著者
竹井 祥郎 宮野 悟 兵藤 晋 井上 広滋 坂内 英夫
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

海は概して生物にとって棲みよい環境であるが、海水の高い浸透圧はそこに生息する魚類に脱水という試練を与える。海水中における体液調節にはホルモンが重要な役割を果たしていると考えられるが、陸上動物におけるバソプレシン・バソトシンのようなきわめて重要なホルモンはまだ見つかっていない。私たちはバイオインフォーマティクスの第一人者である医科学研究所の宮野教授のグループと共に、フグやメダカなど真骨類のデータベースからナトリウム排出ホルモンを探索した。その結果、ナトリウム利尿ペプチド、アドレノメデュリンなどのナトリウム排出ホルモンが真骨類で多様化しており、独自のホルモンファミリーを形成していることがわかった。さらに、これらナトリウム排出ホルモンが強力な海水適応促進作用を持つことが明らかになった。心臓のホルモンである心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)は、飲水抑制作用、腸からのナトリウム吸収抑制作用、鯉の塩類細胞を淡水型(吸収型)から海水型(排出型)に変える効果を持っ成長ホルモンやコルチゾルの分泌を促進する作用、尿のナトリウム濃度を上昇させる作用、などを持っ。ANPを海水ウナギに投与すると、飲水量と腸におけるナトリウムの吸収が抑制されるため、血疑ナトリウム濃度が減少する。いっぽうANPの抗体を投与して血液中のANP.をなくすと飲水量が上昇して血漿ナトリウム濃度が上昇する。また、腸のホルモンであるグアニリンは、腸の管腔側に分泌されて上皮細胞の管腔側の膜にあるクロライドチャネルを活性化してナトリウムを分泌させる。その結果、Na-K-2Cl共輸送体が活性化されて水の吸収が促進される。このように、グアニリンは哺乳類ではClを管腔に排出させることにより下痢を起こさせるホルモンであるが、魚類では2分子のClを排出することにより4分子のイオン(Na, K, 2Cl)を吸収するためそれにともない水が級数され、その結果海水適応が促進される。以上、本研究によりこれまで未知であった主要な海水適応ホルモンが明らかになってきたといえる。
著者
竹田 正幸 定兼 邦彦 坂本 比呂志 瀧本 英二 坂内 英夫 稲永 俊介 喜田 拓也 畑埜 晃平 井 智弘 中島 祐人 成澤 和志
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-04-01

爆縮とは工学用語で,爆発の圧力が;外側ではなく内側へ集中する現象をいい,通常では得難い物理現象を発生させるために利用される.本研究では,膨れ上がるデータを爆発的に凝縮することにより,(i) データ量削減, (ii) データ処理の高速化,(iii) 知識獲得の三つを達成する基盤技術の確立を目指し,これを情報爆縮 (information implosion) と名付けた.情報爆縮基盤技術の確立のために,(A)高速データストリーム圧縮アルゴリズム,(B)圧縮データ上の高速データ処理アルゴリズム,(C)大規模データ解析アルゴリズムという3つの研究項目をおいて研究開発を行い多くの成果を得た.
著者
竹田 正幸 篠原 歩 坂内 英夫 瀧本 英二 坂本 比呂志 畑埜 晃平 稲永 俊介
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究では,圧縮データ処理に基づいて軽量XMLデータベース管理システム(DBMS)のための基盤技術を確立することを目標とし,主として以下の成果を得た.(1) 高速で軽量なオンライン文法圧縮アルゴリズムの開発. (2) 圧縮データ上で動作するq-グラム頻度計算アルゴリズムの開発. (3) 高速XMLデータストリームフィルタリング技術の開発. この他,DBMSの備えるべき知的データ処理機能として,パターンの効率的な枚挙,分類,オンライン予測等に関する研究を行い,多くの成果を得ている.
著者
坂内 英夫
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2010

本研究は,文字列の圧縮表現が与えられたときに圧縮表現を展開せずに直接処理をする圧縮文字列処理のアプローチを,文字列パターン発見・文字列データ分類の分野に導入し,様々な関連問題に対して効率的なアルゴリズムを開発した.特に,文字列中の全 q-グラムの頻度問題に対しては,非圧縮の文字列から計算するよりも高速なアルゴリズムの開発に成功し,当該分野における圧縮文字列処理の有効性・実用可能性を初めて示した.
著者
成澤 和志 稲永 俊介 坂内 英夫 竹田 正幸
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. COMP, コンピュテーション (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.107, no.24, pp.63-70, 2007-04-19
被引用文献数
1

本論文では,Blumerらによって提案された同値関係による同値類を計算する問題を考える.Blumerらはコンパクト有向無閉路文字列グラフ(CDAWG)と呼ばれる索引構造を定義するために同値類を利用した.同値類は本質的に等しく出現する冗長な部分文字列を集めた集合であるため,テキスト解析において有用である.本論文では,接尾辞配列を用いて同値類を計算するアルゴリズムを提案する.提案アルゴリズムでは,接尾辞木および接尾辞リンク木の巡回を模倣するため接尾辞配列の他に2つの補助配列を使用するが,これら以外のデータ構造を必要としない.このアルゴリズムは入力文字列に対して,線形時間および線形領域で動作する.本論文では,提案アルゴリズムと接尾辞木およびコンパクト有向無閉路文字列を用いたアルゴリズムとの計算時間・計算領域を計算機実験によって比較する.