著者
武村 俊介 奥脇 亮 久保田 達矢 汐見 勝彦 木村 武志 野田 朱美
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2020
巻号頁・発行日
2020-03-13

Due to complex three-dimensional (3D) heterogeneous structures, conventional one-dimensional (1D) analysis techniques using onshore seismograms can yield incorrect estimation of earthquake source parameters, especially dip angles and centroid depths of offshore earthquakes. Indeed, detail analysis of 2016 southeast off the Kii Peninsula earthquake revealed that observed seismic and tsunami record could be explained by low-angle thrust faulting on the plate boundary (e.g., Kubota et al., 2018; Takemura et al., 2018; Wallace et al., 2016) but regional 1D moment tensor analysis showed high-angle reverse faulting mechanism.Combining long-term onshore seismic observations and numerical simulations of seismic wave propagation in a 3D model, we conducted centroid moment tensor (CMT) inversions of earthquakes along the Nankai Trough. Green’s functions for CMT inversions of moderate earthquakes were evaluated via OpenSWPC (Maeda et al., 2017) using the Japan Integrated Velocity Structure Model (Koketsu et al., 2012). We re-analyzed moderate (Mw 4.3-6.5) earthquakes listed in the F-net catalog (Fukuyama et al., 1998; Kubo et al., 2002) that occurred from April 2004 to August 2019. By introducing the 3D structures of the low-velocity accretionary prism and the Philippine Sea Plate, our CMT inversion method provided better constraints of dip angles and centroid depths for offshore earthquakes. These two parameters are important for evaluating earthquake types in subduction zones.Our 3D CMT catalog of offshore earthquakes and published slow earthquake catalogs (e.g., Kano et al., 2018) along the Nankai Trough depicted spatial distributions of slip behaviors on the plate boundary. The regular and slow interplate earthquakes were separately distributed, with these distributions reflecting the heterogeneous distribution of effective strengths on the plate boundary. By comparing the spatial distribution of seismic slip on the plate boundary with the slip-deficit rate distribution (Noda et al., 2018), regions with strong coupling were identified.Acknowledgments We used F-net waveform data and the F-net MT catalog (https://doi.org/10.17598/NIED.0005). Our CMT catalog and CMT results of assumed source grids for each earthquake are available from https://doi.org/10.5281/zenodo.3661116. The FDM simulations of seismic wave propagation were conducted on the computer system of the Earthquake and Volcano Information Center at the Earthquake Research Institute, the University of Tokyo. This study was supported by the Japan Society for the Promotion of Science (JSPS) KAKENHI Grant Numbers 17K14382 and 19H04626.
著者
久保田 達矢 武村 俊介 齊藤 竜彦
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-05-11

沖合で発生する地震のセントロイドモーメントテンソル (CMT) 解の推定において,海陸の地震波形を同時に用いると,陸上記録のみを使用した場合よりもはるかに高い解像度でセントロイドの水平位置を拘束できる (Kubota et al., 2017).近年,東北沖には日本海溝海底地震津波観測網S-net (Seafloor observation network for earthquakes and tsunamis along the Japan Trench) (Uehira et al., 2012) が展開された.この観測網と陸上の地震観測網の記録を活用することにより,沖合の地震のCMT解,とくに発生するセントロイド位置とセントロイド深さの推定精度の向上が期待される.しかし,海域における地殻構造は陸上とは大きく異なっているため,海水や堆積層などの低速度層を考慮した地震波伝播計算が重要である (e.g., Noguchi et al., 2017; Takemura et al., 2018).海域の地震について,海陸の観測網を同時に用いてCMT解を高精度で推定するためには,上記のような海域特有の不均質構造を考慮する必要がある.本研究では,地震動シミュレーションにより合成された海域・陸域の地震観測網におけるテスト波形をもとに,海域特有の構造が陸から離れた沖合で発生する地震のCMT解の推定,特にセントロイドの深さの推定におよぼす影響について考察した.本研究では東北沖のプレート境界で発生する逆断層型の点震源 (深さ ~18 km) を入力の震源として仮定し,テスト波形を地震動シミュレーションにより合成した.地震動伝播は3次元差分法 (e.g., Takemura et al., 2017) により計算し, Koketsu et al. (2012) による3次元速度構造モデル (JIVSM) を使用した.計算領域は960×960×240 km3とし,水平にΔx = Δy = 0.4 km,鉛直にΔz = 0.15 kmの格子間隔で離散化した.時間方向の格子間隔をΔt = 0.005 sとした.合成波形に周期20 – 100 sのバンドパスフィルタを施し,CMT解の推定を行った.セントロイド水平位置は沖合の観測網を用いることで高い精度で拘束できる (Kubota et al. 2017) ため,本解析では震央を入力震源の位置に固定し,セントロイド深さおよびモーメントテンソルの推定を行った.CMT解の推定に使用するグリーン関数は,3種類の異なる速度構造モデルを使用した.1つ目は,F-netメカニズム解の推定に用いられている内陸の構造を模した1次元速度構造モデル (Kubo et al., 2002) (内陸1Dモデル) である.この構造では,海水層や浅部の低速度層は考慮されていない.2つ目は,海域の構造を模した,海水層および浅部低速度層を含んだ1次元構造モデル (海域1Dモデル) である.最後は,合成波形の計算にも使用した3次元の速度構造モデル (JIVSM) (3Dモデル) である.1DモデルにおけるGreen関数の計算には波数積分法 (Herrmann, 2013) を用いた.内陸1Dモデルによるグリーン関数を使用では,最適解の深さは ~17 kmと,入力震源の深さとほぼ同様となった.セントロイドの深さ5 – 30 kmの範囲で,テスト波形の再現性に大きな差異はなく,深さ方向の解像度はさほど高くないと言える.一方で,3Dモデルによるグリーン関数を使用した場合,入力と同じ深さに最適解が推定された.セントロイドの深さ15 – 25 km範囲でテスト波形の再現性が高く,内陸1Dモデルと比べて深さ解像度が改善した.海域1D構造モデルを用いたCMT解では,3Dモデルと同様の結果が得られた.以上より,海域特有の構造を考慮したグリーン関数を用いることで,CMT解のセントロイド深さについて浅い解を棄却できるようになることがわかった.一方で,テスト波形の計算と同じ3次元速度構造モデルを用いた場合でも,セントロイドの深さを拘束することは難しいことも明らかとなった.本解析に使用した周波数帯域 (20 – 100 s) においては,深さ15 – 25 kmの範囲では3次元構造を用いて計算されるグリーン関数間の差が少ないことが原因と考えられる.
著者
久保田 達矢 近貞 直孝 日野 亮太 太田 雄策 大塚 英人
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2020
巻号頁・発行日
2020-03-13

