著者
野尻 侑 佐橋 栞太 豊原 治彦
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.84, no.5, pp.826-834, 2018-09-15 (Released:2018-10-19)
参考文献数
25
被引用文献数
1 2

短期間にヤマトシジミを高品質化する目的で,給餌条件を検討した。その結果,0.1 g/Lの可溶性糖源では効果がなかったのに対し,同濃度の米粉給餌によりグリコーゲン量が約2.2倍に増強されたことから,懸濁物食のヤマトシジミにとって不溶性餌料が効果的であること,塩分濃度0.5%から1%への高浸透圧処理と環境水中へのアミノ酸投与を併用することでグリシン,プロリン,アラニン及びグルタミン酸を増強できることが分かった。
著者
道川 慧太 渡邉 哲弘 豊原 容子 佐藤 敦政 豊原 治彦
出版者
日本水産學會
巻号頁・発行日
vol.80, no.4, pp.589-593, 2014 (Released:2014-09-25)

琵琶湖周辺で食用とされているイシガイ科の二枚貝であるタテボシガイの貝殻の有効利用を目的として,金属吸着凝集材の開発を試みた。貝殻粉末の鉛,六価クロム,ヒ素に対する吸着能を調べたところ,鉛に対して特に高い吸着能を示した。鉛に対する吸着能は,ホタテガイ,マガキ及びアコヤガイの貝殻粉末でも認められた。タテボシガイ貝殻を焼成することによって表面の多孔質化とカルサイト化が認められ,鉛に対する吸着能の向上が確認された。貝殻粉末に少量のポリマーを添加することで,吸着能に加え凝集能を付与することに成功した。
著者
豊原 治彦 前川 真吾
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2017-06-30

本年度は、ディスカスの親魚の粘液に含まれる仔魚期の生残を優位にする哺育因子を探索する目的で、RNA-seqによるディスカス粘液中遺伝子の網羅的発現解析を行った。また、哺育因子と思われる物質についてディスカス粘液中のウエスタンブロット解析及び仔魚の消化管の免疫染色を行った。その結果、哺育期のディスカス粘液中で免疫系の遺伝子群、特に免疫グロブリンを構成する遺伝子が誘導されていることが分かった。また、仔魚が親魚の粘液由来の免疫グロブリンを摂餌していることが示唆された。RNA-seqにより哺育期と非哺育期のそれぞれの粘液で発現している遺伝子を比較した結果、非哺育期に比べ哺育期に発現が抑制される遺伝子数は12であるのに対し、誘導される遺伝子数は160と多く、ディスカスの親魚は仔魚の育成のため複数のタンパク質の合成を促進していることが示唆された。また各遺伝子の発現パターンをもとに行ったクラスター解析では、Breed 4個体、Non-Breed2個体がそれぞれ同グループになることを期待したが、結果としてNon-Breed1とNon-Breed2及びBreed3とBreed4が同グループに、Breed1とBreed2が他4個体の外縁のグループに分類された。Breed1,2とBreed3,4が異なるグループに分類された原因として、粘液採取時の仔魚の孵化後日数の違いが考えられる。Breed3,4がともに仔魚の孵化後5日目の時期に採取しているのに対し、Breed1,2はそれぞれ仔魚の孵化後8,13日目の時期に採取したものである。哺育期のディスカスは仔魚の孵化後の経過日数にあわせ粘液中のイオン含量等を変化させるという報告があり、Rディスカスは仔魚の成長段階にあわせ異なる遺伝子の発現を誘導させることで粘液中のタンパク質組成等を変化させていると考えられる。
著者
西垣内 祐太 佐橋 栞太 豊原 治彦
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
pp.17-00021, (Released:2018-03-09)
参考文献数
20

酵素吸着能に優れた濾過材の作製を目的として,各種金属酸化物のアミラーゼ吸着能について調べた結果,酸化鉄,酸化アルミニウム及び酸化マンガンの吸着能が高いことが判明した。これらの金属酸化物及びこれら固化物に吸着したアミラーゼは,アルカリ性域の反応性が向上し,pH安定性や熱安定性も向上した。以上のことから,酸化鉄,酸化アルミニウム及び酸化マンガンは,優れた酵素吸着能力を有し,これらを用いることで微生物の増殖による溶存酸素濃度の低下を伴わない高機能な濾過材を作製できる可能性が示唆された。
著者
木下 政人 豊原 治彦 志水 寛
出版者
日本水産學會
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.56, no.9, pp.1485-1492, 1990
被引用文献数
14 63

<i>Modori</i>-inducing proteinase (MIP) could be classified into four types as follows on the basis of the extractability from muscle, the optimum temperature for the activity of myosin heavy chain degradation, and the sensitivity to n-butanol. (1) Sarcoplasmic-50°C-MIP (Sp-50-MIP) which is easily extractable, acts optimally at 50°C, and is not sensitive to n-butanol, (2) sarcoplasmic-60°C-MIP (Sp-60-MIP) which is also easily extractable, acts optimally at 60°C, and is sensitive to n-butanol, (3) myofibrillar-50°C-MIP (Mf-50-MIP) which is tightly associated with myofibrils, acts optimally at 50°C, and is not sensitive to n-butanol, and (4) myofibrillar-60°C-MIP (Mf-60-MIP) which is also tightly associated with myofibrils, acts optimally at 60°C, and is sensitive to n-butanol.<br> Twelve fish species examined were classified into the following five groups according to the dis-tribution pattern of the above 4 types of MIP. (1) The species having only Sp-60-MIP, such as walleye pollack, mud dab, rainbow trout, brown croaker and red sea bream, (2) the species having both Sp-50-MIP and Sp-60-MIP, such as threadfin bream, (3) the species having both Mf-50-MIP and Mf-60-MIP, such as crucian carp, Pacific mackerel and file fish, (4) the species having both Sp-60-MIP and Mf-60-MIP, such as nibe croaker and tilpia, and (5) the species having Sp-60-MIP, Mf-50-MIP, and Mf-60-MIP, such as shortfin lizard fish.
著者
豊原 治彦 三上 文三 鈴木 徹 井上 広滋
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

貝殻は炭酸カルシウムを主成分とする鉱物であるが、炭酸カルシウムの単純結晶である方解石やあられ石とはことなり、5%程度の有機物を含んでいる.貝殻形成の分子機構については長く不明のままであったが、本研究においては、申請者はマガキを用いて、貝殻中に新たに申請者らによって見出されたクモ糸様タンパク質の貝殻形成における機能ならびにこのタンパク質の産業応用について研究を行い、ナノテクノロジーや水質浄化剤への貝殻の応用の可能性を提示した.