著者
井上 広滋
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.33, no.10, pp.660-667, 1995-10-25 (Released:2009-05-25)
参考文献数
20
被引用文献数
1
著者
竹井 祥郎 宮野 悟 兵藤 晋 井上 広滋 坂内 英夫
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

海は概して生物にとって棲みよい環境であるが、海水の高い浸透圧はそこに生息する魚類に脱水という試練を与える。海水中における体液調節にはホルモンが重要な役割を果たしていると考えられるが、陸上動物におけるバソプレシン・バソトシンのようなきわめて重要なホルモンはまだ見つかっていない。私たちはバイオインフォーマティクスの第一人者である医科学研究所の宮野教授のグループと共に、フグやメダカなど真骨類のデータベースからナトリウム排出ホルモンを探索した。その結果、ナトリウム利尿ペプチド、アドレノメデュリンなどのナトリウム排出ホルモンが真骨類で多様化しており、独自のホルモンファミリーを形成していることがわかった。さらに、これらナトリウム排出ホルモンが強力な海水適応促進作用を持つことが明らかになった。心臓のホルモンである心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)は、飲水抑制作用、腸からのナトリウム吸収抑制作用、鯉の塩類細胞を淡水型(吸収型)から海水型(排出型)に変える効果を持っ成長ホルモンやコルチゾルの分泌を促進する作用、尿のナトリウム濃度を上昇させる作用、などを持っ。ANPを海水ウナギに投与すると、飲水量と腸におけるナトリウムの吸収が抑制されるため、血疑ナトリウム濃度が減少する。いっぽうANPの抗体を投与して血液中のANP.をなくすと飲水量が上昇して血漿ナトリウム濃度が上昇する。また、腸のホルモンであるグアニリンは、腸の管腔側に分泌されて上皮細胞の管腔側の膜にあるクロライドチャネルを活性化してナトリウムを分泌させる。その結果、Na-K-2Cl共輸送体が活性化されて水の吸収が促進される。このように、グアニリンは哺乳類ではClを管腔に排出させることにより下痢を起こさせるホルモンであるが、魚類では2分子のClを排出することにより4分子のイオン(Na, K, 2Cl)を吸収するためそれにともない水が級数され、その結果海水適応が促進される。以上、本研究によりこれまで未知であった主要な海水適応ホルモンが明らかになってきたといえる。
著者
豊原 治彦 三上 文三 鈴木 徹 井上 広滋
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

貝殻は炭酸カルシウムを主成分とする鉱物であるが、炭酸カルシウムの単純結晶である方解石やあられ石とはことなり、5%程度の有機物を含んでいる.貝殻形成の分子機構については長く不明のままであったが、本研究においては、申請者はマガキを用いて、貝殻中に新たに申請者らによって見出されたクモ糸様タンパク質の貝殻形成における機能ならびにこのタンパク質の産業応用について研究を行い、ナノテクノロジーや水質浄化剤への貝殻の応用の可能性を提示した.