- 著者
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遠藤 和博
浜田 純一郎
藤田 和樹
五十嵐 絵美
- 出版者
- 公益社団法人日本理学療法士協会
- 雑誌
- 理学療法学 (ISSN:02893770)
- 巻号頁・発行日
- vol.35, no.2, 2008-04-20
【はじめに】肩・肘障害で当院を受診する高校野球選手の多くは, 大胸筋, 三角筋, 大腿四頭筋など大筋群の発達がみられ, それと比較して下肢柔軟性および体幹機能の低下などのコンディショニング不足がみられた. それらへ理学療法を実施し, 症状の改善がみられた. <BR>【目的】肩・肘障害とコンディショニングの関係を調査し, その原因と予防法を考察することである. <BR>【方法】対象は高校野球部員45名で障害なし群31名, 障害あり群14名(肩障害10名, 肘障害6名, 重複障害2名)であった. 障害なし群と障害あり群とを比較するとともに, 障害で投球離脱になった9名を分析した. コンディショニング調査は18項目で, 1)左右開脚, 2)股割り, 3)スクワット1, 4)スクワット2, 5)広背筋テスト, 6)全身関節弛緩, 7)Straight leg raising test(SLR), 8)股関節内旋角度, 9)Heel buttock distance(HBD), 10)肩抜きテスト, 11)動揺肩, 12)骨盤入れ換えテスト, 13)Elbow extension test(EET), 14)Elbow push test(EPT), 15)股関節内転筋力, 16)前鋸筋筋力, 17)僧帽筋上部筋力, 18)僧帽筋下部筋力である. <BR>【結果】スクワット1, スクワット2, 僧帽筋下部筋力に有意差があった(p<0.05). 障害あり群ではEET, EPT, 股関節内転筋力で低い傾向がみられた(p<0.1). 離脱者はスクワット2, 広背筋テスト, HBD, 僧帽筋下部筋力において重複して成績不良であった. <BR>【考察】スクワット2では, 下肢筋緊張下での柔軟性を評価できる. 後ろ手を組むスクワット2では, 脊柱が屈曲位, 骨盤後傾位になりやすく, かつ上肢が後方にあり後方重心になりやすい. そのため前脛骨筋や大腿四頭筋などの下肢筋緊張下での柔軟性がないと深くしゃがみ込めない. 肩のゼロポジションを保つ重要な筋である僧帽筋下部の筋力低下により, 投球時にゼロポジションを保持できず, 肩甲上腕関節に負荷がかかる. EET, EPT, 股関節内転筋力の低下は肩甲骨, 骨盤を介した体幹機能を評価している. 体幹機能が低下した障害あり群では投球時や打撃時に上体が開き, 肩・肘に負荷が加わる. HBDは下肢柔軟性低下, 広背筋テストは広背筋柔軟性低下を表し, これらがあると離脱者は, 投球時に上体が開き肩・肘に負担をかける. <BR>【まとめ】肩・肘障害予防のためには下肢, 広背筋の柔軟性, 僧帽筋下部筋力, 体幹機能を中心としたコンディショニングが必要である.