著者
武村 俊介 松澤 孝紀 野田 朱美 利根川 貴志 浅野 陽一 木村 武志 汐見 勝彦
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

沈み込みプレート境界浅部で発生するスロー地震は、プレート境界の摩擦状態などの構造的特徴を知る鍵となる(例えば、Saffer and Wallace, 2015 Nature Geo.)。本研究では、室戸岬沖から紀伊半島南東沖にかけての領域で発生した浅部超低周波地震に着目し、浅部超低周波地震の活動の空間変化から発生域の構造的特徴を明らかにすることを目的とする。Asano et al. (2008 EPS)の手法で得られた浅部超低周波地震の検知時刻周辺を解析時間窓として、周期20-50秒の帯域のF-net速度波形に対してTakemura et al. (2018 GRL)のCMT解析を行い、浅部超低周波地震の発震時刻、震央位置、地震モーメントおよび震源時間関数のパルス幅を推定した。CMT解析のためのGreen関数は、Takemura et al. (2019 PAGEOPH)の3次元不均質構造モデルを仮定した地震動シミュレーションにより評価した。2003年6月から2018年5月の期間に検知された浅部超低周波地震に対してCMT解析を行ったところ、室戸岬沖、紀伊水道沖および紀伊半島南東沖のトラフ軸付近に低角逆断層の解が多く推定された。得られたCMTカタログから、それぞれの領域における積算モーメントを評価し、その空間変化を調べた。室戸岬沖、紀伊水道沖および紀伊半島南東沖の領域で積算モーメントが高く、紀伊半島南方沖では小さいことがわかった。浅部超低周波地震の活動域の構造的特徴を明らかにするため、得られた積算モーメントの空間変化と、すべり欠損速度(Noda et al. 2018 JGR)およびS波速度構造(Tonegawa et al. 2017 Nature Comm.)を比較した。浅部超低周波地震の積算モーメントが高い領域は、すべり欠損速度が大きい領域の周囲に位置し、プレート境界直上に顕著な低速度領域が存在することがわかった。低速度領域から流体の存在が示唆され、浅部超低周波地震の発生は流体とすべり欠損速度の両方が鍵をにぎると考えられる。謝辞F-netの広帯域速度波形記録を使用しました.スロー地震学のスロー地震データベースよりカタログをダウンロードしました(Kano et al., 2018 SRL).地震動計算には地球シミュレータを利用しました.
著者
北 佐枝子 Heidi Houston 田中 佐千子 浅野 陽一 澁谷 拓郎 須田 直樹
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

