11-25)
参考文献数
11

特発性両側性感音難聴のうち,加齢性難聴とは明らかに異なる40歳未満の遅発性難聴を発症する7つの原因遺伝子が同定され,若年発症型両側性感音難聴と定義された.診断基準は①遅発性,若年発症,②両側性,③原因遺伝子が同定されており,既知の外的要因が除かれているものである.現在,ACTG1,CDH23,COCH,KCNQ4,TECTA,TEMPRSS3,WFS1遺伝子が原因遺伝子として診断基準に示されており,70 dB以上の高度難聴であれば指定難病の申請ができる.ACTG1症例,TEMPRSS3症例のように,次世代シークエンサーによる遺伝学的検査および遺伝カウンセリングにより補聴器から人工聴覚器手術への自律的選択が可能となり,大きな福音となっている.
著者
高橋 優宏 岩崎 聡 吉村 豪兼 古舘 佐起子 岡 晋一郎 西尾 信哉 宇佐美 真一
出版者
一般社団法人 日本耳科学会
雑誌
Otology Japan (ISSN:09172025)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.129-135, 2022 (Released:2022-08-25)
参考文献数
13

一側伝音・混合性難聴症例に対し臨床研究「一側性伝音・混合性難聴に対する埋め込み型人工中耳の有効性に関する探索的臨床試験」において人工中耳(Vibrant Soundbridge®: VSB)埋込み術を4例施行した.本邦における人工中耳臨床試験(両側難聴)と同様に裸耳骨導閾値はいずれの周波数においても維持され変化がみられず,装用後6ヶ月での安全性が確認できた.さらに4例とも人工中耳臨床試験(両側難聴)と同様に良好な自由音場装用閾値を示し有効性が確認された.また,本研究における騒音下での語音弁別,方向定位検査も良好な結果であり,一側性伝音・混合性難聴症例において人工中耳VSBの有効性が示唆された.今後,本邦での適応拡大が期待される.
著者
櫻井 梓 岩崎 聡 古舘 佐起子 岡 晋一郎 小山田 匠吾 久保田 江里 植草 智子 高橋 優宏
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.321-327, 2021 (Released:2021-10-12)
参考文献数
17

人工内耳(以下,CI)装用者に対し,楽器を使用した集団的音楽トレーニングを実施し,方向感および語音聴取への効果について検討した.20歳以上のCI装用者で,かつ装用下での57-S語表での単音節の聴取成績が60%以上で,音楽トレーニング参加希望者18名のうち,検査等が実施できた14名を対象とした.全12回(1回60分×月2回)のグループレッスンで,1グループ当たり9名の2グループで実施した.音楽トレーニング前後で単音節,単語,日常会話文のいずれにおいても有意差は見られなかった.方向感検査のd値の平均も,トレーニング前後で有意差は見られなかった.また,音楽経験ありと経験なしとの2群間での検討においても,両検査ともに有意差は見られなかった.ただ,有効な症例もあったことから,詳細な評価方法,より効果的な音楽トレーニング法の構築が必要と考えられた.