沖合の海底に設置された海底圧力計 (Ocean bottom pressure gauge; OBP) は,これまでスロースリップや巨大地震後の余効変動による地殻変動の検出や地震発生の物理の理解に大きな役割を果たしてきた (e.g., Ito et al. 2013 Tectonophys; Iinuma et al. 2016 Nature Comm; Wallace et al. 2016 Science).2011年東北沖地震を受け,東北日本沈み込み帯では日本海溝海底地震津波観測網 (Seafloor observation network for earthquakes and tsunamis along the Japan Trench; S-net) が展開された (Kanazawa et al. 2016).本観測網におけるOBPは東北日本沈み込み帯における地殻変動シグナルの検出に大きな役割を果たすと期待される.本研究ではS-netのOBPを用いた地殻変動の検出に向け,数日から数週間程度の時間スケールの定常的な変動について,近傍に展開された東北大学の自己浮上式OBP (Hino et al. 2014 Mar Geophys Res) と比較を行い,その品質を評価した.本研究では低周波微動 (Tanaka et al. 2019 GRL; Nishikawa et al. 2019 Science) や超低周波地震 (Matsuzawa et al. 2015 GRL; Nishikawa et al. 2019) などのスロー地震活動が活発な岩手県三陸沖の海域に着目した (Figure 1a).S-netの記録を目視で確認し,海洋潮汐を比較的精度よく観測できている品質の良い観測点 (近貞ほか 2020 JpGU S-CG70) にのみ注目し,比較を行った.また,近傍に展開された東北大学OBP観測と観測期間が重なっている2016年の約2ヶ月間の記録を比較した.解析では両者の記録を30分値にリサンプルし,BAYTAP-G 潮汐解析プログラム(Tamura et al. 1991 GJI) を用いて潮汐変動成分を推定し,また線形ドリフト成分を推定した.解析の結果,推定された潮汐変動はよく一致した (Figure 1b –1e).潮汐変動成分ならびに線形ドリフト成分を取り除き,圧力時系列の標準偏差σを計算したところ,東北大のOBPではσ = 2.6 hPa (観測点SN2, Figure 1b) および σ = 2.2 hPa (観測点SN4, Figure 1c)であった.これらの観測点に最も近いS-netのOBPではσ = 11.4 hPa (S4N11, Figure 1d),σ = 3.5 hPa (S4N22, Figure 1e) となった.これ以外のS-netのOBPも含め,標準偏差は東北大のOBPよりも系統的に大きかった.また,S-netのOBPの記録では数日かけて10 hPa以上変化するような圧力変動が見られた (Figure 1de).このようなシグナルは,ごく近傍に設置された東北大OBPでは見られなかったことから,海洋物理学的な変動に起因するものではないと考えられる.また,いずれのOBPにおいてもParoscientific社製のセンサを使っていることから,センサの違いに由来するものでもないと思われる.両者の異なる部分として,S-netでは水圧センサが油で満たされた金属製の耐圧筐体の内部に封入されており,直接海水に触れているわけではない,という点が挙げられる.圧力観測の方式と,原因不明の圧力変動の因果関係は今後さらに詳細に検討する必要がある.ここまでの検討から,比較的品質の良いOBP (S4N22) では,東北大OBPよりわずかに劣る程度の地殻変動検出能力を持つと考えられる.一方,品質のさほど高くないOBP (S4N11) では数日をかけて大きく圧力が変動することがあるため,数日程度のタイムスケールの地殻変動現象の検出は難しいことが示唆される.非潮汐性の海洋変動成分 (Inazu et al. 2012 Mar Geophys Res; 大塚ほか 2020 JpGU S-CG66) を取り除くことにより地殻変動検知能力が向上することが期待されるが,そのためには,まずはS-net水圧計の比較的短期間での圧力変動の原因をさらに詳細に検討し,それらの成分を取り除く必要がある.