著者
藤村 成剛 臼杵 扶佐子 出雲 周二
出版者
国立水俣病総合研究センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究では、主にメチル水銀による神経機能障害に対するローキナーゼ阻害薬の効果について実験を行った。ローキナーゼ阻害薬(FasudilおよびY-27632)は、ラット培養神経細胞においてメチル水銀による軸索変性およびアポトーシス細胞死を有意に抑制した。また、Fasudilは、メチル水銀中毒モデル動物においても末梢神経の神経変性および神経機能障害の指標である後肢交差を抑制した。さらに、ローキナーゼ阻害薬は無機水銀およびRotenone(パーキンソン病の原因候補物質) による軸索変性および神経細胞死についても培養神経細胞を用いた実験において有効であった。
著者
中村 政明 坂本 峰至 蜂谷 紀之 村田 顕也
出版者
国立水俣病総合研究センター
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

我々は、成人のMeHg曝露による健康影響を調査した。被験者は、日本の伝統的な捕鯨の発祥地の太地町の住民194人。毛髪水銀濃度の幾何平均が14.9μg/gで、鯨肉摂取量と有意に相関したことから、太地町住民が鯨肉摂取によるMeHg高曝露群であることが示唆された。毛髪水銀濃度と神経所見の間に有意な相関はなかった。また、MRSで、感覚野と小脳のNAA/ Cr比が正常だったことから、明らかな神経細胞の減少がないことが示唆された。全血水銀とSe濃度の有意な正の相関がみられ、全血水銀/Seモル比は1以下だった。これらの所見は、充分なSe摂取がMeHg曝露の有害影響がなかった原因の1つである可能性を示唆した。
著者
坂本 峰至 亀尾 聡美 丸本 倍美 安武 章 山元 恵
出版者
国立水俣病総合研究センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

セレンは必須微量元素で、水銀化合物の毒性防御作用が期待される本研究では、自然界に存在する毒性の低いセレンであるセレノメチオニンがラット新生仔の発達期の脳で直接メチル水銀の毒性を防御することを世界で初めて報告した(Env Sci & Tech 2013)。歯クジラ類は、比較的高濃度の水銀を体内に蓄積するが、無機化能力が高く、無機化された水銀は、非活性で無毒なセレン化水銀に変化し筋細胞内に残留していることが示唆された。捕鯨の町の住民の血液試料中の水銀とセレン濃度は有意な正の相関を示し、セレンが住民における水銀の毒性の防御の役割を果たしている可能性が示唆された。