The slip on the plate interface has the potential to affect the stress field and seismicity within the subducting slab. Several studies have examined the interaction of slow slip phenomena with intraslab earthquakes [Nankai and Tokai regions, Han et al. 2014; Mexico, Radiguet et al. 2018, 2018 JpGU meeting; New Zealand, 2018, Warren-Smith, 2018 AGU meeting]. Kita et al. [2018, SSJ meeting] reported the stress change in the whole slab associated with ETS times based on stress tensor inversion results. However, we find a clear double seismic zone under Kii Peninsula, as also noted in a previous study [e.g. Miyoshi and Ishibashi, 2004]. Therefore, we here examine seismicity rate variations, stress changes, and b-value variations of seismicity separately for the upper plane events and oceanic mantle ones relative to ETS timings beneath the Kii Peninsula. We use the JMA earthquake catalog, the NIED tremor catalog, the upper surface of the Philippine sea plate estimated by Shibutani and Hirahara [2016], P-wave polarity data by NIED, and a stress tensor inversion code [Vavrycuk, 2014].We determined the timings of ~30 large ETS beneath the Kii Peninsula from 2001 to 2017, and categorized slab seismicity relative to the occurrence times of nearby the ETS (i.e., 60 days before or after). We then combined or stacked the slab seismicity based on these relative occurrence times. The rate of seismicity both in the upper plane events and in the oceanic mantle ones after the ETS timings clearly decreased, compared to the rate before the ETS timings. The peaks of b-values of seismicity both in the upper plane events and oceanic mantle ones were found to occur 1.5 months before ETS. A change in stress orientations before and after the ETS was seen in the oceanic mantle, and a relatively small change was seen for the upper plane events. The stress change in the upper plane events appears to be larger in the region updip of the ETS zone. The results of our study suggest that the aseismic slip on the plate boundary may affect the stress field and the occurrence of seismicity within the subducting slab beneath the Kii Peninsula. Fluid migration from the oceanic slab into the ETS zone on the plate boundary could be related to the interaction of slow slip phenomena with intraslab earthquakes.
著者
堀 貞喜 石田 瑞穂 青井 真 井上 公 大久保 正 岡田 義光 小原 一成 笠原 敬司 木村 尚紀 熊谷 博之 汐見 勝彦 関口 渉次 根岸 弘明 野口 伸一 松本 拓己 山水 史生 藤原 広行 功刀 卓 浅野 陽一 関根 秀太郎 廣瀬 仁 松原 誠 安逹 繁樹 伊藤 喜宏 針生 義勝 松林 弘智 松村 稔 宮川 幸治 山品 匡史 坂無 雅子 雷 楓 伊東 明彦 岩田 知孝 ト部 卓 川勝 均 木下 繁夫 工藤 一嘉 纐纈 一起 佐藤 春夫 佐藤 比呂志 武井 恵雄 中尾 茂 平田 直 平原 和朗 堀家 正則 松澤 暢 山北 聡 綿田 辰吾 山野 誠
出版者
独立行政法人防災科学技術研究所
雑誌
防災科学技術研究所年報 (ISSN:09186441)
巻号頁・発行日
vol.15, pp."I-12"-"I-16", 2004-09-06

地震調査研究推進本部の総合基本施策(「地震に関する観測、測量、調査及び研究の推進についての総合的かつ基本的な施策(平成11年4月23日)」)、及び調査観測計画(「地震に関する基盤的調査観測計画(平成9年8月29日)」、「地震に関する基盤的調査観測計画の見直しと重点的な調査観測体制の整備(平成13年8月28日)」、「地震に関する基盤的調査観測等の結果の流通・公開について(平成14年8月26日)」)等に基づき、高感度・広帯域地震観測施設と強震観測施設を整備し、観測網の維持・管理・運用を行う。これら基盤的観測網と防災科研の在来地震観測網から得られるデータの収集・処理を行い、気象庁、大学等のデータと合わせて蓄積・流通・公開を行う。また、防災科研が海外に整備した観測施設についても、円滑な維持・管理とともに、観測方式の高度化を行いつつ、データの収集・処理・蓄積・公開を行う。さらに、各観測網から得られるデータを用いて、高度な地殻活動のモニタリングを実施し、地震活動状況の推移を判断するための研究成果を創出する。
著者
海野 徳仁 平田 直 小菅 正裕 松島 健 飯尾 能久 鷺谷 威 笠原 稔 丸井 英明 田中 淳 岡田 知己 浅野 陽一 今泉 俊文 三浦 哲 源栄 正人 纐纈 一起 福岡 浩 渥美 公秀 大矢根 淳 吉井 博明
出版者
東北大学
巻号頁・発行日
2008

臨時余震観測から本震時には西傾斜の震源断層が主に活動したが、それと直交する東傾斜の余震活動もみられた。震源域直下の深さ30~40kmには低速度域が広く存在しており、そこから3本の低速度域が地表の活火山にまで続いていた。GPS観測データから本震時すべりは岩手・宮城県境付近で最も大きかった。本震後の顕著な余効すべりは震源断層の浅部延長で発生し、地震時すべりと余効すべりは相補的である。強震動データでは0.1~0.3秒の短周期成分が卓越していため震度6弱の割には建物被害が少なかった。