著者
五十嵐 大貴
出版者
日本重症心身障害学会
雑誌
日本重症心身障害学会誌 (ISSN:13431439)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.267, 2017

目的 小児等在宅医療連携拠点事業や医療的ケア児を対象とした法改正が行われ、地域で小児在宅医療患者を支える体制整備が進んでいる。小児訪問リハビリテーション(以下、訪問リハ)も少しずつ拡大傾向にあるが、実態はまだ不明確である。今回、当事者の保護者に対して訪問リハ利用状況の調査を行い、特に重症心身障害児(者)(以下、重症児(者))の保護者が訪問リハに望むことについて考察した。 方法 対象は北海道の札幌・旭川市にある療育広域拠点施設で外来理学療法(以下、外来PT)を受けている在宅生活児(者)の保護者とした。アンケート(無記名自記式)期間は平成27年6月〜10月の間の4カ月間実施した。有効回答は394名で、訪問リハ利用は81名(21%)であった。今回はその中で粗大運動機能分類システム(以下、GMFCS)で最重度のレベル5を調査対象とした。調査項目は1。保護者・子ども年齢、2。居住地域、3。外来PT頻度、4。医療・福祉サービスの利用(複数回答)、5。訪問リハ開始理由(自由記載)とした。 結果 GMFCSレベル5は51名(63%)であった。調査から1.保護者平均43.5歳、子ども平均11.6歳、2.札幌・旭川市内84%、近郊2%、それ以遠14%、3.1回/月26%、1回/週以上20%、1回/3カ月18%で多い、4.訪問看護71%、通所サービス45%、他施設外来リハ43%で多い、5.頻度・リハ機会の増加39%(外来リハだけでは不足、少しでも多く受けたい、近くに外来リハがないなど)、本人の身体的理由35%(緊張調整、変形進行予防、呼吸管理など)、勧められて18%(医師などから)で多かった。 考察 開始理由から、訪問リハに望むこととして「頻度・リハ機会の増加」が挙げられ、重症度が高いことや慢性的なリハ頻度不足、リハ資源の地域格差が原因と考える。次に「本人の身体的理由」が挙げられ、ほとんどが緊張や変形、呼吸など重症児(者)特有の二次障害であった。よって、訪問リハを行う上で二次障害の知識・対処が必須で、併用率の高さから訪問看護との連携も重要であると考える。
著者
金澤 恵里 五十嵐 大貴 阿部 修 築地 徹浩 安永 和敏
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
「運動と振動の制御」シンポジウム講演論文集 2013.13 (ISSN:24243000)
巻号頁・発行日
pp._C27-1_-_C27-10_, 2013-08-25 (Released:2017-06-19)

Manifold blocks are recently used to connect hydraulic components in a hydraulic system that has flow channel inside. They are useful in reducing the size and weight of hydraulic systems. This paper deals with solid manifold block and laminated manifold block as trip equipment with which the turbine of a thermal power or a nuclear power plant is equipped. They are different from machining. We investigate pressure drops of their pipe flow with computational fluid dynamics (CFD) and compare the two types. We devised the new technique of having included CFD in pipeline network calculation. The final purpose is to design a laminated manifold block as trip equipment with which reduction in size and weight or reduction in pressure drops is realized. The conclusions from the aforementioned results are as follows. First, Branch/junction model can be calculated by the new technique of having included CFD in pipeline network calculation. Second, we achieved designing of a laminated manifold block as trip equipment with which reduction in size and weight or reduction in pressure drops is realized.
著者
伊藤 綾香 五十嵐 大貴 吉田 圭佑
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0908, 2017 (Released:2017-04-24)

