著者
岩崎 信明 絹笠 英世 渡辺 章充 片桐 朋子 田中 竜太 新 健治 佐藤 秀郎
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.202-205, 2007-05-01 (Released:2011-12-12)
参考文献数
16
被引用文献数
1

重度脳性麻痺, 重度精神遅滞, 症候性てんかんを基礎疾患にもつ3歳女児に長時間続く吃逆発作が繰り返し出現した. 気管切開・喉頭気管分離術の施行後に発症し, 合併症として呼吸停止がみられた. 薬物治療に抵抗性であったが, 微量の食用酢を点鼻することで速やかに吃逆は消失した. 機序として吃逆の反射弓の求心路と考えられている舌咽神経咽頭枝が分布する鼻咽頭背側領域への刺激の関与が推察された. 安全かつ簡便に施行できることから, 薬物療法が無効な場合には非薬物療法のひとつとして試みてもよい方法であると考えられた.
著者
中溝 智也 多田 憲正 宇田川 智宏 菊池 絵梨子 亀井 宏一 森 崇寧 蘇原 映誠 松岡 健太郎 白井 謙太朗 渡辺 章充
出版者
一般社団法人 日本小児腎臓病学会
雑誌
日本小児腎臓病学会雑誌 (ISSN:09152245)
巻号頁・発行日
pp.cr.2022.0206, (Released:2022-10-26)
参考文献数
34

Galloway-Mowat症候群(GAMOS)は小頭症を伴う精神発達遅滞とステロイド抵抗性ネフローゼ症候群(SRNS)などの腎症を呈する疾患である.GAMOSにおける腎症は,治療抵抗性のため生命予後を規定する.今回シクロスポリン(CsA)で長期間の寛解を維持しているGAMOSの1例を報告する.1歳健診で精神発達遅滞,小頭症を指摘された.2歳時に蛋白尿を認め,5歳時にSRNSの基準を満たし,腎生検で巣状分節性糸球体硬化症を認めた.以上よりGAMOSと診断した.SRNSに対してCsAを導入したところ尿蛋白は減少し,7歳時に不完全寛解した.寛解維持した後にCsAの中止を試みたところ蛋白尿が増悪したため,CsAが尿蛋白減少に寄与していると判断した.腎毒性軽減のため8歳時から1日1回の投与へ変更し,14歳時の腎生検で明らかな腎毒性は認めなかった.CsAの単回投与は腎毒性を抑制し,GAMOS腎症のような遺伝性SRNSの予後改善に有効な可能性がある.
著者
白井 謙太朗 中島 啓介 渡辺 章充 川野 豊 佐久間 啓 吉田 尊雅 宮田 理英 田沼 直之 林 雅晴
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.41, no.6, pp.447-451, 2009 (Released:2016-05-11)
参考文献数
18

インフルエンザ菌 (Hib) による劇症型髄膜炎の1男児例を経験した. 症例は4歳男児. 生来健康であったが, 発熱, 嘔吐を来し傾眠傾向となった. 発症12時間後より細菌性髄膜炎の治療を開始したが, 急激な脳腫脹から脳ヘルニアを来し臨床的な脳死状態となった. 本症例は急性脳症と類似した臨床経過・画像所見を示し, さらには発症1日目の髄液で炎症性サイトカインが著しい高値を呈していた. 文献的考察から, Hibによる劇症型髄膜炎には, DIC (disseminated intravascular coagulation) ・多臓器不全型と急性脳腫脹型があり, 本例はサイトカイン・ストームによる急性脳腫脹型であると考えられた.
著者
渡辺 章充 南風原 明子 黒澤 信行 渡部 誠一
出版者
THE JAPANESE ASSOCIATION OF RURAL MEDICINE
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.591-594, 2011-01-30

ロタウイルス感染に伴う急性脳症を2例経験した。<br>〔症例1〕2歳11か月の女児で全身強直間代性けいれんで発症した。人工呼吸管理まで要したが,後遺症なく回復した。<br>〔症例2〕2歳2か月の女児で不機嫌状態が遷延し,脳波の徐波化,頭部MRIで小脳に異常信号を認めた。運動機能は回復したが,高次脳機能と軽度の小脳症状が残った。<br> ロタウイルスによる脳症には,けいれん発作主体のものだけでなく,小脳に主病変を示すタイプがある。前者は診断・治療とも他のウイルス性急性脳症に準ずることで大きな問題はないが,後者は早期診断に苦慮することもあり,また,有効な治療法も確立されていない。