著者
岡 知子 仲井 邦彦 亀尾 聡美 佐藤 洋
出版者
SOCIETY OF ENVIRONMENTAL SCIENCE, JAPAN
雑誌
環境科学会誌 (ISSN:09150048)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.163-168, 2004

母親の食事由来の低濃度メチル水銀の胎児期曝露が,その後の児の発達に与える影響を検証する疫学的調査として良く知られているのは,デンマーク領フェロー諸島前向き研究(Faroe Islands Prospective Study)とセイシェル小児発達研究(Seychelles Child Development Study:SCDS)の2つである。両研究は,曝露量,対象集団の規模,および神経発達の検査法が比較的類似しているにも関わらず,結果的にはSCDSではフェロー諸島で認められた様な小児の神経・認知・行動への影響は見出されていない。本稿では調査の背景となったセイシェル共和国の自然と人々,生活様式,を紹介するとともにこれまでの調査の主要な結果をまとめ,SCDSの位置づけなどを考えてみた。
著者
坂本 峰至 亀尾 聡美 丸本 倍美 安武 章 山元 恵
出版者
国立水俣病総合研究センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

セレンは必須微量元素で、水銀化合物の毒性防御作用が期待される本研究では、自然界に存在する毒性の低いセレンであるセレノメチオニンがラット新生仔の発達期の脳で直接メチル水銀の毒性を防御することを世界で初めて報告した(Env Sci & Tech 2013)。歯クジラ類は、比較的高濃度の水銀を体内に蓄積するが、無機化能力が高く、無機化された水銀は、非活性で無毒なセレン化水銀に変化し筋細胞内に残留していることが示唆された。捕鯨の町の住民の血液試料中の水銀とセレン濃度は有意な正の相関を示し、セレンが住民における水銀の毒性の防御の役割を果たしている可能性が示唆された。