【目的】Schinzel-Giedion症候群(以下,SGS)は,1978年にShinzelとGiedionが報告した先天性疾患で,顔面中央部低形成,重度精神遅滞,痙攣,心・腎奇形,内反足等の骨格異常を特徴とし,国内外で数十例の報告しかない予後不良な稀少疾患である。2歳前後の死亡例や呼吸不全が死因となるという報告がある。責任遺伝子としてSETBP1の同定等,近年報告は増えているが,リハビリテーションに関する報告はない。今回,SGSに対し,1歳11ヶ月から3歳にかけて訪問リハビリテーション(以下,訪問リハ)介入を行ったため経過を考察し報告する。【方法】対象は,SGSの女児。在胎37週,帝王切開で出生。出生時体重3106g。APS3-7。両側腎盂拡張,脳室拡大,特異顔貌,第5指・第4・5趾重複趾や内反足を認め,遺伝学的検査でSETBP1が同定されSGSと診断。2ヶ月時,全身性強直発作が群発,6ヶ月時にWest症候群と診断,ACTH-Z療法で発作は軽減。副作用として低カリウム血症,高血圧,脳萎縮を認め,低カリウム血症,高血圧は投薬で対応,脳萎縮は改善しなかった。ADLは全介助レベルで表情は乏しい。経鼻栄養だったが,2歳5ヶ月時に胃瘻造設。サービス利用はなく,週1回の訪問リハのみ利用。介入時,心拍数70-160bpm,SpO280-99%と変動あり,夜間酸素投与していた。呼吸数15~16回/分,時折咳嗽,舌根沈下があり,シーソー呼吸様で痰貯留による喘鳴あり。肺炎での入院が1回/1~2ヶ月で,母は夜間不眠があった。発作による四肢のぴくつきや,非対称な反り返りが多い。体幹低緊張で未定頸なため座位保持困難。左背面皮膚短縮,胸郭の非対称性,可動域低下著明で下肢は蛙状肢位。日常姿勢は背臥位又は側臥位のみ。口腔内唾液貯留が多い。易感染性のため外出は病院受診のみであった。医療的ケアは母のみ実施で,外出も制限されていた。【結果】易感染性により呼吸器感染リスクが高く訪問リハ適応となった。肺炎再発防止,母の負担軽減を目標に,上気道通過障害の改善,胸郭呼吸運動の発達促進を目的とした運動療法と腹臥位ポジショニング指導を行い,排痰を促した。呼吸状態が不安定な時は主治医へ報告した。介助座位で喘鳴軽減したため座位保持装置を作製,抗重力姿勢増加により体力向上を図った。日中覚醒時間,夜間睡眠量が増え,2歳5ヶ月頃より入院頻度が1回/3~4ヶ月に軽減した。2歳9ヶ月時に夜間CO2平均50.8mmHgのため,夜間時のみ非侵襲的換気療法を開始した。夜間時SpO2値の変動や痰量は減少し,換気量は0.08L→0.13Lに上昇。移動用バギー貸出で外出頻度が増加した。また,入浴時負担軽減のため,入浴用椅子を作製。しかし,痙攣発作や痰貯留は継続しており,母の不安は残存し夜間不眠が継続している。【結論】呼吸障害に対し呼吸理学療法,ポジショニング指導を実施し,生活の質向上のため補装具作製を行い,生活リズムや外出頻度が変化した。SGSに対し呼吸理学療法は必要であり,補装具利用による日常生活管理の重要性が示唆された。さらにDrへの適宜報告と連携が必要であると考える。
著者
五十嵐 大貴 佐藤 一浩 伊藤 圭介 山崎 真奈美 藤田 志保
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.EbPI2383-EbPI2383, 2011

【目的】脊髄性筋萎縮症(以下,SMA)1型(Werdnig-Hoffmann病)は,重症乳幼児型で生後6ヶ月までに発症し,全身の筋緊張低下・呼吸困難・哺乳困難などを伴い,2歳までに死亡する例が多い.ただし,適切な人工呼吸器管理を行なえば,成人までの生存も可能となっている.<BR> 今回,人工呼吸器管理にて在宅生活を行なっているSMA1型の1事例に対して訪問理学療法(以下,訪問PT)を行なった6年間の経過について考察を加え報告する.<BR>【方法】事例に関して,訪問PTが関わった6年間の経過を訪問看護・PTの記録及び整形外科診療録から後方視的に調査,その関わりの中で重要であった事項を抽出し,検討を行なった.<BR>〔事例紹介〕18歳女性.生後5ヶ月頃,呼吸困難となり入院,SMA1型と診断.気管切開により人工呼吸器装着.その後,長期間の入院を経て,12歳で自宅退院となる.その後すぐに訪問看護・PTが訪問を開始した.ADLは全介助.会話の理解は良好,表出は眉間でYes-No.1日をベッド上臥位で過ごすが,リクライニング式車椅子で外出も行う.運動は眉間をしかめるのみ.全身に関節可動域制限があり,脊柱右凸側弯(Cobb角80°).経管栄養(胃ろう).人工呼吸器管理,SpO<SUB>2</SUB>97~100%,HR100回前後/分.胸郭は扁平・狭小化(左>右).家族4人暮らしで主介護者は母親.<BR> 訪問PTは生命維持及び,より快適な在宅生活を継続する目的で,呼吸PT(胸郭可動性の維持,体位ドレナージなど),背面の皮膚・筋の伸張(萎縮予防),関節可動域訓練を基本に行なった.<BR>【説明と同意】今回の研究に際して,訪問看護ステーション管理責任者の同意を得た上で行った.また,対象者及びその保護者には書面にて目的や内容の説明を行い,同意書に署名していただいた.<BR>【結果】<BR>1)訪問PT開始:12歳時.PTに対する受け入れ困難から,理解を得るため目的指向型アプローチを行った.訪問学級も開始,担任との情報交換も行なった.<BR>2)車椅子作製:13歳時に側弯悪化(Cobb角102°)から,申請となる.新しい車椅子は自宅にて医師も交え仮合わせを行い完成した.<BR>3)仙骨部褥創:13歳4ヶ月~14歳7ヶ月で完治.患部の皮膚・皮下組織にずれや圧迫が生じないようにポジショニングの確認や訪問看護師との情報交換も行った.<BR>4)てんかん発作:13歳8ヶ月から発作が出現.発作後には背面筋群に短縮と痛みの訴えがあり,同箇所への伸張を強化した.<BR>5)左尿路結石:16歳時から発熱や左半身の浮腫が出現.発熱時には左腰背部の短縮と痛みの訴えがあり,マッサージなど愛護的に対応.浮腫に対するプログラムも追加した.<BR>6)入浴再評価:18歳時,訪問看護師から母親の介助負担の増大が指摘され,入浴方法を再評価.母親は入院時から長期間行っている入浴方法の変更に否定的であった.そのため母親の想いなどに沿う形で新しい入浴方法を提案した.<BR>7)側弯:13歳時に一時悪化したが徐々に改善し,18歳時にはCobb角66°となった.<BR>8)呼吸状態:感染による一時的な発熱や痰の貯留はあったが,受診を必要としたのは年に1~3回程度.肺炎などの呼吸障害による入院はなかった.<BR>【考察】港らによれば,SMA1型は人工呼吸器の使用を選択し,いかに安定した呼吸状態を維持できるかが生命予後を保つ上で重要であるとしている.本事例は母親や訪問看護師,PTが協力し,呼吸管理を行なったことで呼吸障害による入院は6年間なかった.退院時にはすでに全身の関節可動域制限や側弯などの変形・拘縮が定着,在宅でも仙骨部褥創や尿路結石が出現していた.これら長期臥床状態が引き起こす廃用症候群への対応が疾患の特性からも必要であった.母親による入浴介助やその方法を提案する場合は,安易に福祉用具を進めるのではなく,介助者側の想いや母子関係がもたらす精神的効果などのバックグラウンドも理解したうえで提案しなければならなかった.<BR>【理学療法学研究としての意義】SMA1型を含め小児分野の訪問リハビリの報告は少ない。また、前回の学術大会でも報告したが,本事例のように出生後もしくは早期に入院となっていたケースが訪問リハビリに対して退院後のケアを希望することが多く,最近の問題であるNICU長期入院児への対応も含め,地域での訪問看護・リハビリの受け入れが重要となる.
著者
齋藤 大地 五十嵐 大貴
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2015, 2016

【はじめに,目的】昨今,重篤な症状や高医療依存の小児が増え,これまで施設・病院から外来,入院の形態で提供されることが殆どであった小児のリハビリテーション(以下リハ)は,在宅にも拡がりをみせている。医療及び発達,訪問リハを複合した高い専門性を要求される在宅小児リハは,成人の在宅リハを転用したり,施設・病院で提供している小児リハを家庭に持ち込むだけでは,その役割は十分に果たせない。そこで我々は,以下を理念として小児系在宅理学療法研究会を平成22年7月31日に発足した。・小児が生活し育つ家庭において展開される理学療法及びリハを考え,学び合う場を作る。・小児,在宅医療に関連する職種(在宅・施設のリハ職,教職,福祉職,工房技師等)が顔を合わせて話す機会を作り,機能的なネットワークの構築を行って,在宅で要求される問題解決を共有する。・会員相互の自己研鑽及び支援による小児系在宅セラピストの育成を行う。発足から平成27年3月までの5年間,計10回の活動についての報告を通じて,草創期の稀少な分野をどう作り育てて行くかを考察した。【方法】活動としては,年2回のセミナーを開催して,在宅小児の独自性,特殊性を研究すると共に参加者相互の情報交換を行う。運営は有志の理学療法士が行い,基本的には在宅リハの関連職が参加するが,職種の制限は特に設けない。セミナー開催時にはメール登録した参加希望者に日時,場所,企画等を配信し周知する。セミナー当日は参加者にアンケート調査を行い,企画への感想や意見を求め以降の企画・運営に反映させた。また,終了後は使用した資料及びアンケート結果などを付加した報告資料集を,PDFファイルにて作成している。【結果】これまでの総参加人数は397人,1回あたりの平均参加人数;39.7人である。延べ参加職種の内訳は,理学療法士243人,作業療法士80人,言語聴覚士12人,看護師22人,教員26人,その他の職種14人であった。企画としては,講演10題,調査・研究の報告4題,症例検討12題,討議企画8題を行った。本会での活動,報告に関連した学術発表は13題あった。作成した報告資料集は,開催地の北海道のみならず全国の地域を対象にメール登録者及び希望者に配信している。横に繋がりが出来にくい性質の訪問業務だが,この事を通じ広範に活動を伝えられた。【結論】当初の理念については,これまでの活動を通して一定の成果を上げられたのではないかと思われる。また,報告資料集のメール配信により遠方の地域とも知り合うことができ,相互に情報交換する機会に繋がった。小児の在宅リハは訪問事業所に所属するリハ職のみでは完了出来ず,広義においては家庭を取り巻く入所・通所施設,かかりつけ病院,教育機関,福祉用具関連等全て在宅関連職と言える。今後も活動を継続し,在宅小児の環境を改善し整えていきたい。